世界的著名ラッパーJay-Z氏のスタートアップファンド、東南アジアで粛々と投資活動を進行中

SHARE:

Tech in Asia では、有料購読サービスを提供。有料記事の閲読、全記事への回数無制限閲読、5万社を超える企業データベースへの無制限アクセス、カンファレンスへの限定割引などの特典があります。詳しくはこちらから


彼には「99 Problems(同氏の曲名/99の問題)」があるが、東南アジアのテックに対する投資はそのうちの1つではなかった。

もしくは、見ようによっては、100番目の問題となったところだ。

ここ数か月の間、アメリカのヒップホップの大スター Jay-Z 氏は、東南アジアのスタートアップに対してますます活発な投資家となっている。

Jay-Z
Photo credit: Mikamote / Wikimedia Commons

Tech in Asia が目にした監督官庁の書類では、Arrive Opportunities Fund I, LP という名の法人が、ユニコーン間近の e コマース Zilingo の株を、2018年4月に行われた5,400万米ドルのシリーズ C 資金調達以降のどこかの時点で取得したことが明らかになっている。この投資は上記ラウンドの一部、もしくはその後に Zilingo が行った今年2月の2億2,600万米ドルのシリーズ D の一部なのかもしれない。

シンガポールの Accounting and Corporate Regulatory Authority(ACRA/会計企業規制庁)の書類では、同都市国家に拠点を置く Zillingo は11月末時点で3億5,800万米ドル超相当の資本金を支払い終えている。

Tech in Asia の計算によれば、Arrive Oppotunities Fund の出資はわずか0.1%余り、およそ42万米ドル相当の優先株式である。

しかしながら、ACRA の株主書類は一般的に転換社債投資を含まないため、上記の数字は Zillingo に対する Arrive の全投資額を反映していない可能性もある。

Tech in Asia は Zillingo にコメントを求めており、必要に応じて本記事を更新する予定だ。

Arrive の到着

スタートアップコンサルティング企業の Arrive を作ったのは、Jay-Z 氏によって2008年に設立された芸能事務所 Roc Nation であり、同事務所はカニエ・ウェスト、リアーナ、マライア・キャリー(敬称略)といった面々と契約している。2017年3月にローンチした同コンサルティング企業の目的は、「選ばれたアーリーステージのスタートアップのグループに、(中略)組織内の成長力を高めるため、ブランドサービス、ビジネス開発、アドバイス、そして資本」を提供することである。

同社はまた、「他の活動に加えて、既存のポートフォリオ企業をその後のグロースステージを通じてサポートするために、伝統的なベンチャーファンド」をローンチする計画であるとも述べている。

アメリカの Securities and Exchange Commission(証券取引委員会)の書類では、Arrive は2018年11月に4,000万米ドルの資金調達目標の半分を確保して、Arrive Oppotunities Fund I を立ち上げたことが示されている

同社の所在地はニューヨーク市ブロードウェイ1411となっているが、これは今年の初めまで Roc Nation の本社があった建物であり、現在も貸し出されているままとされている。

Sequoia や Uber とのコネクション

Jay-Z 氏と Roc Nation はエンターテインメントと芸能カルチャーのプロモーションに注力しているが、Arrive には社会的なインパクトのある投資機会を探るという任務もある。こういった要因を考慮すると、ファッションに注力してアジア各地で小規模店舗向けにリーチやセールスを拡大しようとしているマーケットプレイスの Zillingo を Arrive が支援するのは道理に適っている。

この e コマースプレイヤーの新たなプライベートレーベルビジネスは、ローンチや製品ライン販売のためにブランドやソーシャルメディアのインフルエンサーと協働しており、Roc Nation の芸能事務所としてのノウハウとも明らかに潜在的なシナジー効果がある。

同地域における Arrive のその他の投資は、こういったテーマに沿っているようだ。

Crunchbase によれば、敏感肌の顧客用に手頃な予約注文スキンケアパッケージを作っているシンガポールの Yours2019年8月に行ったシード資金調達に、同社は参加している。この350万米ドルのラウンドは Sequoia Capital India がリードし、Global Founders Fund、Kindred Ventures、そしてエンジェル投資家の Alan Jiang 氏も参加した。

Jiang 氏は e スクーターアプリ Beam の共同設立者兼 CEO であり、このスタートアップもシンガポールに拠点を置き、Arrive から資金を確保している。Beam は同社の e スクーターで都市の空気汚染を少なくし、もっと便利に動き回れるよう手助けをしたいと考えている。母国の市場では公共の場所での e スクーターシェアリングは実質的に禁止されているが、Beam は同国の私的な土地所有者との協働を続けている。同社はアデレードとも提携しており、このオーストラリアの都市に公共のシェアリングサービスを提供している。

Beam は Sequoia India が共同でリードした2018年8月のシードラウンドで640万米ドルを調達した。Tech in Asia がコンタクトを取ったところ、Beam の広報者はそのラウンドに Arrive が参加したことを認めた。

Tech in Asia は Yours にもコメントを求めている。

東南アジア以外では、Arrive はしばしば Sequoia Capital との共同投資者として目にすることがある。両社ともにアメリカの個人向け金融アプリ Robinhood を(別々の資金調達ラウンドではあるようだが)支援しており、またアメリカのテックドリブンな保険会社 Ethos Life のシリーズ B に共同投資している。

Zilingo 創業者の2人。左から:CEO Ankiti Bose 氏、CTO Dhruv Kapoor 氏
Photo credit: Zilingo

Zillingo の共同設立者兼チーフエグゼクティブの Ankiti Bose 氏は、以前 Sequoia India でアナリストとして働いていた。これは、Roc Nation の Arrive は Sequoia グループを通じて、当該地域の投資機会につながっているということを示唆しているのかもしれない。

Tech in Asia はコメントを求めて Sequoia India と Arrive にコンタクトを取っているところだ。

その他の可能性のあるコネクションには Uber とのものがある。Yours の設立者 Navneet Kaur 氏と、Beam の CEO であり同スキンケアスタートアップのアドバイザーでもある Alan Jiang 氏は、2018年初頭、東南アジアに進出する前の Uber でともに働いていた。両者はその後、中国のバイクシェアリング企業 Ofo が同地域から去る前に、同社で共に一時期働いていた。

一方で Jay-Z 氏は Uber の初期の投資家である。彼が初めに同社に注入した200万米ドルは、今日では7,000万米ドルに相当すると言われている

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する