新型コロナで激動するスタートアップ投資、世界の急落と変革への期待【Startup Genome調査報告】

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中国はコロナウイルスの影響でVC投資が減少して大打撃を受けている。 Image Credit : Startup Genome

コロナウイルスの影響によって世界中は混乱状態だが、世界のスタートアップコミュニティも例外ではない。Startup Genomeは、新型コロナウイルスの発生以降、スタートアップがどのような影響を受けているかについて計画しているレポートの第1弾を発表した。

同社によると、中国のベンチャーキャピタルの投資ディールは、年明け2カ月間の間に、世界の他の地域と比較して50~57%ほど減少したという。PitchbookとStartup Genomeが収集したデータを踏まえると、このような落ち込みが世界的に起こった場合、わずか2カ月間だけでも約280億ドルのスタートアップ投資が失われることになり、企業に多大な影響を及ぼすことになる。

私たちの世界が想像できる最も劇的な方法で揺れ動いている今こそ、グローバルなスタートアップコミュニティがお互いに親密になり、サポートし、学び合う時です。1987年のクラッシュ、2000年から2001年のドットコムバブル崩壊、2007年の金融危機を覚えている人もいることでしょう。しかし新型コロナウイルスの場合、経済危機が突発的に発生しただけでなく、人体への脅威も大きなものです。

Startup GenomeのチーフイノベーションオフィサーであるArnobio Morelix氏はVentureBeatへの電子メールで以上のように述べている。

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中国の投資ディール件数は急落している。 Image Credit: Startup Genome

投資の減少が今後2カ月以上長引き、新型コロナウイルス・ショックが経済収縮を引き起こす場合、過去2回の景気後退(2000-2001年と2007-2009年)は、現在の状況を示す歴史的な参考例となりうるとMorelix氏は述べている。

過去の景気後退期では、12カ月間の世界全体のVC投資の総減少率は21.6%から29.3%である。この減少率を現在に当てはめて計算した場合、世界のVC投資の減少額は最大864億ドルに相当する。

過去2回の景気後退後、世界全体のVC投資が元の水準に回復するまでには、1年(2007-2008年)及び3年(2000-2001年)の歳月を要した。加えて、米国での技術系IPOは、過去2回の不況の後、90%も減少した。

しかしStartup Genomeは、危機はあらゆるチャンスを生む機会だと述べている。過去2回の不況期には、投資された金額自体は少なかったものの、より多くの企業が資金を調達していました。これは、不況後においては、キャッシュ効率の向上に努めた企業は、例え評価額や調達額が低かろうとも、しっかりと資金調達を行えるという事実を意味しています。

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アジアのVC投資件数の減少。 Image Credit: Startup Genome

さらに、現在のFortune 500に名を連ねる企業の半数以上が不況や弱気市場で生まれ、2007年から2009年の不況期には、50社以上のユニコーン企業(総額1,452億ドル)が創業されているという事実があります。Airbnbはこの中に含まれています。Airbnbは、不況下において、起業家が家賃を支払う余裕がなかったために誕生しました。

新興企業は、古い企業とは正反対に、特に不況期の経済において雇用創出の要とされている。先日米国では、失業保険の申請件数が1週間で330万人に達したが、これは労働省が数字を発表し始めた1967年以来の高水準である。つまり経済は今、これまでになくスタートアップを必要としているのである。

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不況期におけるVC投資件数の減少。 Image Credit: Startup Genome

世界各国の政府は、このような困難な時期を乗り切るために創業者を支援している。例えばデンマークでは、人員削減をしない企業の給与の75%を政府が負担しており、ドイツ政府は、フルタイムからパートタイムに降格した従業員の減給分60%をカバーする措置を提供している。

スタートアップによるレイオフ(従業員の解雇)

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レイオフ件数の上昇(赤)、レイオフを実施したスタートアップ数の上昇(青) Image Credit: Layoffs.fyi

上図は、従業員を解雇したスタートアップ企業の追跡調査を行うLayoffs.fyiのRoger Lee氏によるもの。Layoffs.fyiの新型コロナウイルス・トラッカーは、3月11日にコロナウイルスがパンデミックと宣言されて以来、合計7,000人の従業員を解雇している82の新興企業を追跡している。

上図では確認された数だけを示しているが、実際の数字はこの2倍以上とも噂されている。まだ3週間しか経っていないが、解雇は週を追うごとに増加している。スタートアップのレイオフの大部分はサンフランシスコ地域にあるという。

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レイオフはサンフランシスコに集中している Image Credit: Layoffs.fyi

求人サイトIndeedのエコノミスト、Nick Bunker氏はメールで「テック系の労働者の需要は減速しているように見えるが、全体の労働市場よりは比較的良好に推移している。3月27日現在、ソフトウェア・エンジニアの求人は、昨年の同時期と比べて5.8%減少している。一方で米国の全職種における求人は、昨年から15.2%減となっている」と述べている。

Startup Genomeによると、中国の1〜2月の工業生産高はすでに13.5%減、小売売上高は前年比20.5%減となっている。VCの総投資額の落ち込みは50%から57%とさらに深刻だ。またその他のアジア地域もそれに続いている。アジアのスタートアップ・エコシステム全体における中国資本の重要性や、1月に台湾と韓国でウイルスが発生したことを考えると、この結果は驚くべきことではない。

Startup Genomeは、このVC投資ディール件数の減少は、春節(中国における正月)による季節的な落ち込みではないことに注意が必要だと指摘している。過去3年間、12月と比較して1月の投資件数は横ばいか、それ以上の値を記録しているためだ。

それにもかかわらず、Startup Genomeは、ロックダウン後の経済の再開については楽観的に捉えることもできるという見方も示した。というのも、最初にウイルスの被害を受けた中国は、ゆっくりと仕事が戻ってきているからである。オフィスは再び使用され始め、Startup Genomeのエコシステム・パートナー、Foxconn(中国の大手iPhone生産メーカー)のような企業は、近日中に通常の生産スケジュールを再開すると発表している企業もある。加えて、LinkedInのデータによれば、中国の雇用者数は以前の水準には及ばないものの、徐々に回復の兆しを見せているという。

より大きなテック業界への影響に関しては、Candorという企業が現在、採用及びポジションの凍結、レイオフを実施している企業のリストを公表している。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】