大企業とベンチャーのコラボによって生まれた森永製菓の新規事業「おかしプリント」

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左:アンジー代表取締役 森英信氏  右:森永製菓 新領域創造事業の渡辺啓太氏
左:アンジー代表取締役 森英信氏
右:森永製菓 新領域創造事業の渡辺啓太氏

森永製菓が2014年からスタートしたアクセラレータープログラム「森永アクセラレータープログラム」が、2016年も募集を開始した。

同プログラムを通じてオープンイノベーションを目指す同社が、アクセラレータープログラムの実施を通じてどのような変化を感じ取ったかを前編で紹介した。

スタートアップに実行力を学ぶーー森永製菓はアクセラレータープログラムを通じてオープンイノベーションを狙う

後編では、アクセラレータープログラムがもたらした変化がきっかけとなって生まれた森永製菓の新規事業「おかしプリント」に焦点を当て、その誕生の裏側を伝える。

オリジナルのお菓子のパッケージを作れるウェブサービス

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森永製菓は、スマートフォンで撮影した画像やスマホアプリで作成した画像を利用し、ユーザオリジナルのお菓子のパッケージをつくることができるWebサービス「おかしプリント」を開発した。

同サービスの開発を担当したのは、森永製菓の渡辺啓太氏だ。同氏は、新規事業開発の担当になる前に、沖縄でアンテナショップ「森永のおかしなおかし屋さん沖縄HAPINAHA店」の企画とマネジメントを担当していた。

同店舗で人気を博したのが、店内でぐるぐる巻いて作った「グルグルハイチュウ」に、その場で撮った写真や持っていた写真をパッケージに印刷できる「グルグルハイチュウ体験工場」だった。

新規事業の担当となった渡辺氏が思い出したのが、「グルグルハイチュウ」の成功体験だった。オリジナルのお菓子を作るというアイデアと、小ロットからオリジナルのお菓子のパッケージを作るというアイデアが融合し、「おかしプリント」の原案が生まれたという。この着想の後の動き方が、渡辺氏は変わっていた。

渡辺氏「いままでのスタイルで大手企業に全てを発注してしまうと金額が高くなってしまい、事業として成立しないことはわかっていました。それなら、自分でその座組をやったほうがいいのでは、そう考えたのです。森永アクセラレータープログラムには参加していて、ベンチャーと一緒に事業を創造するやり方を学んでいましたから、実践してみようと」

ベンチャーとのコラボレーション

森永製菓に、中身となるお菓子はある。問題は画像加工や二次加工、ウェブサイトをつくるなど、お菓子以外の領域だ。それぞれ強みを持っているベンチャーと一緒にやれたら、渡辺氏はそう考えた。

渡辺氏「どこか画像加工アプリの会社とコラボしたくて、ずっとApp Storeの写真カテゴリでアプリを探して、運営会社をメモしていました。大手企業の名前もありましたが、アプリ開発事業をやっていたアンジーさんに問い合わせフォームからメールしたんです」

アンジーは、写真加工アプリ『Pico Sweet(ピコ・スイート)』や写真加工・グリーティングカード作成アプリ『SweetCard(スイートカード)』等のアプリを開発するスタートアップ。

アンジーは、国内企業とのコラボ実績があることもサイトに掲載していた。実績があることを見せていたことも、問い合わせのハードルを下げることに一役買ったのだろう。森永製菓からのメールを受け取ったアンジー代表取締役の森英信氏は、この話に乗った。

森氏「最初は、アプリを作りたいという話でした。その後、開発にかかる費用や日数を考えて、今のような形になりました。私たちとしても、通年で何かをやる企画は欲しいと思っていました。ハイチュウのパッケージをオリジナルで作成するというのは、ユーザに通年でコンタクトでき、去年と比べてもユーザ数も伸びています」

渡辺氏「私たちとアライアンスを組むことで、アンジーさんのアプリにも良い影響が出るといいなと考えていました」

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互いにとってメリットがあっただけではなく、仕事もスピード感をもって話を進めていくことができた、と両氏は語る。

森氏「大手の方とお仕事をする際は、関係者が多くなってしまい、なかなか意思決定がスムーズにいかず、歯がゆい思いをすることもあります。今回、森永さんとのアライアンスに関しては、テンポよく進めていくことができ、開発の時間も多くとることができました」

渡辺氏「私たちも、森さんと直接色々と話をすることができ、スピード感を持って開発を進めていくことができました」

関係者との共通言語づくりに苦しむ

これまでにあまり例がない挑戦は、すべてが順風満帆だったわけではない。中でも、複数のプレイヤーが関わることで問題が生まれやすかったのが、データの受け渡しと共通言語だった。

渡辺氏「 アンジーさんが作ったデータを、ウェブサイトの制作を担当してくださったサムブレインさんに渡す必要があったのですが、私とアンジーさん、サムブレインさんの共通言語が異なっていたため、コミュニケーションには苦労しました」

それぞれ前提となることが異なっているため、すり合わせを行いながら「おかしプリント」の開発を行っていった。最終的に、印刷・加工会社へと渡すデータの形式の調整も何度か行われ、新しいことに取り組む上での苦労もあったという。

渡辺氏「サイトをリリースしてから時間も経過していますが、少しずつシステムの改善を重ねています」

サービスとして機能する形でリリースしつつ、その後改善を重ねていく。このあたりのアプローチにも、スタートアップっぽさが潜んでいる。

渡辺氏「私自身、気がつかないようなアプリの改善点もあるのですが、森さんが気づいて改善してくださっていたりします。アプリ開発のプロとして、ユーザ目線で見て、積極的に対応していただけて、助かっています」

従来の、仕様を固めてから発注をする、というやり方ではこうした進め方にはならなかっただろう。「おかしプリント」は、一緒に事業をやりましょう、という姿勢だったからこそ、良いサービスになっていったと考えられる。

「おかしプリント」は、アライアンス先と共に考えることでいろいろなアイデアが生まれ、サービスを利用したお客様から問い合わせも来て、新しい可能性が見えてきているそうだ。

新しい道が見えてきている渡辺氏が、ベンチャーと協業する上で気をつけているポイントは3つ。

渡辺氏「自分たちの当たり前がアライアンス先の当たり前ではないので、わからなければ聴き、本音で話すようにしています。ベンチャーは日々厳しい環境でビジネスを進めているので、私たちの常識を押し付けて無理や無茶があってはいけません。無理だったら無理、難しいなら難しいと言ってほしい。最後に、受発注の関係にならないように心がけています。パートナーとしてどうあるべきか、というのは常に気をつけています。」

大企業とベンチャーがコラボすることで、こうした事業が立ち上がってくるなら、大企業とベンチャーのつきあい方はもっと様々なトライが行われてもいいはずだ。

そして、今回のような協業が生まれた背景には、アクセラレータープログラムの存在があった。アクセラレータープログラムの評価をする上で、このことも覚えておきたい。

前編はこちら

スタートアップに実行力を学ぶーー森永製菓はアクセラレータープログラムを通じてオープンイノベーションを狙う

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