汗センサー+MRIでアスリートの疲労を可視化、スポーツ外傷を防ぐーースタートアップが語る注目テクノロジー/グレースイメージング代表取締役 中島大輔氏

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本稿はIBM BlueHubによる寄稿。スタートアップとの共創プログラム「IBM BlueHub」では2014年の第1期スタートから現在まで、参加した多くのスタートアップが大手企業との事業提携やVCからの資金調達を実現している。第5期のDemo Dayは3月18日に開催された。

前回からの続き。IBM BlueHubでは、プログラムに参加してくれたメンターや卒業生などを中心に、B2B領域におけるSaaSなどのトレンドについてそれぞれの見解を語っていただきました。前半は主にベンチャーキャピタリストによる市場トレンド、後半はスタートアップによる技術トレンドをリレー形式でお送りします。

スタートアップの注目テックパート、7人目の笑農和代表取締役の下村豪徳氏からバトンを受け取るのは今回のIBM BlueHubで最も高い評価を得たグレースイメージング代表取締役 CEOの中島大輔氏です(太字の質問は全て筆者。回答は中島氏)。

DemoDayお疲れ様でした。アスリートの疲労を可視化するサービス、ということですが少し具体的にどういう技術を活用されているのか教えていただけますか

中島:いままでモニタリングに血液採取が必要であった体内疲労類似物質である乳酸を、ウェアラブルデバイスを使って汗から観測する技術と、いままで不可能だった遅筋と速筋のバランスをMRIにて評価可能な技術の2つを使いました。

これらを用いて選手の疲労の程度や選手が疲労しやすいかどうかをモニタリングし、疲労結果のスポーツ外傷を予防するサービスを年間パッケージングにて提供しているのが「Grace Imaging」になります。

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ヘルスケア関連ではFitbitやApple Watchなど、ウェアラブルによる健康状態のトラッキングが随分と一般化してきました。アスリートの健康管理にはどのような技術が使われているのでしょうか

中島:はい、スポーツ選手のパフォーマンスをモニタリングする技術として現在、加速度センサやGPS、ジャイロセンサ(CATAPULT社)、脈拍や体温、体表筋電(GARMIN社OMEGAWAVE社)など多種多彩なセンサが使われるようになっています。

また食事、睡眠履歴など生活習慣を記録するアプリケーション開発(CLIMB Factory社EUPHORIA社)も盛んで、近年のIoT技術やセンサ技術の発達により徐々にスポーツ選手の活動の定量化が進みつつあるんです。

具体的にデバイスから取得したデータはどのように活用されているのですか

中島:残念ながら今のところ、得られたデータから選手の意識や活動変容をもたらすような、強いエビデンスはまだ生まれていません。近年各社ともデータサイエンティストの補強等を実施して、データの有効な解釈による「自分たちのデータの高付加価値化」を狙っているような状況です。

なるほど。可視化・定量化は進んでいるが、それをサービスにこれからしようという段階

中島:そこで私たちは、体内代謝物質や、MRI等の医用画像診断技術の使用による筋組織解析という、選手の直接的なデータの解釈こそが選手のパフォーマンスに直結するという仮説のもと技術開発を進めたんです。

私たちを含め今後のビジネスのコアとなるのは、技術ありきでなく、技術の結果得られたデータから選手の意識行動変容をもたらす強いエビデンスを生み出すことです。

中島さんがこの分野で注目している企業などありますか

中島:GARMIN社は元来軍事技術であったものを転用したという点で他社より一日の長があり、時計型デバイスなどに自分たちの技術を上手く落とし込んでいますね。また技術のみに頼らず、実際のスポーツ愛好家の需要に合ったデザインや機能(GPSを用いたゴルフ場での距離表示など)を付与している点で注目しています。

最後にひとつ。広義でのスポーツテクノロジー、ヘルスケアだと思うのですが、このテーマでの技術革新に課題があるとしたらどのような点をお考えでしょうか

中島:新規技術開発を行う上で、日本ではマーケットサイズの観点で開発に投資出来る額が小さい傾向にある点がやはり課題ですね。我々のような技術開発を行う会社は資金調達のために最初から欧米でのPOC(Proof of Concept)戦略を考える必要が出てきます。

受賞おめでとうございました。最後の方にバトンお渡しします

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