IVS 2018 Spring in 台北のピッチコンペティション「LaunchPad」は、リアクション動画のオールインワンアプリ「ReCactus」が優勝 #ivs18

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Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、6月6〜8日に開催される、Infinity Ventures Summit 2018 Spring in Taipei の取材の一部。

8日午前、 Infinity Ventures Summit(IVS)では恒例となっているスタートアップ・ピッチコンペティション「LaunchPad」が実施され、リアクション動画の撮影・編集・投稿ができるモバイルアプリ「ReCactus(楽傑科創)」が優勝を獲得した。

Infinity Venture Partners の創業者でマネージングパートナーの田中章雄氏によれば、過去10年間で LaunchPad から輩出されたスタートアップ300チームのうち、約20チームが IPO、約20チームが M&A、約20チームが大型資金調達に到達しており、5チームに1チームが大きな成長を遂げているのだという。

Infinity Ventures Summit 2018 Spring の LaunchPad には、日本から7チーム、台湾から7チームの合計14チームが登壇した。LaunchPad の審査員を務めたのは次の方々。

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  • Joseph Chan/詹德弘氏(AppWorks/之初創投)
  • Josephine Cheng 氏(KKBOX)
  • Yvonne Chen/陳儀雪氏(WI Harper/中経合)
  • Brian Hsu/許家碩氏(Mediatek/聯発)
  • 山岸広太郎氏(慶応イノベーション・イニシアティブ)
  • 徳生裕人氏(Google)
  • 川田尚吾氏(DeNA)
  • 吉田浩一郎氏(クラウドワークス)
  • 木下慶彦氏(Skyland Ventures)
  • 本田謙氏(フリークアウト・ホールディングス)
  • 千葉功太郎氏(投資家、Drone Fund)

なお、スポンサーの Cinchy/新記 からは、ハイエンドヘッドセット「Shure」が登壇者全員に進呈された。

【1位】ReCactus by 楽傑科創(台湾)

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<副賞>

  • Amazon Loft Tokyo 招待ツアー、航空券2名分付(Amazon Web Services 提供)
  • Freee 50万円分(Freee 提供)
  • エビスビール360缶(AGS コンサルティング提供)
  • ヴィラージュ伊豆高原1組5名1泊分(住友不動産提供)
  • 5,000米ドル分の GCS クレジット(GrandTech Cloud Services/昕奇雲端 提供)

ReCactus は、公開されている動画に対して、リアクション動画を撮影・編集・投稿できるソーシャルアプリだ。リアクション動画を普通に作成しようとすると、公開されている元動画をダウンロードし、それを再生しながら自らのリアクションを撮影・編集し、それをもう一度 YouTube などにアップロードし直すという手間が生じる。しかも、元動画の著作権の理由から、アップロードしたリアクション動画は削除されてしまうこともあるだろう。

ReCactus では、予め著作権の課題をクリアした動画が集められ、ユーザはそれをアプリ上で再生しながらリアクション動画を撮影できる。撮影終了後は、元動画とミキシング編集され、それが自動的に YouTube などのソーシャルメディア上にアップロードされるしくみだ。2017年10月にローンチ後、月ごとのユーザ成長率は30%に達しており、北米と南米がそれぞれ3割程度ずつ、残りをロシアや東南アジアからのアクセスが占める。リアクション動画を使ったネイティブ広告や有料コンテンツでマネタイズが考えられる。iOS と Android で利用可能だ。

【2位タイ】TWO(台湾)

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TWO は IoT ハードデバイスで、ゴミ箱の中に貼り付けるだけで、ゴミ箱の中をリアルタイムに状況把握できる。WiFi 接続により、1年間にわたってバッテリーで稼働し続けることができる。ここからデータが集積・分析することで廃棄処理サイクルを改善し、ゴミ回収から埋立処理までに必要な、一連のゴミ管理コストを下げることが可能となる。

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8月からは、台北のゴミ処理を担当する環境保護局と PoC を開始する予定。2050年には地球人口の約8割が都市部に住むと言われ、例えば、カナダのトロントでは年間のゴミ処理コストが25億米ドルに上るなど事態が深刻化する中、各国や各都市の地方政府が頭を悩ます問題の解決の一助となることが期待されている。

【2位タイ】Xpression by EmbodyMe(日本)

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Xpression(エクスプレッション)」は、ビデオの顔の表情を、カメラに映った自分の顔の表情にリアルタイムで置き換えるアプリだ。iPhone で撮影したビデオはもとより、YouTube などで公開されているものなど表情が映っているあらゆるビデオを利用可能。有名人へのなりすまし演出のほか、着替えていない寝巻き姿のまま、あたかもスーツ姿で話しているかのようなオンライン動画も作成できる。

SnapChat で収入の多くを AR 広告が占める中、EmbodyMe では Xpression のビジネスモデルとして、バーチャルユーチューバーや AR 広告で利用してもらうことを視野に入れているようだ。また、Xpression の機能を SDK として提供することで、サードパーティーの AR アプリデベロッパが自社アプリやサービスに取り入れてもらうことも検討している。

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【4位】SkyRec/思凱睿克(台湾)

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2015年に AppWorks(之初創投)第11期から輩出された SkyRec は当初、店舗内設置されたカメラの映像を使った導線分析、売れ筋商品の分析、陳列方法の改善、人気のない商品の排除選定など、オフライン小売のマーケティングやビジネスインテリジェンスに特化していたが、今回のピッチでは、同じ技術を元にしながらも無人店舗という新たな分野への適用を提案してきた。

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顔認識ができる技術を使って、無人でのセルフ会計システム、会員カードが無くてもリピート客の来店が把握できる機能などを紹介。世界にあるコンビニ、G ストア(ガソリンスタンド併設のコンビニ)、スーパーマーケットなどで、人手による労働時間やコストの約3割を削減できるとした。2016年 SLUSH ASIA のピッチコンペティションで優勝後、同社はビジネスを急速に伸ばしており、現在 SkyRec を導入する店舗数は200軒、ブランドは199社に上るとした。

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【5位】ORII by Origami Labs(香港)

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ORII は、スマートフォンやスマートウォッチなどのスクリーンを見ることなく、コミュニケーションを取ることができるよう設計されたウエアラブルデバイスだ。何かをしている最中に視線をスクリーンに奪われるのは煩わしいし、移動中の歩きスマホなどでは身の危険を伴う。ORII は音声を伝えることができるスマートリングで、指輪のように指に装着して用い、その指を耳元の骨に当てることで骨伝導で音声を聞き取ることができる。

AirPods などを常時耳に装着しているのが煩わしい人にとってはオススメだ。BlueTooth ごしに Siri や Google Assistant と連携して、音声で指示を伝えることも可能。Kickstarter や Indiegogo でクラウドファンディングキャンペーンを展開し好成績を残した。3月に実施された Techsauce Summit の東京予選で優勝しており、今月末にバンコクで開かれる Techsauce Summit にもピッチ出場する予定。

5位までには入賞しなかったものの、ファイナリストとして登壇したチームは次の通り。

  • 企業向け占いサービス by Animalogy(日本)

Animalogyは、社内で強いチームをつくるための、人材スキルの分析プラットフォームだ。Animalogy は、四柱推命を使って人間関係を推測し、適材適所の人材配置を促す、企業向けの占いサービスを提案。

  • frm.ai by UNH3O(台湾)

frm.ai は、ブランド・小売事業者・アーティストなどのためのファン関係管理ツール。ファンとのインタラクション、エンゲージメントを追跡し、ユーザの好みや関心を分析し、その後の活動に活かすことができるどのファンに対して、どのようなメッセージを、どのようなタイミングで発信すればいいかを教えてくれる。2018年3月、ボット分析スタートアップの Botimize を買収。

  • SOICO クラウド by SOICO(日本)

SOICO は、既存のストックオプションのスキームの問題点を解決できる「タイムカプセル・ストックオプション」の考え方を提唱。会社の時価総額が上がってからストックオプションを発行すると行使価格が高くなり過ぎる、会社への将来貢献度が測れないストックオプション発行時に将来の引き渡し株数を決定する必要がある、といった問題を解決する。一連の手続をクラウド上で完結し、契約書の管理・保管・権利行使・受付などができる「SOICO クラウド」を開発した。

  • BONX for BUSINESS by BONX(日本)

インターネットを通じて、仲間同士が離れてても手ぶらで話ができるウエアラブルトランシーバー「BONX」は、スノボーどやサイクリングといったスポーツファンを中心に、これまでに約2万台が販売された。この BONX を法人需要に拡大したのが 「BONX for BUSINESS」で、管理拠点と倉庫など離れた場所で互いにコミュニケーションが必要とするユーザをターゲットに据えた。ハードウェア販売とソフトウェア利用料の組み合わせによる料金体系を想定。

  • TLUNCH by Mellow(日本)

TLUNCH は、ビルの空きスペースとフードトラックをマッチングするプラットフォームだ。東京・横浜を中心に約70カ所のビルオーナーと契約しており、これまでに約350軒のフードトラックが当該プラットフォームを利用。個人経営であることが多いフードトラックのオーナーにとっては、営業スペースを見つけるためにビルオーナーと個別に交渉するのは煩わしく、TLUNCH がその一切の手間を代行する。フードトラックからは売上の15%を TLUNCH が手数料として受け取り、うち5%がビルオーナーに場所代として支払われる。

  • LEBER by AGREE(日本)

LEBER は、質問をすると最短3分程度で医師から回答が得られるドクターシェアリングアプリだ。症状を入力することで医師から適切な対処法に関するメッセージが得られ、症状や必要に応じて、その時間に営業している近くの医療機関やドラッグストアを表示する。一般個人ユーザ向けには問い合わせ1回あたり100円で提供、また、社員・職員・彼らの家族が利用できる法人ユーザ向けサービスを、つくば市役所やつくば市内の企業に導入している。

  • WeMo by WeMo/威摩(台湾)

WeMo は、台湾で展開しているスクーターのレンタルシェアリングプラットフォームだ。大気汚染の抑制、駐輪スペースを少なくできるなどのメリットがある。スクーターには GPS や IoT デバイスが備えられており、ユーザの移動データを取得することも可能。公共交通が走っていない深夜の帰宅時や、飲み会に行く際の往路のみの利用など、乗り捨てができるメリットを生かした一方方向のみの利用に便利。毎週新規ユーザを1,000人獲得しており、1日・1台あたりの利用回数は平均4.3回。2018年末までに、世界の3,000都市でサービスを提供予定。

  • スマホ保険 by justInCase(日本)

justInCase が目指すのは、シェアリングエコノミーの概念を保険に応用した「P2P 保険」という分野だ。一般的に、P2P 保険では友達同士や同じリスクに対する保険に興味のある集団(プール)で保険料の拠出を行い、このプールから保険金が支払われる仕組みを採用している。第一弾としては、スマートフォンの破損をカバーする「スマホ保険」、第二弾として山登りや釣りイベントなどでのケガをカバーする「ケガ保険」などの提供を計画している。

  • PiSquare/湃思 by PiStage(台湾)

CG やアニメの制作にはレンダリングの必要が生じ、レンタリングには待ち時間が必要となる。PiSquare は、ゲームエンジンなどに実装されているリアルタイムレンダリングの技術を CG やアニメ制作のソフトウェアに適用、従来では1フレームあたり100分かかっていたレンダリングを、1フレームあたり0.05分(3秒)にまで短縮することに成功した。主に、アニメーションスタジオや VR/AR コンテンツメーカーへの納入を想定している。

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