
「Supernova(スーパーノーヴァ)」は、東京を拠点に、Draper Nexus、Slogan、COENT Venture Partners、Viling Venture Partners といった VC や事業会社4社が共同運営するシードアクセラレータだ。一般的にスタートアップ界では外部資金を受け入れることで短期的に結果を求められることが多いのと対照的に、Supernova では地道で骨太のスタートアップにスポットライトを当て、ハンズオフ型支援を行い、また、先輩スタートアップと後輩スタートアップをコミュニティの中で混在並走させている点で特徴的な存在である。
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Supernova は27日、都内で同社2回目となるデモデイを開催した。Supernova CEO の前川英麿氏はデモデイの冒頭、プログラムが開始された2015年12月から2016年11月までの1年間にスタートアップ35社が School または Accelerator と呼ばれる Supernova のプログラムに参加し、うち60%が総額6.6億円のエンジェルラウンドでの資金調達に至ったことを明らかにした。
第2回デモデイでは7チームがピッチした。聴衆による投票の結果、人物を中心において360度動画撮影・再生を行うプラットフォーム「SwipeVideo」が優勝した(SwipeVideo はオーディエンス賞も受賞したが、内容が同じであるため本稿では記述を省略した)。本稿では、入賞者を含む全チームのサービスやピッチの内容についてランダウンでお伝えする。
【優勝】SwipeVideo by Amatelus Japan
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360°動画 が各所でサービス提供されているが、実際のところ、360°動画はあまり再生されていない。それは元来、360°動画が被写体である人物を中心を置いて周りから見回すよりも、視点のまわりの風景を見渡すことに使われることが多いからだ。SwipeVideo では、被写体を真ん中においてパレットタイム撮影することにより、スマートフォン上でのスワイプで被写体をあらゆるアングルから動画再生できる。
同様のテクノロジーでは、ヤフーの擬似3D動画や 360Channel が先行するものの表示画素数において SwipeVideo の方が優っているとする。また昨年9月にリリースされた iOS 10 以降、スマートフォン上で直接的に動画が扱えるようになったことで、スマートフォン上での360°動画を扱いやすい環境が整ったと強調する。
クラウドサービスをストレージとネットワークの従量課金で提供するモデルだが、企業からは(ウェブサイトなどでコンテンツ開放できない)自社プロダクトの360°動画を展示会場で見せたり、QR コードだけで来訪者に共有したりするような需要があることがわかったという。
【準優勝】インフォステラ by インフォステラ
副賞
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商用人工衛星の利用は増えているが、企業は問題に直面している。一般的に、通信のために企業は地上に基地局を建設する。(赤道上空高度36,000キロの静止衛星ではない)低軌道衛星は地球を周回しているので、一つの基地局だけでは、1日のうち40分×4回程度しか衛星と通信ができない。インフォステラは複数の基地局所有者と手を結び、基地局のシェアリングを実現しようとしている。本来の衛星と通信できない時間帯に、圏内にある別の衛星と通信できるよう、中継局をレンタルしようという仕組みだ。
一般的に衛星や基地局によって通信方式が異なるが、インフォステラでは、基地局のアンテナ配下に設置するハードウェアとクラウドサービスにより通信規格を変換・統一し、衛星がサードパーティーの所有する基地局を利用できるようにしている。これらの衛星の多くは低軌道を周回しているが、どの衛星がどのタイミングで、どの基地局の通信範囲に来るかを軌道をもとに計算し、それをもとに基地局の通信枠をある衛星に割り当てることができる(衛星と基地局のスケジュールマッチング)。収益の一部は、基地局の所有者に還元される。
先々週にプロトタイプが完成。今後、ガーナ、台湾、モンゴル、タイの大学が持つ基地局を結び、ネットワークの運用を今年3月に開始予定。今年5月に次期ラウンドの資金調達を行い、2018年春には商用サービスをスタートしたいとしている。
第3位:RESVO
副賞
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RESVO は、世界初となる血液による統合失調症の診断キットを開発している。統合失調症の発症確率は1%程度で、日本国内の患者数は約100万人と喘息患者数とほぼ同等。決して珍しくない疾患である。早期発見と予防によって、日常生活における弊害は最小化することができるが、現在は面談(DSM-IV法)による診断が主でで、幻覚や妄想など2つ以上の症例が継続的に確認されないと統合失調症と診断されないなど、早期発見や予防には課題が残る。
RESVO は統合失調症患者の血液中に見られるリスクマーカーを見つけ、血液検査で統合失調症であることを確認できるようにした。発症前の人(陰性)の人にも対応でき、成人だけでなく新生児であっても微量な血液だけで診断を可能にする。早期発見により早期の投薬治療が可能になり、症状の重篤化を防ぐことができる。
現在プロトタイプキットを開発しており、年内には地方国立大学で実証実験を行う予定。2021年の商用発売を目標に据えている。現在、シードラウンドで6,000万円を調達中だ。
ficta by クロスリバ
クロスリバの ficta は、「映画や小説のストーリーは全て同じルールに従っている」という、神話学者の Joseph Campbell 氏が唱える神話理論(Hero’s Journey)に従って、世の中に受け入れられやすいストーリーを作れるようにしたクリエイティブ・プラットフォーム。ユーザは ficta を使って自分のストーリーを作り、それをオンラインで読めるようにしたり、プリントオンデマンドで印刷できたりする。
現在、物語解析エンジンを開発中。例えば、出版社の編集者には大量の持ち込み原稿が寄せられるが、その多くを編集者は読むことができていない。持ち込まれた原稿を解析することで、システマティックにスクリーニングし、その過程をした原稿にのみ編集者が目を通す、というような活用が可能になるとのことだ。
Embody Me by Paneo
Skype などでのコミュニケーションでは、動画や音声だけでは直接対面で話をする場合に比べ、ニュアンスやコンテキストが伝わりにくい場合がある。Paneo では、オンラインでのコミュニケーションがリアルに比べ足りない部分を補い、必ずしも会って話す必要の無い環境を提供する。
この分野では、マイクロソフトなどが複数台の Kinect を使って人体を 3D キャプチャーし、リアルタイムレンダリングするようなしくみを開発しているが、スタジオが必要だったりするなど、その準備や環境は手軽なものとは言えない。が、実在感が得られにくかったり、作成に手間がかかったりしてしまう。
Paneo の Embody Me では顔写真から 3D モデルを容易に作成し、それを使ってグループチャットできるしくみを開発。カメラが捉えたユーザ動作から 3D モデルが動く映像を作成し、通話中の相手にリアルタイムに届ける。2017年初頭には、HTC Vive や Oculus Rift 向けのフラッグシップアプリをリリースする計画だ。
教育図鑑
教育図鑑は、学校や塾の情報を受験生に知ってもらうためのサイト。受験生や保護者は、情報の不足から学校や塾を選ぶ際に妥協を余儀なくされており、一方で、学校や塾は見込み客(=受験生)への効果的なリーチ手段がないことから、高額な顧客獲得コストを余儀なくされている。また、すでにオンラインやオフラインで手に入る情報も塾関連のものがほとんどで、学校に関する情報はあまり多くは露出されていない。
教育図鑑では、各校共通の400項目のニーズを反映した質問・回答でコンテンツが構成されている。質問に回答しているのは、在校生・保護者・卒業生・学校の先生・塾の先生・司書・教育専門家などだ。これらの情報を参考に、受験生や保護者は自分にあった適切な学校や塾を選ぶことができる。
CMS(コンテンツマネジメントシステム)を学校や塾に開放し、学校や塾から受け取る情報掲載料と受験生や保護者からの資料請求があったときに発生する報酬が収入源となる。Q&A コミュニティの「教えて!goo」と提携し、寄せられた質問のうち教育分野に関する質問に教育図鑑のクライアントが回答することで、ユーザをトラクションする。
STORYPAD by あれをこれして
STORYPAD は、編集者や漫画家のための人工知能プラットフォームで、ストーリー推移やキャラクター設計など創作過程のパートナーになることを目指している。現在、日本には50を超えるコミックサイトやアプリがあり、有名コミック雑誌を発行する大手出版社も存在する。成長を続ける電子書籍市場では8割が電子コミックの需要だが、一方で万雑誌は発行部数が低迷し、制作現場を圧迫し疲弊させている。STORYPAD は漫画をコマ単位に分解し、シーンの束単位に揃え、アクション・感情・セリフなどの各種情報を解析できる。
某大手印刷会社との業務提携が決まり、今年春以降、漫画やコミックを発行する出版社各社への導入される予定。料金は1タイトルに対し月額5万円となっており、世の中で流通する漫画全タイトルのうち30%のシェアをとることを目標に据えている。将来的には作品のライセンスにも事業を拡大し、2017年中有は漫画や小説をメインに、2018年以降は映画やゲームなどの分野にも進出したいとしている。
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