ありがたいことに、日本の内外から「今年も THE BRIDGE Fes をやらないのか」という問合せをいただくことは少なくない。スタートアップと投資家をつなぐという観点から言って、スタートアップ・カンファレンスを開くことはおそらく理に適っている。
ヨーロッパにおいては、多くの投資家がロンドンに集中している一方、スタートアップはロンドン以外にもパリ・バルセロナ・ベルリン・アムステルダムなど各地に分散している。アジアでは、投資家はシンガポールに多く、スタートアップの所在はジャカルタ・台北・香港・バンコク・クアラルンプール・バンガロールなどさまざまだ。分散した人々が、大きなイベントを活用して出会うのは非常に便利だ。
しかし、日本では、多くの投資家やスタートアップが東京の渋谷や六本木に集中しており、双方は会いたいときに歩いて会いに行けるという便利な環境にある。ならば、頃合いのよい規模のイベントを頻繁に開いた方が、コミュニティのエンゲージメント向上につながるだろう、という仮説から生まれたのが、手前味噌ではあるが THE BRIDGE X であり、THE BRIDGE Lab. だ。
当然のことながら、このようなアイデアを思いついたのは我々だけではなかった。THE BRIDGE のメディアパートナーである e27 は昨年8月、同社のフラッグシップ・スタートアップ・カンファレンス「ECHELON」の付随サービスとして、スタートアップと投資家のマッチングサービス「EC Connect(ECHELON Connect)」をプライベートベータ版としてローンチ。そして先ごろ、マッチングアルゴリズムを改良し正式版として再ローンチを果たした。e27 では、スタートアップと投資家が、ECHELON などの年に数度のカンファレンスだけでなく、年中を通して連絡をとることができるとしている。

e27 では例年6月に ECHELON をシンガポールで開催しているが、今年の ECHELON 2017(6月28〜29日に開催予定)のピッチ・コンペティション登壇者は、この EC Connect に登録されたスタートアップの中からファイナリスト「TOP 100」として選ばれることになるようだ。EC Connect には、アジアを中心に既にスタートアップ150社が登録されており、e27 では6月までに800〜1,000社の登録を見込んでいる。投資家サイドからも、500 Startups、Queen’s Capital Road、Golden Gate Ventures、KK Fund など東南アジアを代表する VC が多数参加しており、スタートアップがアクセス可能な資金の合計額は最大で5億米ドルにに上るそうだ。
EC Connect では、スタートアップと投資家が共に対象とするバーティカル、調達金額やラウンド、アクセスしたい市場などの属性に基づいてマッチングされる。スタートアップと投資家の双方が「興味あり」となれば、EC Connect のメッセージ機能を使って直接コミュニケーションが開始できるしくみだ。
これまでにも、スタートアップのデータベースとしては、アメリカの Crunchbase(TechCrunch からスピンオフ)、日本の entrepedia(Uzabase が買収)、 韓国の Rocketpunch 、中国の 36Kr VC Assistant(36Kr 創投助手)、シンガポールの Techlist(シャットダウンして Tech in Asia ニュースポータルに統合)などが存在している。かくいう THE BRIDGE にも Startup Base というデータベースサイトが存在した。
しかし、どうやら時代のニーズはデータベースよりもマッチングにシフトしつつあるようで、e27 の EC Connect のみならず、韓国の beSUCCESS も昨年、The Beginning なる、アジアにおける投資家とスタートアップのマッチングサービスを立ち上げている。これらのマッチングサービスの成否は、今後、投資家のディールソースやスタートアップの資金調達にどの程度の好成果を出せるかにかかっていると言えるだろう。
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