中国にいながら日本を爆買できる越境ECアプリ「bolome(波羅蜜)」の舞台裏〜共同創業者・水野裕哉氏にインタビュー

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東京や大阪の繁華街を歩いていると、多くの家電品や日用品を抱えた中国人観光客をよく見かける。いわゆる「爆買」だ。外国の方に日本の商品をたくさん買ってもらえるのはありがたいことだが、何も重い荷物を引っ提げて帰らなくても、日本製品くらいどこでもオンラインで買えるのに、と考えてしまうのは、便利に慣れきった日本人の典型的な発想なのだろう。

実のところ、中国では日本の家電品や日用品の海賊版やニセモノが横行していて、旅行者や留学生が購入した日本商品を C2C のコマースサイトなどで販売する場合、日本で購入したことを証明するために、購入時のレシートを撮った写真を添付したりしている。販売者がお客の信頼を得ようとする苦肉の策だ。

一方、我々が通販でモノを買う場合、深夜の通販番組、QVC やショップチャンネルなどの通販専門チャンネルを頼りにすることはしばしばだ。プレゼンターがテンポよく、わかりやすく商品の効用を説明してくれるのは、エンターテイメントであり神業である。

日本人が立ち上げた、中国人向け越境ECプラットフォーム

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bolome(波羅蜜)共同創業者の水野裕哉氏。

商品プレゼンテーションのライブ感、販売時間を制限したフラッシュセールのノウハウ、そして日本商品の現地直送販売という3つの要素を併せ持つ、越境ECに特化したモバイルアプリ「bolome(波羅蜜)」が7月、中国でローンチした。

bolome(波羅蜜)を立ち上げたのは、上海在住の日本人シリアルアントレプレナー水野裕哉氏。ネットビレッジ(現・fonfun)から MBO した中国のモバイル広告プラットフォーム・プロバイダ UUCUN(悠々村)2009年から参加、共同経営者だった Zhengdong Zhang(張振棟)氏とともに UUCUN を Baidu(百度)に売却したのは2013年のことだ(Baidu への売却額は明らかになっていないが、CrunchBase によれば5,000万ドルとされている)。

次なるビジネスの種を探していた水野氏と Zhang 氏は昨年の9月から bolome のテスト版の開発に着手。今年7月の正式サービスのローンチからはまだ2ヶ月足らずだが、既に LG グループ系の LB Investment、中国の Chengwei Capital(成為創業資本)、シンガポールの Vickers Capital(偉高達創投)から総額1,000万ドルの資金調達に成功している

日本と同一価格 + フラッシュセール + 実況ライブ中継

日本の街角から、中国向けに商品の実況中継をする bolome のスタッフ。
日本の街角から、中国向けに商品の実況中継をする bolome のスタッフ。

水野氏によれば、中国では、さまざまな C2C サイトで日本商品がオンライン販売されているが、ユーザには潜在的な不満があるのだという。

中国の人たちが買っているものは、化粧品、日用品、歯ブラシ、歯磨き、粉ミルクなど、さまざま。留学生などが日本でバイヤーして、Yangmatou(洋碼頭) Tmall Global(天猫国際)のようなサイトで売っているものは、店頭で購入した上に手数料を載せているので、日本の売価よりも20%〜30%高くなっている。この手数料が載せられることが、中国人にとってはとても不満。

bolome では日本の商品を、日本の問屋から卸売価格で購入。個人輸入の枠組みを使い、日本の倉庫から中国の保税区を通じてユーザに直送するので、新商品であっても税関の面倒な手続きが必要にならず、日本の店頭売価と同じ価格で中国人にオンライン販売できる。

さらに商品の販売は、中国の人の昼食休憩時間にあたる12:30〜13:00 にフラッシュセールで行っており、日本の小売店の店頭から中国人レポーターが双方向チャット付きの実況中継動画で商品を紹介する。この時間帯に、全売上の25%が集中している。(水野氏)

bolome のユーザは欲しい商品があれば、Alipay 国際決済(支付宝国際支付)で代金をオンライン支払し、中国郵便で商品が手元に届くしくみだ。

中国人のオンライン爆買が急成長しているため、中国政府も国内10都市ほどに、越境EC向けの保税区のしくみを整え始めた。個人輸入の場合、日用品なら10%、化粧品なら50%の関税がかかるが、関税額が50元未満ならば免除され無税で販売できる。つまり、日本で店頭価格が1万円弱くらいまでの日用品なら、中国人は bolome を使って無税で購入できることになる。

中国のEC市場は50兆円規模と言われているが、このうち越境ECが占めるのは4%〜8%、すなわち、2兆円〜4兆円程度。いずれ近いうちに10%(=5兆円)を超えるだろう。(水野氏)

日本の次は韓国に進出

中国人にとって、日本商品に次いで人気のあるのは韓国商品だが、MERS(中東呼吸器症候群)の流行で、ソウルの街角では、中国人旅行者の姿を見る機会がめっきり減ってしまった。この損失を補おうと、韓国の卸問屋は中国向けの越境 EC に積極的で、bolome では9月中旬をメドに、中国向けの韓国商品の販売も日本商品と同じ要領で開始するのだという。

bolome には現在、上海に75名、東京に20名、ソウルに6名の社員がいる。中国のオンライン旅行サイト最大手 Ctrip(携程)の元カントリーマネージャーが bolome の日本法人代表を務めており、東京オフィスのスタッフらは、日々、中国人に売れる商品の発掘や問屋の開拓、実況ライブ中継の制作にいそしんでいる。

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