B向けKYCを提供するオーストリア発「kompany」、シリーズBラウンドでグローバル・ブレインなどから600万ユーロ(約7.5億円)を調達

SHARE:
kompany の経営チーム。左から:創業者兼 CEO Russel Perry 氏、CPO Andrew Bunce 氏、COO Johanna Konrad 氏、創業者兼 CTO Peter Bainbridge-Clayton 氏
Image credit: kompany via BusinessWire

<6日午前7時更新> 接続方式に Web スクレイピングは利用していないため該当箇所を削除。

B 向け KYC サービスを提供するオーストリアの RegTech スタートアップ kompany は5日、シリーズ B ラウンドで600万ユーロ(約7.5億円)を調達したと発表した。このラウンドはスイス拠点のマルチファミリーオフィス Fairway Global Investments がリードし、日本のグローバル・ブレイン、European Super Angels Club、kompany 経営陣が参加した。kompany にとっては初の機関投資家からの調達ラウンドとなる。

European Super Angels Club と kompany 経営陣は kompany が昨年8月に実施した前回ラウンド(シリーズ A ラウンドと推定される)にも参加している。今回の調達を受けて kompany の累積調達額は1,400万ユーロ(約17.5億円)に達した。なお、今回の調達にあわせ、グローバル・プレインのパートナーである上前田直樹氏は、kompany の社外取締役に就任する。

(編注:オーストリアの会社法によると、会社には director board と supervisory board が存在する。上前田氏は今回 supervisory board member に就任するが、便宜上、社外取締役と訳した。なお、supervisory board を監査役会と訳す文献も存在する。)

KYC(know your customer)とは、アンチマネーロンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CFT)などの観点から、銀行が新規口座開設を受け付ける際などに義務付けられている本人確認手順の総称だ。kompany が提供するのは、これの企業版であり、kompany 社内ではこれを KYB(know your customer for business)と呼んでいる。

B 向け KYC は主に、企業が銀行口座を開設したり、国内外の取引先へ送金したりするとき、対象企業が正しく登記された法人であるかどうかの確認が求められるというもの。会社登記を確認するには、各国の所轄官庁(日本では法務局)に照会する必要があるが、kompany は世界の200の所轄官庁(現在は主に、EU 加盟27ヵ国やアメリカ50州それぞれの所轄官庁など)と Web スクレイピングや API 連携で接続しており、ユーザは一気通貫で対象となる法人の情報をオンラインで確かめることができる。

kompany 上で「グローバル・ブレイン」を検索してみた。(クリックして拡大)
Image credit: kompany

日本についても最近カバーされ、国税庁法人番号公表サイトとの API 連携により法人情報が照会できるようになっているが、社名のアルファベット読み替えが一部でうまく動作していないようで改善の余地はある。また、法務局の法人登記情報を照会できるようにするのは今後の課題のようだ。

kompany CEO の Russell Perry 氏は、BRIDGE とのインタビューで、現在、B 向け KYC には2つのトレンドがあると語った。

1つは、AML や CFT といったコンプライアンス順守を求められるようになる中で、以前に増して KYC のプロセスに自動化が求められるようになっているということ。より速く、コストや労力をかけずに、対象となる法人の存在を確認する必要があるためだ。

もう一つは、登記簿謄本のハードコピーといったスタティックな(静的な)文書よりも、政府や所轄官庁からリアルタイムで、タイムスタンプの入ったダイナミックな(動的な)認証を求められるようになっている点だ。

法人の存在証明などに提示を求められる登記簿謄本の写しは、所轄官庁の発行日から一定期間内のものに限られることが多かった。紙や PDF ファイルの形式で登記情報をを受け取った金融機関などの機械システムは、OCR で読み込むなり、人の目によるチェックが求められるので、情報整理に時間・労力・コストを強いられる。

また、 オンラインマーケットプレイスやブロックチェーンの普及で B2B 取引が加速化していることで、従来の商習慣で必要とされた以上に新鮮な情報に基づいて法人の存在が確認される必要が増している。世界的に見ても、リアルタイムでダイナミックな情報を求められるようになるのは当然の流れだろう。

Image credit: kompany

kompany では既にヨーロッパや北米地域のほとんどをカバーできるようになったのを受け、今回調達した資金を使って、東南アジア、オセアニア、アフリカなどにも進出したい考え。特に昨年、kompany はシンガポール MAS(金融管理局)が開催したフィンテックアクセラレータに採択されたこともあり、シンガポールにビジネス開発とセールスデスクを設置しており、東南アジアでの市場拡大の足がかりにする。

kompany の顧客に日本の企業がいるかとの質問に対し、Perry 氏は日本の銀行のヨーロッパ支店で使っているところはあるとしながらも、どの銀行が使っているかなどの情報はセンシティブであり開示できないとした。ただ、最近では、グローバル・ブレインも出資している RailsbanksolarisBank といった BaaS(Banking as a Service)も kompany のパートナーとなっており、将来はコンプライアンスプラットフォームなど金融以外の他のプラットフォームも顧客のコアターゲットにしたい、とのことだった。

グローバル・ブレインのデューデリなどを含む今回の調達に至るまでのプロセスは大変プロフェッショナルで組織化されていて、投資家として迎えるまで何度も我々のいるヨーロッパ、彼らのサンフランシスコ、東京オフィスなどと議論を重ねた。

我々が取り組むのは、2025年に必要となる未来のインフラ。世界のペイメントの生産性を高めるために何が必要かという共通の理解に基づいている。(Perry 氏)

kompany は今後、事業成長を加速するため AI を使った株主(実質的支配者)分析ツール「UBO discovery」と分散型台帳技術を使った監査証跡ソリューション「KYC onchain」の開発を強化する。

kompany は2017年と2019年、フィンテック特化投資銀行 FinTech Global らによる「世界の RegTech スタートアップ 100社」に選ばれた。