Docugamiが指摘する社会課題「企業ドキュメントの機能不全」とは

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Image Credit:Grammarly

ピックアップ:Grammarly makes first investment, taking stake in Seattle document engineering startup Docugami

ニュースサマリ:コミュニケーション方法の改善を支援する「Grammarly」が5月13日、企業がドキュメントから情報を作成および抽出する方法を再発明する「Docugami」の1,000万ドルを集めたシリーズラウンドに参加したことを公表した。Grammarlyにとって最初の投資となる。

Grammarlyは、昨年秋に9000万ドルの資金調達を行い、評価額は10億ドルを超えている。キャッシュフローが好調で収益性が高く、Docugamiの資金調達ラウンドに参加する柔軟性を持っていた。現時点で両社によるテクノロジーや製品で提携する計画はないとしたが、将来の可能性は否定していない。

話題のポイント:Docugamiが解決したい社会課題は「ドキュメントの機能不全」です。これまでコミュニケーションや契約、カルテなどがデジタル化されて「どこに何があるのか」という情報管理は劇的に便利になりました。関わりが薄いプロジェクトだとしても、常識の範囲で入れ子構造化で運用されていれば目的の情報に容易にアクセスできます。

しかし情報管理の目的は整理をすることではなく利用しやすくすることです。経営判断を左右する重要な情報がどのプロジェクトにあるのかを把握できていないと辿り着けないのならば、アクセスが容易であっても意味がありません。

「どこに何があり、それぞれどんな価値を持つのか」を俯瞰できるようになって初めて情報管理ができたと言えるのでしょう。

今、このように価値が把握できていないビジネス情報(非構造化データ)は全体の85%だと言われています。slackで円滑にしているやり取りをストック型の資産として管理できている、過去一年間の会議を新卒で入ってきた社員にも分かりやすい形にまとまっている、そんな企業はほとんどないと思います。

ただし、やろうと思ってできないわけではありません。ルールを作ったり、毎回ちょっとしたやり取りまで可視化するのは無駄が多く、労力に見合いません。これはまさにAIと相性が良い状態と言えます。

Docugamiはこのような状態を「ドキュメントの機能不全」と呼び解決しようとしています。ターゲットは「スモールデータ」、戦略は「AIクロス戦略」「プラグイン」「企業戦略を理解する」の3つです。

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Photo by fauxels from Pexels

昨今の機械学習はビッグデータがあることが前提になっています。経験が浅い人の判断が経験豊富な人の判断に劣るのは人間でも機械学習でも同じです。データのセンシングと設計をした後に、十分な量のサンプリングを取得できるかがこの技術を有効活用できるのかを左右します。

上で挙げた全体の85%の非構造化データの多くがビッグデータには不向きなものです。契約書、定例会の報告資料のような情報は定性的であるのに加えて、XMLのように規則作りも難しく、それぞれの企業が抱えるデータが異なるため、小さなユニットが無数に存在してまとめて扱うのが難しいからです。

Ducugamiが狙うのはこの企業ごと、または企業内の部門ごとに特有のドキュメントの「スモールデータ」です。小さなユニットごとに解決策を提供し、数を増やすことで非構造化データ全体の情報管理を実現しようとしています。

解決アプローチは明らかにしていないものの、自然言語処理に機械学習を適用するだけでなく、画像認識、XML的なアプローチ、宣言型マークアップのような他の分野や自然科学から発想を得ているとしています。

以前取材をさせていただいたChillStackもそうでしたが、AIの欠点を補う技術の開発が、他企業を引き離す要因となる事例を多く見かけるようになりました。単なるAIが解決できる課題は少なくなり、AI利用のフェーズが進んだことを相対的に感じます。筆者はこれをAIクロス戦略と呼んでいます。

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Image Credit:Docugami

DocugamiのCEOのJean Paoli氏はこれまでMicrosotで幹部を務め、業界全体のXML 1.0標準、Microsoft InfoPath、最新のMicrosoft Officeファイル形式の共同作成者として非構造化データと共にキャリアを過ごしてきたベテランです。他の共同創業者もMicrosotでOfficeを率いてきた経験豊富なメンバーが揃っているため、” Windows ”を最大限活用できます。

Mac OSも同様ですが、OSはブラックボックスな部分が多いです。OSを気にし過ぎず開発できると言い換えることもできますが、理解している方が利用する時に有利であることは間違いありません。Windows Officeはドキュメントデータの宝庫です。

Docugamiは有利なポジションを利用して、企業がドキュメントを分析するのを支援するだけでなく、既存のソフトウェアと生産性ツールにプラグインする形を採用しています。これにより企業への導入コストの最小化し、IT部門の介入や支援なしで機能するほど簡単に動作します。

さらにDocugamiが特徴的なのが、企業のビジネスドキュメントの背後にあるビジネス構造と企業戦略を情報管理に組み込んでいる点です。COOはパフォーマンスを加速して、説明責任を監視し、法規制への配慮を強化することが可能になります。「どこに何があり、それぞれどんな価値を持つのか」を実現する初めてのツールになる可能性は十分にあるでしょう。

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Image Credit:Grammarly

シードファイナンスでの1,000万ドルは大きな調達です.。VCによる発信が盛んになるにつれて、シード投資の決め手はアイディアよりも「チーム」である、というのは広く知れ渡りました。やり切れるのか、信頼しても良いのか、株式を持ち会社のオーナーになろうとする人達はここに注目しています。

今回取り上げたDocugamiが資金を集められた理由も同じで、人に対する期待値が数値に現われたものとなりました。その証拠に、多くの投資家がドキュメントテクノロジーの幅広い経験を持っています。Grammarly、元Google Appsの責任者であったGreg Badros氏、CodaのCEOであるShishir Mehrotra氏、CTRL-Labsの共同創設者であるThomas Reardon氏、元Microsoftの戦略およびパートナーシップ担当上級副社長のHank Vigil氏などが名を連ねます。

これまでとこれからの業界を牽引するパートナーを手にして名乗りを上げたDocugami。これまで解決することができなかった非構造化データ問題を企業に還元するエコシステムとして完結させて期待値を超えることができるのか、これからも大注目のスタートアップとなりそうです。

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