11億円調達「TANP」が見出した、ギフトEC市場デジタル化のチャンス

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8月移転予定の倉庫にて/Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏(素材提供:Gracia)

ニュースサマリ:ギフトショップ「TANP」を運営するGraciaは7月29日、第三者割当増資の実施を公表した。投資ラウンドはシリーズCで、増資を引き受けたのは既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、 ユナイテッド、個人投資家として有安伸宏氏(出資額は7000万円)。新規株主としてYJキャピタルが今回のラウンドから新たに参加している。

調達した資金は11億円で、今回の増資で累計の調達額は17億円となった。株価などの詳細は非公開。前回ラウンドは2019年8月で5億円の増資を実施しており、人員体制の強化やロジスティクスの管理システムを改善した結果、1日あたりのギフト発送可能件数を1200件から2300件まで伸ばすことに成功している。今年6月の売上成長率は前年同月比で3倍になっている。

調達した資金で自社契約の倉庫を拡大(記事冒頭の写真)し、基幹業務システムの開発もさらに進めるための人材投資を中心に実施する。

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TANPウェブサイト

話題のポイント:ギフトECのTANP運営が1年で順調に成長してラウンドを次に進めました。前回の取材でも代表の斎藤さんにお聞きしていますが、気になるのはギフト市場におけるTANPのポジショニング、ビジネス戦略です。物理的なモノを発送するというフィジカルな限界点や、ビジネス的なスケールの方向性など、いくつかポイントを斎藤さんにお聞きしました。

まず、彼らがひとつ打ち出した方向性として、ギフト配送システムの将来的なビジネス向けOEMがあります。ギフトにはラッピングなどのオプション対応といった、通常のECサプライチェーンとは異なる点があります。EC市場の伸びしろを考えると事業者がこのオプションを求める可能性は大いにあり、Graciaとしてそこにビジネスチャンスを見出そうとしているというわけです。

これら倉庫管理のテクノロジー市場は「Warehouse Management System(WMS)」と呼ばれ、米調査会社のリサーチによると2020年時点での市場規模は24億ドル相当で、これが2025年には51億ドル規模にまで成長するという試算も発表しています。

WMSは複雑な倉庫や物流ネットワークの効率的な処理、拡張、生成される大量のデータを迅速に処理するテクノロジーを提供します。これを導入することで事業者は在庫ストックや従業員の効率化に関する意思決定がやりやすくなり、さらにTANPはここに自社サービスで培ったギフトラッピングなどのオプションノウハウを追加し、他社にOEM展開することを見込んでいるのです。

では、ポイントとなるギフトオプションはどのような難しさがあるのでしょうか。ここからは斎藤さんの回答を交えて説明したいと思います(太字の質問は全て筆者)。

ーーギフト加工部分の難易度が高い、ということでしたが、主に注目している工程の課題と解決方法についてTANPの取り組みを教えてください

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資料提供:Gracia

ギフト加工とGraciaで呼んでいる作業は、一般的な倉庫業の中では「流通加工」と呼ばれる業務の一つです。ギフト以外の例で行きますと「値札つけ」、「輸入製品のタグの張り替え」などもこれに当てはまります。いわゆる3PL(サードパーティーロジスティクス)などの倉庫委託業社でもこれらのギフトラッピングは一部請け負っているところはありますが、対応している業者が未だ少ない、対応していたとしても少量多品種だと対応不可という課題があります。

ーー具体的にどこが難しい?

ギフト対応を実現するためにはユーザーインターフェイス側と基幹業務システム側を一気通貫して設計をしないといけない、という背景があります。当社ではECパッケージなどを使わずにこれらのシステムをフルスクラッチで開発してきましたので、少量多品種で豊富なギフトラッピングをスケーラブルに実現ができました。

ーー既存のWMSに独自に付け足すというよりは、ギフト対応用にイチから全て作らないとスケールに問題がでる

ただ弊社のシステムもまだ未完成でありますので、よりお客様へのサービス価値を上げながら、商品点数を増大し、スケーラビリティを担保することが今後の最大の課題です。今後は根本的なデータベースの見直し、IoT機器の倉庫への導入を含め解決に向けて地道に取り組んでまいります。

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資料提供:Gracia

ーー話を変えてギフト市場について。前回に引き続いての質問ですが、1年事業を継続してみて掴んだ世界観を教えてください

ギフト市場は全体で10兆円の市場と言われております。当社はその中で「ギフト×EC」というドメインが主戦場です。その中で他の主なプレイヤーとしては総合ECのギフト部門、百貨店のEC部門などが当社の競合にあたります。現状日本のEC化率というものが2019年時点でおよそ7%だと仮定すると、現状でおよそ7000億円の市場、ここから10年以上かけて20%ほどになると仮定するとおよそ2兆円の市場になると考えております。

ーーこの中でのWMSに関連する領域を攻める、というわけですね

この市場において、ことECにおいてはギフト対応が各社まちまちとなっております。実店舗においては店員さんが個別のマニュアルに従って対応できますが、ECでは画一的に、効率的に対応することが求められます。ここの物流におけるDXが進んでいないこと、当社がギフトに特化したロジスティクスを構築できつつあることに鑑みて、将来的に他社ECでのギフト対応の出荷機能を請け負うことも視野に入れております。

ありがとうございました。

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国内電子商取引市場規模(BtoC及びBtoB)・経済産業省

2019年における国内のEC市場は約20兆円で前年比で7.6%の成長、EC化率についても消費者向けで約6.8%、ビジネス向けで約32%とまだまだ伸びる市場です。さらに言えば、感染症拡大の問題で人々のオンライン化は加速することになりました。

TANP自体の成長もそうですが、そこで得たノウハウを元に全てのEC事業者のギフトプラットフォームとして次のスケールを狙うというGraciaの戦略は正しいもののように思えます。