
e27 の Telegram グループ での話を耳にするのはいつも楽しいことだが、それには多くの理由がある。だが多くの場合、精神的に刺激のある議論ができたり、お伝えできるかもしれないスリリングなニュースがあったりするからだろう。
9月27日、インドネシアのある民間銀行が株主割当制度を使って資金調達をするという最近の計画に関連して、メンバーの1人が Bisnis Indonesia のニュース記事を投稿した。Bank Artos Indonesia という銀行が、最大で150億株(1株あたり100インドネシアルピア)を発行する計画だという。
新規調達により、同行は「技術をベースとする銀行」への変革を目指す。
では、これのどこが特別なのか?
特別な理由は、公式文書によると同行の51%の株式が Jerry Ng 氏(PT Metamorfosis Ekosistem Indonesia)と Patrick Walujo 氏(WTT)という、インドネシア、そしておそらくは東南アジアで著名なテック投資家として知られる2人の投資家の手に渡るからである。
シニアバンカーの Jerry Ng 氏は Bank Tabungan Pensiunan Nasional(BTPN)を10年ほど率いた。その間、銀行の資産は10倍になった。
デジタル時代に変革を遂げた点で、BTPN はインドネシアで最も成功を収めた銀行の1つだと考えられている。 調査会社 iPrice Group の調べによると、同行のモバイルバンキングプラットフォーム Jenius は、インドネシアで最も多く使われる e ウォレットで5本の指に入る。これを凌ぐのは Go-Pay、OVO、DANA、LinkAja くらいだ。
ニューリテールスタートアップ Warung Pintar が実施したシリーズ B ラウンドでも、Ng 氏は投資家の1人として名を連ねた。
Patrick Walujo 氏自身、かつては Goldman Sachs の投資バンカーや Ernst & Young のアソシエイトを務めていた。彼は Northstar Group を立ち上げ、配車サービス大手 Go-jek のアーリーインベスターとしてよく知られている。
ご理解いただけただろうか?
まず、Bank Artos の臨時株主総会が9月30日に行われる予定であることに留意することが重要である。
Bank Artos の「技術をベースとする銀行」がどのような姿になるかについての詳細は明らかにされていない。
だが Go-jek がスーパーアプリを立ち上げる野望を持っていることを考慮した上で過去の買収をみると、フィンテックのエコシステムを構築する方向に向かうパターンであることは明らかだ。同社の e ウォレットサービス Go-Pay はすでに、インドネシアで最も人気のある e ウォレットプラットフォームのランキングでトップとなった。次にデジタル銀行を目指すのはごく自然な成り行きのようにみえる。
とりわけ最近では、競合の Grab が自社の e ウォレットサービス OVO と、DANA(Ant Financial=螞蟻金融と Emtek Group の合弁会社)の統合を検討していると報じられている。これに対抗するには、さらなるパンチが必要とされているところだ。
Warung Pintar は、ワルン所有者向けにデジタル取引を可能とすることでオフラインとオンラインを統合する有望なスタートアップである。さらに、投資家として OVO を頼りにしている。
今回の統合により、スタートアップ2社がリードする形で、より強力なデジタル銀行のエコシステムが誕生する可能性がある。
ただ、課題もいくつか残されている。インドネシアの規制当局はシンガポールの当局ほどの開放水準に達していない。シンガポールではすべての取引をオンラインプラットフォームで完結させるサービスを目指して、デジタル銀行の免許を5社に交付すると発表した。
インドネシアでのデジタル銀行の運営に際しては、何らかの制約があるかもしれない。だが将来に向け、遂に一歩を踏み出したのだ。
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