急展開中の3Dプリントシューズ、各スポーツブランドの開発状況は?

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Filemon Schoffer氏はローカル3Dプリントサービスネットワーク3D Hubsのコミュニティ代表である。

Above: Under Armour's recently-announced UA Architech training shoe. Image Credit: www.underarmour.com
上: Under Armourが最近発表したトレーニングシューズ「UA Architech」
Image Credit: www.underarmour.com

Nike、Adidas、Under ArmourやNew Balanceといったスポーツシューズ企業は、デザインプロセスや新しいシューズデザインの試作品作りをスピードアップさせるため、3Dプリントに比重を置きつつある。さらに、これらの企業は徐々に3Dプリントを試作品から製品へと移行する計画を明かしている。

今週のボストンマラソンでは、New BalanceとUnder Armourの両社が初の3Dプリントシューズを発表し、この流れは早いスピードで進んでいるようだ(編集部注:原文掲載4月24日)。今回、3Dプリントシューズの分野で競い合っているプレイヤーと、なぜこのトレンドが重要かを簡単に説明しよう。

Nike

Nikeは2013年、限定的に業界初のVapor Lase Talonフットボールクリート用レーザー焼結(SLS)3Dプリントプレートを発表した。オレゴン州に本社を置く同社は、将来のフットウェアデザインにどのように3Dが使われるかについてあまり詳細を明らかにしてこなかった。とは言うものの、同社は付加的製造技術には積極的で、12万5000スクエアフィート(1万1612.88m²)の広さのAdvanced Product Creation Centerを建設している。2015年10月、COOのEric Sprunk氏は公の場で、未来について「消費者が自分のNike商品を自宅や店舗で作ることができる日もそう遠くありません」と語った

Nike

Adidas

Adidasは自社Futurecraftシリーズ用に2015年10月ローンチした素晴らしいYouTube動画シリーズで、3Dプリントシューズがどのように作られるかを紹介し、視聴者からも期待が寄せられている。2番目に大きいフットウェア企業である同社は、3Dプリントシューズの生産に対して多大な努力をしてきたが、実際リリースがいつになるのかはまだ明らかにされていない。

Above: Still shot from Adidas YouTube channel Image Credit: Adidas
Above: Adidas YouTubeチャンネルからのスクリーンショット
Image Credit: Adidas

New Balance

New Balanceは、NikeやAdidasよりもフル3Dプリントミッドソールの発売に向けて大きく前進している。Nervous Systemおよび3D Systemsとのコラボレーションを通じ、同社は初の3Dプリントミッドソール付きシューズをボストンマラソンでお披露目した。新しく開発されたエラストマーパウダーで作られたミッドソールは、シューズに最適なバランスの柔軟性、強度、重さと耐久性の実現が可能だという。興味のある人は自分の目で確かめてみてはいかがだろうか。

New Balance
上: New BalanceのYouTubeチャンネルからのスクリーンショット

Under Armour

グループで最も若く機敏な会社であるUnder Armourが最近発表したUA Architechは、実際に市場で販売された初のシューズである(記事最上部画像参照)。しかし、300米ドルのこのモデルは96個しか生産されておらず(同社は1996年設立)、3Dプリントシューズ初の小売販売にこぎつけたにもかかわらず大衆が手に入れられる初の3Dプリントシューズにはほど遠い。

3Dプリントシューズが未来にもたらす変化

初の3Dプリントシューズレースにおける技術的な疑問のひとつに、3Dプリントシューズの定義は何かという点がある。ある試作品をもって定義するのか、ブランドが完全に改良され、革命的サプライチェーンが可能となった商品のことを指すのか?ミッドソールの一部だけでも3Dプリントシューズとして認められるのか、それともシューズ全体が3Dプリントでなければならないのか?

いずれにせよ、これらの企業は3Dプリントを使った大量生産商品という全く新しいカテゴリーを作ろうとしている。足をさっと3Dスキャンすると、色だけではなく足の形にぴったり合わせて形もカスタマイズすることが可能となる。これは、アスリートにとっての運動能力向上だけでなく、健康問題を抱える消費者の助けにもなり、シンプルに新しいレベルの「スタイル」をもたらしてくれるものだ。

現代の3Dプリンタは一般的な小売りの現場や自宅にでも設置できるので、購入してほぼ即時にカスタムシューズを印刷できるのは既存のサプライチェーンにとって革命的だ。遠くで同じものを大量生産し、販売できる場所に発送する製造モデルから、デジタルで販売し、必要なものだけを作り、地元でオンデマンドで24時間以内に配達される製造モデルに突如移行するのだ。

結果的に、個人のニーズに合わせた特注シューズという全く新しい強力な商品カテゴリーが生まれる。男性が何世紀にもわたって手作りのカスタムメイドスーツをオーダーしていたのとたいして変わらない。フットウェア会社は特定の場所で生産し、(おそらく非倫理的といえる)低時給国の労働を削減し、送料を最低限に抑えて生産廃棄リスクを回避することができる。

そういった明らかな利点があるため、運動用フットウェアは多くの人が待ち望む素晴らしい3Dプリントの活用法だと考えるのもうなずける。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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