「StarBurst(スターバースト)」は、東京を拠点に、プロトスターが運営するシードアクセラレータだ。Starburst は24日、都内で5回目となるデモデイを開催し、8社がピッチを行なった。
冒頭挨拶したプロトスター CCO の栗島祐介氏によれば、StarBurst 前身の Supernova 時からの通算で同アクセラレータが輩出したスタートアップの数は114社に上り(採択チームがすべてデモデイ登壇しているわけではないため、デモデイ登壇チームの総和とは異なる)、彼らが資金調達した金額の総和は76.2億円(8月25日時点)に上るという。
本稿では、入賞者を含む全チームのサービスやピッチの内容についてランダウンでお伝えする。今回のデモデイで審査員を務めたのは次の方々。また、各スポンサー賞については、スポンサー各社の担当による審査結果を元にしている。
- Draper Nexus Ventures 中垣徹二郎氏
- アイランドクレア 吉田行宏氏(プロトスター 社外取締役)
- プロトスター 代表取締役 COO 山口豪志氏
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【優勝】【Awesome 賞 by フランジア】【EY 新日本賞】SMASELL by WEFABRIK
<副賞>
- Amazon ギフト券 30,000円分 by プロトスター
- ベトナム・ハノイ招待 by フランジア
- EY E ラーニングサービス3ヶ月無料利用権 by EY 新日本監査法人
WEFABRIK が提供する「SMASELL(スマセル)」は、不動在庫となったアパレルの B2B 取引プラットフォームだ。購入者は市価より安価でアパレル製品を購入でき、出品者は在庫処理業者や産廃業者に引き取ってもらうコストを抑えることができる。世界で年間228億着に上るという不良在庫の破棄量を減らし、コスト・時間・環境負担の問題の解決を狙う。必要に応じて、購入者は販売者からサンプル品を取り寄せたり、価格交渉ができたりする機能が備わっているのも B2B ならではのしくみである。
2017年夏のローンチ以降、登録事業者数は1,500社以上にまで増えた。中には、アパレルメーカー大手、GMS 大手、ディスカウントストア大手、百貨店などが名を連ねるという。メガバンクによるエスクローサービスの導入により、即買取・即代金受取も可能。また、海外とも取引ができるよう、運送会社大手とグローバルロジスティクスのスキームを構築している。2019年2月に5億円の資金調達を目標に活動中、また、営業地域の拡大にともない、代理店の募集にも注力している。
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【準優勝】【ネットプロテクションズ賞】Alice.style by ピーステックラボ
<副賞>
- Amazon ギフト券 10,000円分 by プロトスター
- 「NP掛け払い」を含む決済サービスの固定費1年分無料 by ネットプロテクションズ賞
ピーステックラボは、個人間および企業から個人に商品をレンタルし、独自アルゴリズムでマッチングの最適化を図るプラットフォーム「Alice.style(アリススタイル)」を開発している。同社を率いるのは、時事通信、専修大学経営学部教授、ガーラの会長を経て、エイベックスデジタルで動画配信サービス「BeeTV」の立ち上げに関わった村本理恵子氏だ。村本氏の BeeTV 時代の同僚である佐藤瞳氏が COO として参画している。
Alice.style では、SNS 上で「いいね」した商品の体験、プレミアム商品の購入前体験、毎日使わないため購入すると家の中で場所を取ってしまうなど、モノを持たなくても利用体験を生み出すよう、モノの貸し手と借り手をつなぐことができるレンタルプラットフォームだ。企業は、消費者に新たな商品を認知してもらい、理解してもらい、購入につなげる商機拡大のチャネルとして活用できる。ターゲット層は20〜40代の女性で、将来的にはサブスクリプションレンタル、家電リースなどにも業容を拡大する計画があるという。
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【3位】【31 VENTURES 賞】BeLiving by Tokyo Hearth
<副賞>
- Amazon ギフト券 10,000円分 by プロトスター
- アートアクアリウム2018 チケット10枚 by 31 VENTURES
東京の賃貸住居の空室率は34.3%(不動産調査会社タス調べ)あるのに対し、実に39.3%の不動産オーナーが外国人オーナーの入居を断っている(法務省調べ)という。このギャップが生じる背景には、言語や文化の相違、入居者が日本で保証人がいない、書面ベースでの契約や支払が必要になる、海外で一般的な家具付き住居が少ない、などの問題があるという。Tokyo Hearth の BeLiving は、これらの問題を解決し、在日外国人や訪日外国人が容易に住居を借りられるようにし、一方で不動産オーナーにとっては稼働率向上の機会を提供する。
昨年から本格運用が開始された IT 重説(ITを活用した重要事項説明に係る賃貸取引)なども活用し、BeLiving がオンラインでの集客、オンライン保証(Tokyo Hearth が保証する)、翻訳機能付きの録画面談などの機能を提供することで、外国人の賃貸契約へのハードルを下げている。既存需要に合わせて商品を投入するプロダクトアウト型ではなく、「こういう住み方をしたい」というコンセプトに基づいて商品を設計するマーケットイン型のアプローチが功を奏し、同社がリノベーションしたシェアハウスやコミュニティスペースも人気を博した。
大東建託と PoC を実施しているほか、野村證券のアクセラレーションプログラム「VOYAGER」の第2期デモデイで優勝し、野村證券が東京・新宿区内に所有するビルでコミュニティ空間の創出に取り組んでいるそうだ。
【ENTX 賞】SPOBY by CUVEYES
<副賞>
- mora カード1万円分 + ENTX 特製Tシャツ
CUVEYES は、健康×エンターテイメントをテーマに、消費者の健康課題と行政や企業が持つ経営課題、そして社会課題の解決を目指すスタートアップだ。セレブリティを起用した一般的な商品の宣伝に代えて、ユーザ自身にスポットライトを当て、エクササイズをゲーミフィケーションし、企業にスポンサードしてもらうアプリ「SPOBY(スポビー)」を今年2月にローンチした。AppStore の無料アプリランキングで二度にわたりダウンロード数1位の座を獲得している。
ユーザは、運動量や運動の種類などに応じて、サファイヤ・ルビー・エメラルド・クリスタルなどのスウェットジュエルを獲得できる(スマートフォンの加速度センサーや GPS で運動量や運動の種類を認識)。商品をプロモーションしたい企業は、ターゲティングしたい顧客層に応じて、ユーザに提供するリワードに必要なスウェットジュエルの組み合わせ(充足条件)を設定する。企業はユーザが条件に達したときのみ、スポンサー費用として500円/人を支払う。
ユーザ自らがフィーチャーされたニュース記事が生成される機能も搭載。現在、サントリー、花王、京阪電鉄、JINS、ネスレ、JTB、大阪王将などがスポンサーとして参加している。
【IBM BlueHub 賞】SPACER by SPACER
<副賞>
- IBM Cloud 無償利用権 by IBM BlueHub
SPACER は、スマホで開け閉めできる受渡し IoT ロッカー「SPACER(スペースアール)」を開発している。既存のスマートロッカーは高価であることから償却に時間がかかり、駅前など限られたところにしか設置されていない。複数の運送会社が相乗り利用できるオープン型の宅配ボックスも、コスト面や仕様上の制限などが足枷となり、普及には今ひとつ勢いがついていない。SPACER はロッカーの IoT 化により、これらの問題を解決しようとしている。
ユーザは2時間まで無料、その後6時間毎に240円の使用料を支払い、ロッカーを設置する地権者、SPACER、メンテナンス事業者がこの使用料をレベニューシェアする。ロッカーを個人商店などが店頭に設置した場合、IoT ロッカーからの使用料収入に加え、営業時間外でも商品を受け渡せるようになり、利便性や売上の向上が望める。住友不動産東京日本橋タワー、近畿大学中央図書館、千葉大学付属病院、祖師ヶ谷大蔵商店街などで、PoC を実施中または実施が予定されていて、設置場所をさらに開拓中だ。
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【オーディエンス賞】TLUNCH by Mellow
<副賞>
- Amazon Echo by Amazon Web Services
TLUNCH(トランチ)は、ビルの空きスペースとフードトラックをマッチングするプラットフォームだ。東京の六本木や赤坂、横浜を中心に約80カ所のビルオーナーと契約しており、これまでに約400軒のフードトラックが当該プラットフォームを利用。個人経営であることが多いフードトラックのオーナーにとっては、営業スペースを見つけるためにビルオーナーと個別に交渉するのは煩わしく、TLUNCH がその一切の手間を代行する。
フードトラックからは売上の15%を TLUNCH が手数料として受け取り、うち5%がビルオーナーに場所代として支払われる。一つの営業スペースに曜日毎に違うフードトラックがやってくるようにしてユーザを飽きないようにしたり、フードトラックオーナーには売上分析・出店管理システムやアプリによる集客機能を提供し、1店舗あたり売上は前年比144%の成長率を達成している。
今年7月にはマッサージサービスを提供するトラックが営業を開始するなど、ネイルやマルシェなどフード以外の分野にも業態多角化を図る以降。2018年2月に実施された、ICC サミット FUKUOKA 2018 のスタートアップ・カタパルトで優勝している。
以下は、今回惜しくも入賞には至らなかったものの、審査員や聴衆から高く評価された2社だ。
シューマツワーカー by シューマツワーカー
シューマツワーカーは、週に10〜15時間程度稼働する副業社員を紹介するサービスだ。2017年7月の正式ローンチ以降、パラレルキャリアや働き方改革など社会情勢なども追い風となり、登録者数は3,500人、累計の取引クライアント数は121社に達した。稼働する副業社員の8割をエンジニアが占めるが、それ以外にもデザイナー、マーケター、採用人事、広報などさまざまな職種の需要があるのだという。
一方、約1年間にわたって副業に特化したサービスを提供した中で、登録者視点では副業にいつようなスキルがあること(本業で高く評価されているエンジニアが必ずしも副業でも評価されない場合がある)、常時業務に従事しているわけではないためモチベーション管理が重要であること、企業視点では副業社員に対するノウハウが不足していることなど、課題が明らかになったそうだ。シューマツワーカーでは、近日、これらのノウハウを集約した資料集「即戦力で活躍する副業社員の活用ガイダンス」を公開予定だ。
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souco by souco
企業では、需要・供給のギャップ吸収や迅速な配送のために、自社倉庫に一定量の商品在庫をストックするが、季節・気候や社会情勢などにより商品需要を大幅に変動する。自社倉庫の容量を超えた在庫は外部倉庫を借りることになるが、外部倉庫の検索は電話で一件ずつ問い合わせ、契約書や見積書など多くの書類のやりとりが発生する。最低利用期間、最低利用面積、各種デポジット費用の支払など、多くの縛りがあるのが現状だ。
souco は、オンライン上に倉庫のデータベースを構築し、倉庫を貸したい企業と借りたい企業の引き合わせを可能にした。利用開始までの必要手続を大幅簡素化し、申込から最短3日間で〝小ロット〟〝短期間〟で簡単に倉庫が利用開始できるようにした。契約内容を柔軟にしたことで、費用を平均30%コストカットすることにも成功している。サービスローンチ以降、取扱倉庫の合計取扱面積は20万坪を突破、登録ユーザも100社に迫る勢いだという。日本市場のほか、今後は ASEAN 諸国や中国への進出も目指している。
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