ロシア生まれアメリカ育ちのテック起業家 Phil Libin 氏は昨年、自ら育て上げたスタートアップの雄 Evernote を後にし、スタートアップ投資や起業家支援の道へと進み始めた。 今年に入って、彼は「All Turtles」という名のスタートアップ・スタジオを立ち上げた。
24日に都内で催された All Turtles の披露イベントで、彼は All Turtles を立ち上げた理由を次のように語った。
シリコンバレー中心のイノベーションのモデルでは不十分だ。数十億ドルのお金の集まるようなアイデアのみが求められ、クリエイターはアイデアやプロダクトを創造するだけではなく、CEO になることが求められる。物を書くのがうまい人は出版社を作ることを求められないし、音楽が好きな人は音楽レーベルを作ることを求められないのに、スタートアップの世界では、よいプロダクトを作り広める以外のことに、さまざまな能力を求められる。(中略)
そして、スタートアップが失敗するのは、プロダクトを作り広める以外のこと——マネージメントだったり、資金調達だったり——に起因することが多い。スタートアップがプロダクトだけのことを考えられるようにして、成功を支援する AI スタートアップスタジオ、それが All Turtles だ。
サンフランシスコで始動した All Turtles には、既に8つのプロジェクトが参加している。
- Growbot……インセンティブを高める業務管理ツール
- Replika……自然に対話できる AI 友達
- LEADE.RS……カンファレンスプログラムの作成支援ツール
- Edwin……AI を使った英語学習サービス
- DoNotPay……法務相談サービス
- OCTANE AI……ブランド構築のためのボットサービス
- butter.ai……社内にあるノウハウの共有ツール
- sunflower labs……ホームセキュリティ
サンフランシスコには、これらに8プロジェクトに加え、2つのステルスプロジェクトが存在する模様。LEADE.RS は、Le Web を運営していた Loic Le Meur 氏が新たに始めたスタートアップ・カンファレンスをピボットさせたプロジェクトのようだ。
東京については、概ね今秋にオフィスを開設し、2018年1月1日に第一期の参加チームを募集受付を開始、2018年4月1日から選抜された5チームでプログラムが開始される予定だ。運営にあたっては、Open Network Lab の活動経験のあるデジタルガレージ(東証:4819)が協力する。パリ拠点についても、概ね東京拠点と同じタイムラインでプログラムが開始される見込みだ。

All Turtles はこれまでに2,000万ドル以上の資金を調達しており、出資者としては、先ごろ世界最大のスタートアップ・キャンパス「Station-F」を完成させた Xavier Niel 氏のほか、Phil Libin 氏がシニアアドバイザーを務めるボストン拠点の VC である General Catalyst、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏、デジタルガレージらが名を連ねる。本発表(full announcement)がなされるのはもう少し先ということなので、さらに出資者や協力者が増えることも予想される。
Libin 氏はイベントの中で、陶磁器の破損部分を修復する技法である「金継ぎ」を引き合いに出し、失敗したところから、また新たな価値を作り出せる可能性について、日本のこの文化の中にはスタートアップの行動規範に応用可能なコンセプトが数多くあるとした。

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