創業期から楽天を開発で支えた安武氏、自身の新たなスタートアップについて語る #ivs

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2016.5.27

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日本のインターネット業界で重要なキーマンが新たにスタートアップする。

宮崎で開催中の招待制カンファレンス、インフィニティ・ベンチャー・サミット(IVS)併催イベント「IVS CTO Night&Day powered by AWS」に参加中の元楽天取締役、安武弘晃氏が新たなスタートアップを考えていると本誌の取材に答えてくれた。

安武氏は早稲田大学在学中にアルバイトで創業前の楽天に参加。三木谷浩史氏らの元、楽天の店舗管理サービスの初期開発に携わった。当時内定をもらっていた日本電信電話(NTT)に就職するが、98年には三木谷氏に誘われ楽天に転職。

そこから今日まで長らく同社の開発を指揮し、2016年1月には同社取締役常務執行役員を辞任。その去就が気になっていたのだが、今日それが少しだけ明らかになった。

ちなみに同氏の新しい肩書きは「カーディナル合同会社の代表社員」だ。自動運転のZMPでは社外取締役を務めるなど新興企業のアドバイザリとしての顔も持ちつつ、自身も具体的にサービスを立ち上げるという話だった。

国内インターネット創世記を眺めてきた技術者

「45歳になりました。そうですね、いとまさ(伊藤将雄)さんとは社会人同期ですし、小澤隆生さんや松山太河さんたちも同じ時期に活動していた方々です」(安武氏)。

2000年前後のITバブルと言われた時期。サイバーエージェントやミクシィといった渋谷ビットバレーの住人たちが国内インターネットビジネスの基盤を作り、その後のネット広告、ソーシャルゲームやモバイルといった日本独自の市場を切り開いた。

その後、2007年のiPhone登場と共に始まったスマートフォンシフトが2000年以降の三度目となる大きなうねりを巻き起こしたのは皆さんご存知の通りだ。

「(楽天の創業期に比べて今は)全てが変わりました。何もかもですね(笑。創業当時、そもそも人々がインターネットでものを買うということ自体に懐疑的だったんです。最初のシステムはあるフラグがあって、それがオンにならないと買い物かごが出なかった。店舗が相当チャレンジングでなければ使わないだろう、と」(安武氏)。

安武氏はこのような、国内コマース事業創世記の立ち上げを技術責任者という立場で眺めてきた。さらに時代は今、アプリ世界がそろそろ飽和を迎え、VRやAR、動画、人工知能などの新しいトレンドが生まれつつある時期だ。

安武氏は次に何をやるのだろうか?

具体的なサービスの全貌はまだだが、安武氏の話を統合すると個人の働き方に大きく関わる、個人認証の仕組みと言えばいいだろうか、そういうアイデアを披露してくれた。

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宮崎に集まった最高技術責任者たちとのディスカッションに参加する安武氏。

働き方を変える個人の認証

「1990年代の終わり頃ですかね、会社に入社すると1人1台ラップトップを支給してくれるというのがメリットに思えた時期ってあったじゃないですか。でもね、もう数年後には企業は社員にラップトップを配布しなくなると思うんです」(安武氏)。

もちろんその解はスマートデバイスだ。VRやARといった新しいインターフェースも出現しつつあるが、まだしばらくはこの端末がビジネス・コミュニケーションの中心であるのは間違いない。

こうなった時、問題になるのはビジネス専用のスマートデバイスを1人の人間が複数台持つのかという疑問だ。

私も普段からFacebookメッセンジャーをビジネスで利用するし、そこのプライベートとビジネスの境目はなくなりつつある。

ざっくり言うと安武氏が考えているポイントはこの辺りにある。実際に私が見せてもらったデモは認証システムのようなものだった。この認証を通った後にそのスマートデバイスはビジネス用途になり、認証を切ればパーソナルに戻る。

安武氏は楽天で社内情報システムも管理していた。ここには地の利もあるそうだ。

「仕事の8、9割はコミュニケーションじゃないですか。ラップトップやデスクトップが必要なのはデザイナやプログラマなど一部。であれば入社した人にはラップトップを配布するのではなく、ひとつの(認証)アプリを渡す」(安武氏)。

もっと言うと管理すべきはPCやデバイスではなく、その個々にあるアイデンディティである、というコンセプトになろうか。「企業側は個人のプライバシーを見たいとは思っていません。管理したいものだけでいいんです」(安武氏)。

では認証によって雇用側が個人のプライベートとビジネスを分けることができればどういう世界がやってくるのだろうか?

「働き方が変わると思うんです。オフィスに来なければならない、というのは「ID」という概念がなかったころのワーキングスタイルです。例えば私とあなたが今日出会って一緒に仕事をしようということになったとするじゃないですか。そのタイミングで認証を交わして費用や時間が決まる。その認証の元で時間や場所が管理され、お互いの仕事が終わったら認証を切ればいい」(安武氏)。

私もリモートワークやクラウドソーシングによる人的リソースの仮想化には興味があった。より人間が人間らしく働ける方法はもっと多様性があっていいと思う。一方で管理がなければワークしない部分も多い。

雇用側と働く側の関係性のアジリティの向上。

安武氏との会話は(詳細が語れない状況でもあるので)概念的ではあったが、私たちの日常に大きく影響する「新しい働き方」に関連のある、大変興味深いものだった。

ぜひ具体的な形になった際は改めてお伝えしたい。

 

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