パリ拠点のInterstellar Lab、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠にバイオーム網を構築へ——火星研究を活用、気候変動から生き延びる方法を探る

SHARE:
Interstellar Lab

Interstellar Lab は11月21日、モハーヴェ砂漠にバイオーム(生物群系)のネットワークを作り上げると発表した。これは人間が火星で生きる方法をさらに調査するために設計されたものであり、またこれらの知見は地球上にもっと持続可能なコミュニティを作るためにも応用される。

地球上に作られるこのビレッジは Experimental Bioregenerative Station(バイオ再生実験ステーション)、または EBios と呼ばれる。パリを拠点とする Interstellar Lab はこのプロジェクトを「再生可能な生存支援技術の閉じた循環系のビレッジ」と表現している。水処理やゴミ処理、食料生産といったシステムは、厳しい環境での生存に最適化するために、徹底的にいちから設計される。

人間が別の星で生きるための準備という高い目標があるが、同時に、いずれ直面するかもしれない気候変動の危機や根本的な限界に適応するという意図もある。

設立者兼 CEO の Barbara Belvisi 氏はこう言う。

私たちの星で何が起きているのかを知ることと宇宙探索には、強いつながりがあります。

この発表がされたのは、人間を火星に送るということについての興味が近年高まってきてからだった。2か月前、Elon Musk 氏はいずれ人間を月や火星に運ぶ Space X の Starship をお披露目した。また NASA も、いずれ火星に人間を送る方法を見つけようとする長期計画を持っている。

これらのミッションはまだ遥か未来のことだが、そういった環境で人間がどうやって生存するのかを理解することは、大いに研究者の興味を引いてもいる。Belvisi 氏はこの興味への支援を望んでおり、それをビジネスにしたいと考えている。

パリを拠点とする Hardware Club の共同設立者として最もよく知られている Belvisi 氏は、次に何をしたいのか明確なプランもないままに昨年同社を去った。旅行をしたりして休みを取った後、彼女は自分が持つ最も大きな2つの情熱、宇宙旅行と環境について考え始めた。2018年、彼女はその2つを結びつける方法を見つけるために Interstellar Lab を設立した。

現時点で同社は主に自己資金と、エンジェル投資家からの多少の寄付で運営している。Belvisi 氏はモハーヴェに適切な場所を4か所確認し、2020年2月までに不動産を購入できるよう、現在交渉中であると述べている。また設計と建築のために追加の資金調達を行うべく動いている。目標は最初の EBios ビレッジ建設を2021年に始めることだ。

完成すれば、EBios は一度に100人が暮らせるようになる。1年の半分は、施設は他の星での居住や地球上での持続可能な生活に関する研究者の仕事のために使われる。施設内のすべてのものはリサイクルされ再利用される。Belvisi 氏はこのプロジェクトを NASA と話し合っており、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センター付近に2つめの EBios を建設することも模索している。

長期的に見て、もし地球上で研究して別のシステムの実現性を実際にテストすれば、火星もしくは月への持続可能な入植は現実的なものになるでしょう。

Southern California Commercial Spaceflight Initiative のディレクターであり、以前はホワイトハウスで NASA のリエゾンでもあった Greg Autry 氏は声明でこう述べている。

だがこの挑戦の一部では、研究プロジェクトがビジネスにもなっている。その目的のため、EBios は1年の残りの半分は旅行客向けとなり、究極的に持続可能なライフスタイルを体験する1週間を過ごしてもらうと Belvisi 氏は述べている。料金はまだ考慮中だが、現時点では1週間で3,000米ドルから6,000米ドルの間で計画しているという。

こういった経験にお金を払う人がいるという考えは、そんなに突飛なものでもない。イギリスでは2002年に Eden Project がオープンし、来訪者は一連のバイオームにより幅広い生息地域を体験でき、また環境や持続可能性について学ぶこともできる。より最近では、Astroland Space Agency がスペイン北部に火星での生活を再現するスポットをオープンした。参加者はオンラインでのトレーニングと、火星の環境を模して作られた洞窟での3日間の生活を合わせたパッケージに5,500米ドルを支払う。

もちろん、Interstellar のプロジェクトでもっとも思い起こされるものは、1990年代初頭の有名な Biosphere 2プロジェクトだ。アリゾナ砂漠に作られ、砂漠や熱帯雨林、湿地帯、草原といった生息地域を再現しようとしたバイオームである。食料を生産する区域もあった。科学者のチームがその中に2年間暮らしたが、食料生育のトラブル、動物の死亡、十分な量の酸素の維持といった数多の問題にぶつかった。

Belvisi 氏はその実験に参加したベテラン、ならびに現在ではアリゾナ大学の環境研究センターとなっている同施設で働いている研究者と連絡を取り合っていると述べている。

彼女はこれらの実験から学ぼうとしているが、Interstellar のプロジェクトは根本的な部分で違っているという。既存の生息地を模倣しようとするのではなく、EBios は閉じた循環系のビレッジの中で、生存に最適化するように徹底的に設計されているのだ。また、ある区画から別の区画へと汚染が拡大する可能性を防ぐために、それぞれの区画は独立することになる。

彼らの目標は地球のエコシステムを再現することでした。弊社の目標は、地球環境から完全に離れて、持続可能なやり方で、人間が生きていく方法を作り出すことです。(Belvisi 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する