「Node Tokyo 2018」が開幕——日本内外から開発者・起業家・大企業担当者が結集、ブロックチェーンの課題と未来を語る

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CryptoAge 大日向祐介氏と Omise Holdings CEO 長谷川潤氏

本稿は、11月18日から20日まで開催される「NodeTokyo 2018」の取材の一部。

11月19日、東京・日比谷の BASE Q には、ブロックチェーンや仮想通貨に造詣の深い開発者や起業家、関心を持つコミュニティメンバーなど、日本内外から600名以上を迎え Node Tokyo が開催された。Node という言葉が象徴するように、このイベントでは、ブロックチェーンに象徴される非中央集権的なコミュニティネットワークの入口・出口として東京を位置づけている。多くのスタートアップカンファレンスは、ある種、その機会をコミュニティのハブにしようという思想の上に成り立っていることが多いが、それらとはやや趣を異にしているかもしれない。

イベントの冒頭、主催者である CryptoAge の大日向祐介(おびなた・ゆうすけ)氏と共に登壇した、共同主催者で Omise Holdings CEO の長谷川潤(はせがわ・じゅん)氏は、Ethereum Community Fund に代表されるファンドや、Neutrino に代表されるコワーキングスペースの運営などと共に、Node Tokyo のようなイベントを通じて、ブロックチェーン界隈における3つのギャップ——経済のギャップ、テクノロジーのギャップ、知識のギャップ——を埋めることに寄与していきたいと語った。

Ethereum Foundation 宮口礼子氏

続いて基調講演を行った Ethereum Foundation のエグゼクティブディレクター宮口礼子(みやぐち・あやこ)氏は、10月末から11月上旬にかけチェコの首都プラハで行われた Ethereum Foundation が主催する唯一のカンファレンス DevCon の様子を紹介。Ethereum Foundation の最もユニークなアセットであるコミュニティが拡大する中で、特にチームワークが得意な日本人こそ、より多くの人々がコミュニティへの参加に関心を持つようになってほしいと語った。

NodeTokyo 最初のパネルディスカッションでは、大手企業におけるブロックチェーン活用の実際について、異なる業界を代表する企業の担当者を迎えて課題や展望を共有した。三井不動産の 31 VENTURES から能登谷寛氏、MUFG Digital アクセラレータを統括する藤井達人氏、東京電力ホールディングスの設立したベンチャーでブロックチェーンを活用した P2P 電力取引を計画する TRENDE の妹尾賢俊氏が登壇。モデレータは、Omise Japan の宇野雅晴氏が務めた。

ブロックチェーンの持つ可能性を最大限に引き出す上ではパブリックチェーンが有用だが、社会インフラやミッションクリティカルなサービスでブロックチェーンを使う場合、一定のセキュリティや堅牢性を担保するために、現在のところ、ブロックチェーンを活用とする大企業はプライベートブロックチェーンをベースにサービスを開発しているのが現状。どういった技術を採用し、利便性と安全性のバランスをどのあたりで取るかは、業種によっても少しずつフォーカスが違っていて興味深かった。

MUFG 藤井達人氏

MUFG は、Akamai と共同開発した高速トランザクションが可能な〝新型ブロックチェーン〟や、「coin(旧称:MUFG コイン」など、日本のメガバンクの中ではブロックチェーンを使ったサービスでは一歩先駆けた存在。藤井氏の説明によれば、ちょうど航空業界でいう Star Alliance や One World のようなアライアンスのように、世界ではメガバンク集団がいくつかの協業体に分かれ、それぞれがブロックチェーンを使ったサービス開発に注力しているのだという。

銀行においてブロックチェーンを活用した最も顕著なユースケースは、既存の金融インフラに引きづられる部分が少ないため、新たなサービス開発がしやすかったり、手数料の割安なサービスを提供しやすかったりするというものだ。いずれのメガバンクもパブリックチェーンの活用について関心を示しつつも、KYC(Know Your Customer)と AML(Anti Money Laundering)という2つの機能が、銀行業務において肝となるだろうと藤井氏は語った。

三井不動産 能登谷寛氏

三井不動産の能登谷氏は個人的見解とは断りつつも、不動産サービスの一部がブロックチェーンによって置き換えられていく中で、不動産業界以外から入ってきたプレーヤーが、新たなスタンダードを作っていく可能性について脅威を感じると吐露した。1990年代に日本で不動産の証券化が紹介された中で、三井不動産は特に率先して日本の不動産業界にこれらを持ち込んだ経緯があったそうだが、不動産取引において常に新しいテクノロジーやメソッドで業界を牽引したいという思いは、逆にブロックチェーンを既存事業にアダプトするモチベーションとして有効に働くのかもしれない。

能登谷氏はまた、不動産の所有権と登記のしくみは各国各様で、世界で生まれたブロックチェーンを使った不動産取引のためのしくみが、そのまま日本で適用できるということにはなりにくいだろうとも語った。これこそ、 RealTech(RealityTech)イコール RegTech(RegulationTech)と言われる所以の一つだが、不動産分野におけるブロックチェーンの活用においては、特に各国法令への最適化やローカリゼーションが課題となり、ワールドワイドで活躍するブロックチェーンサービスのプレーヤーにとっては、各国市場のローカルプレーヤーとの協業(例えば、日本の不動産大手とのオープンイノベーションにおける PoC)などが重要な位置付けとなるだろう。

TRENDE 妹尾賢俊氏

TRENDE の妹尾氏は、電力取引においては個人を特定する情報が必要ではないため(どの物件でどれだけの電力が消費されたかが把握でき、それが請求情報と紐づけば事足りるため)、金融や不動産に比べれば、情報の秘匿性を担保する上でのハードルは低いだろう、と語った。電力の P2P 取引を実現する上では、スマートメーターやその情報の正しさを守るといった堅牢性がカギとなるが、TRENDE は現時点で開示できる情報は少なく、来年の PoC に向けて着々と準備を進めているということだった。

電力の P2P 取引の分野では、TRENDE ではないが東京電力フロンティアパートナーズが出資するシンガポールの ELECTRIFY も日本での PoC を計画している。2019年はまさに日本における電力 P2P 取引の元年になりそうだ。

Node Tokyo は今日20日に2日目を迎える。THE BRIDGE ではブロックチェーンスタートアップのピッチなどを会場からお伝えする予定だ。

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