“ペガサス”企業の見つけ方 ーー 1億ドル事業分析17の黄金律【前半】

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ピックアップ記事: The Pegasus Startup: Flying Over VCs on the Wings of Profits

大型調達を何度繰り返し、10億ドル以上の企業価値にまで成長した後、上場を目指すユニコーン企業。最近ではUber、Lyft、Pinterest、Airbnb(来年上場の噂)や上場に失敗したWeWorkなどがこうした企業の代表格でしょう。しかし彼らは上場に漕ぎ着けたとしても赤字経営であることが大半です。いかに市場にインパクトを残せても、事業の健全性に対して株主から疑問を持たれてしまいます。そこでいま注目が集まっているのが「ペガサス」企業です。

ペガサスはその名の通り、自ら羽ばたく力を持ちます。言い換えれば十分に“収益化”できる力を上場前から持っている“10億ドル価値”の企業といえます。Uberの初期投資家でもあるJason Calacanis氏によるとペガサスの素質を持つ企業定義は下記4つとなります。

  • 少額資金で並外れたプロダクトを作れる小さなチームを持つ
  • 初日から売上を出して製品開発へ注げる
  • 「チーム」「プロダクト」「カスタマーフィードバック」「グロース」にのみ特化する
  • 年間売上成長率が3倍

資金調達回数を減らすWin-Winな資本戦略

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従来、ユニコーン企業はマーケットプレイス型事業であること多く、こうしたサービスは規模の経済やネットワークエフェクトを構築してからでない限り収益化を見込めませんでした。一方、ペガサス企業はSaaS型事業が多い印象で、収益化が見込めるいわば「ドル箱」を完成させています。

そのため調達資金を収益化が必ずしも見込めるかわからない不透明な未来ではなく、既存収益モデルの着実な拡大に注ぎ、事業拡大スピードを早める時にだけ調達を行います。資金ショートを避けるための調達を繰り返すという理由はペガサス企業には当てはまりません。

また、最大の特徴は資金調達をあまり多くしないことです。そもそも自力での事業継続ができるため、通常のスタートアップが経る、シード、シリーズA、Bの調達ラウンドをスキップします。

高い収益性と事業拡大の見込みから一気に平均的なスタートアップがシリーズCで調達する規模のラウンドを仕掛けることがあるのです。たとえばパスワード管理アプリ「1Password」は創業14年目にして初めて調達を実施。シリーズAにて2億ドルの資金をいきなり獲得しています。

ペガサス企業は初期投資家に対して株式の希釈を遠ぞけ、かつ大型ラウンドにてリターンを作れる魅力的な案件となります。仮に追加投資できるのならば高確率で上場リターンも得ることができるでしょう。先ほど紹介したJason氏によると先行投資しておくことで、各ラウンドにて平均して10〜20%ほど希釈を抑えられるそうです。

また、エグジット時にはオーナーシップが平均比2倍高いとのこと。創業者にとっても不要に多くの株主を持って口を出されないメリットがあり、こうした資本集中戦略を採用するといいます。

17の黄金律

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さて、ペガサス企業はユニコーン企業に往々にして必要とされる、年間売上1億ドルの事業を作り上げることが求められます。事業構築にはBrian Balfour氏が提唱する4つのモデルと17の項目チェックをします。

  1. プロダクト・マーケットフィット: 本当に市場が求めているものか?
  2. プロダクト・チャネルフィット: プロダクト・フィットしたものは事業を十分にスケールできる顧客獲得チャネルを得られるか?
  3. チャネル・モデルフィット: 見つけた顧客獲得チャネルから十分な顧客を獲得して、収益性(ユニットエコノミクス)の観点からもスケールできる事業か?
  4. モデル・マーケットフィット: 市場規模も考えた上で、1億ドルの事業を生み出せるのか?

後半からは以前紹介した出世払い学校「Microverse」を例に取りながら、4つの分析手順を踏みたいと思います。結論から述べるとMicroverseはペガサス企業に最終的に最適ではありませんでしたが、分析手順を説明するには好例であったため紹介しています。後半はこちらの記事になります。

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