2月末に大幅な手数料値下げを発表して話題になったクラウドファンディング「CAMPFIRE」。プロジェクトが目標に達成しなくとも資金を受け取れる「All-In」の仕組みを早々に提供するなど、テコ入れを急ピッチで進めている。
代表に復帰した家入一真氏にその効果を聞いたところ、まだ2週間ほどしか経過していないにも関わらず、前月比ベースでクラウドファンディングの掲載案件数が14倍以上に跳ね上がるなど、彼らが期待していた以上の結果をもたらしたようだ。
「現時点での掲載数は前月比で14倍の伸びになりました。来月はさらにその倍を目指して積み上げていく計画です」(家入氏)。
数千万円の大型案件よりも数万円のプロジェクトを多く支援したいという家入氏らしい考え方は、彼らの次のプロジェクトにも色濃く反映されている。
それが地域活性化支援だ。
CAMPFIRE LOCALというプロジェクトは、簡単に言えば地域でクラウドファンディングを活用したい人たちにシステムやノウハウを提供するOEMのモデルだ。
審査を通過したパートナーは地域活性化プロジェクトを立ち上げたい人たちを募集し、クラウドファンディングでその資金集めを支援する。パートナーはCAMPFIRE側にシステムの月額の利用料と、掲載支援総額の5%を支払うことで利用が可能になる。家入氏によれば、パートナー向けのダッシュボードは今月末に用意されるとのことだった。
例えばパートナーが10%のクラウドファンディング手数料を設定した場合は、自分たちが掲載した支援総額からCAMPFIRE側に支払う5%と月額利用料を差し引いた額が売上となる、というわけだ。
手数料だけのことを考えれば、CAMPFIREに直接掲載した方がいいが、地域色の強いプロジェクト、例えばお祭りの復活など、本当に地域の協力がなければ達成できないような案件は、各地域の人たちが資金を集めた方が達成しやすいだろう。

CAMPFIRE側としても土地の人たちに「応援団」を任せた方が数を増やすことができる。
ご存知の通り、家入氏は過去、地域にシェアハウスを立ち上げたり都知事選に出馬するなど、「生活する人たちとの関係性」を考え、実際に活動してきた人物でもある。どこか彼らしい計画のような気がしてならないのは気のせいだろうか。
さておき、クラウドファンディングで地域活性化と一言で言っても実際にはどのようなプロジェクトが必要なのかなかなか見えてこない。そこで家入氏にいくつか特徴的な過去の事例を教えてもらうことにした。
興味深いのは一口にクラウドファンディングと言っても、合うものとそうでなさそうなものがある、という点だった。
地域でのゲストハウス立ち上げプロジェクト
地域活性化案件で数が多く、また資金集めからプロジェクトが完成・完了している率が高かったのがゲストハウス系だ。古民家や古くなったアパートなどを改修し、地域のゲストハウスとして活用する例は資金の使途も明確だし、支援者を招くという点で具体的な誘致にもつながる。また、どのような年代でも取り組みやすい分かりやすさはクラウドファンディング向きだと感じた。
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ご当地グルメ関連
ご当地グルメも地域の特色を伝える上でよいプロジェクト例だと感じた。ゲストハウスと違って食べ物の場合は支援しやすい金額になるので、より幅広い人たちに地域のことを伝えられる。一方で、食品の生産という壁があるので、誰でもできるというわけにはいかず、また、通販と代わり映えしない場合はやや支援する気持ちが動きづらい印象があった。
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震災復興関連
最も難しいと感じたのが震災や復興関連だ。支援したいという気持ちは大いに動くのだが、支援された側も大変な状況のため、プロジェクトそのものを完遂することが難しく、やはりこれは純粋な寄付があっているのだと感じた。
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地域コンテンツ・アイドル、イベント
コンテンツやイベント関連も購入型クラウドファンディングが得意とするところだ。ご当地アイドルや地元の祭りの復活などはより地域に根ざした人たちが参加しやすいものになるので、今回のローカルパートナーが増えれば、この辺りのプロジェクトはもう少し変化が出てくるかもしれない。
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いかがだっただろうか。前回の記事でも書いたが、家入氏はこれまでに創業したサービスのどれを見ても、一貫して「インターネットで小さな力を集める」取り組みを展開してきている。そういう意味で、今回の地域へのOEM提供も彼が考えるうまくいったパターンの一つなのだと思う。
地域活性化という大きな課題がクラウドファンディング、インターネットの力でどう変わるのか、彼の手腕に注目したい。
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