Alphabet傘下のSidewalk Labs、狭小空間向けロボット家具を開発するOriの2,000万米ドル規模のラウンドをリード

SHARE:

世界の人口は2050年までに、現在の地球人口よりも25%多い100億人に達すると推定されている。国連の統計によると、その3分の2が都市部に居住することになるという。過密化に対応するためにますます緊急の課題となるのが、都市住居内の空間を最適化する必要性だが、これこそ Ori が成功を収めようと試みる領域だ。

Ori は、必要に応じて移動したりしまったりできる、ロボティックホームインテリアの設計を手がける。根本的に Ori が行うのは、空間の最適化を十分に踏まえながら、住宅所有者、建設会社、建築家が居住用の建物の内装を整える手伝いをすることだ。

狭小空間

ボストンを拠点とする同スタートアップは9月5日、Alphabet の都市イノベーションから派生した Sidewalk Labs がリードし、IKEA のフランチャイジーである Ingka Group、Khosla Ventures、Geolo Capital が参加するシリーズ B ラウンドで、2,000万米ドルを調達したと発表した。これにより2015年の設立以来の資金調達額は合わせて2,700万米ドルに達する。同社によると、今回の新たな現金注入を活用し、ロボット製品やシステムを作るという枠を超え、フレキシブルな都市空間を作るためにより多くの建設業者や建築家とパートナーシップを構築する予定だという。

販売場所の面では、Ori はすでに素晴らしいパートナーを少なくとも1社は獲得している。2020年にアジア市場を皮切りに出回る予定のロボット家具を開発するため、最近 IKEA との提携を発表したのだ。

Ingka Investments でマネージングディレクターを務める Krister Mattsson 氏は次のように語る。

今回の投資は、特に大都市に移動する人がますます増えるこの時代において、お客様に手頃、便利、そしてより持続的な狭小空間ソリューションを提供し家での生活におけるパートナーになりたいという、Ingka Group の方向性に合致するものです。

さらに私たちは、将来顧客のために革新的な会合場所やインスピレーションが得られるリテールエクスペリエンス(小売体験)を作り出すことにつながるかもしれない、よりフレキシブルでレスポンシブ(対応型)な空間を構築する新たな方法を Ori と一緒に探索するという、潜在的なチャンスも見出しています。

一例として、IKEA の新しい Rognan ラインには、ソファー、ベッド、衣装だんすを単一のユニットに統合した製品があり、設置される空間に合わせてスライドしたり変化したりする。

Ori は IKEA と提携し、ロボット家具ライン「Rognan」を開発。

また、壁から出てくるクローゼットや、床から持ち上がって天井へとしまえるベッドやデスクなど、Ori では移動したりスライドしたりするさまざまなロボット家具を取り揃えている。

こういった製品は、壁のボタンで手動操作、あるいは Ori のモバイルアプリで操作できるほか、Google Home や Amazon Echo といったスマートスピーカーと統合すれば音声による操作も可能だ。

形状が変わる Ori の家具

これまでの話

Ori のテクノロジーは、2011年から2016年にかけて実施されたマサチューセッツ工科大学(MIT)の CityHome プロジェクトに端を発した研究の上に成り立っている。同プロジェクトは、現代の狭い家が「その2倍から3倍の広さの集合住宅として機能できる」ことを実証することを目指したものだ。

Ori の最初の量産ユニットが市場に出回るようになったのは2018年になってからだが、同社製品は今日では米国の主要都市において「30以上のプロジェクト」で設置されているという。

Sidewalk Labs をリードインベスターとして獲得したことは、Ori にとって重要な進展だ。Google の姉妹会社である Sidewalk Labs は最近、トロントのウォーターフロントをスマートシティに変えるという大胆な計画でメディアをにぎわせたが、Alphabet の子会社である同社は、過去数年の間に何社かのスタートアップに対して直接投資を行っている。もっとも最近では、高齢者向けのコミュニティマーケットプレイスに対する500万米ドル規模のシード投資をリードしている

Sidewalk Labs の会長兼 CEO の Dan Doctoroff 氏は次のように付け加えた。

柔軟性と効率性は、密度の高い都市生活をより楽しくしてくれるだけでなく、値段的にも手に届きやすくしてくれます。Ori のテクノロジーと、フレキシブルでレスポンシブな室内空間を作り出す新たな手法は、都市生活者に手頃な価格で最高の都市生活エクスペリエンスを提供することを可能にしてくれます。

また Ori は、クリーンな輸送機関に対応したり無駄を削減する新たな方法を見つけたりする都市向けの持続可能な計画をスタートアップや投資家が推進するという、より広範な流れにも合致する。数か月前に、Atomico と Northzone が、建設プロジェクトにおける住宅開発の設計を最適化する AI 駆動のソフトウェアを開発した Spacemaker というノルウェー企業に対する2,500万米ドル規模の投資をリードしている。Ori は異なる観点からだが、Spacemaker と同様の問題に取り組む。外側の建設ではなく、内装デザインを対象とする。

Ori の設立者兼 CEO の Hasier Larrea 氏は次のように語った。

Ori では内部空間を違った目で見ます。私たちは、機能性は利用可能な物理的空間量に直線的に相関するという、何世紀も続いてきた概念に挑んでいるのです。私たちと同じように都心がどのように構築されるべきかを再考したり、建物、地域、都市規模で取り組んだりしている投資者たちとパートナーシップを結び協働する機会が与えられたことは、私たちを非常に活気づけてくれます。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する