“Go Near”上場控えるAirbnb、パンデミックで大きく変化した客層と利用方法

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Image Credit : Airbnb

Airbnbが年内を目途とした上場手続きを進めていると報道されています。しかし、思い返せばパンデミック以降AirbnbはまさにCOVID-19の逆風を正面から受ける形となっていました。

例えば世界各国でロックダウンや渡航の規制が見られ始めた3月下旬ごろ、AirbnbはCOVID-19に伴う宿泊予約のキャンセルを一定ポリシーに基づき無料としました。この対応による返金総額は10億ドル超えともいわれており、同社のキャッシュフローに想定外かつ圧倒的な圧迫が加わることになりました。

そうした終わりの見えない膨大な額のキャンセル手続きや実質的な移動制限が続く中でも、Airbnbは社会貢献活動を忘れず取り組んでいました。一例を挙げると、以前から災害時や難民の「一時避難場所」として無償で住宅を提供していたプログラムOpen Homes PlatformをCOVID-19に携わる医療従事者向けに数万件の無償開放を実施したのです。

しかし、主要事業の低迷はAirbnb本体を徐々に苦しめていました。

4月中旬には、デッドファイナンスで10億ドルを新たに調達することに成功するも、プラットフォームの絶対的な利用者数減少には耐えきれず、5月に当時の従業員7500名の約25%にあたる1900名のレイオフ実施へと踏み切る結果となりました。

それと同時に、Airbnbは同社プラットフォームのコンセプトを大幅に切り替える決断を発表。今までのシェアリングエコノミーで培ってきたショートステイをプライオリティーから外し、ロングターム型民泊のコンセプト打ち出しを始めたのです。(28日以上の宿泊を長期滞在と定義)

この背景には、終わりの見えない移動制限による旅人やビジネストラベラーの絶対数の減少があったことは明白です。そのため、リモートワーカーなどの長期利用を前提としたターゲティングへの変更は当然の流れだと思えます。

このコンセプト変更は徐々に効果が見え始め、夏休みが差し掛かった7月頃には4か月ぶりに100万以上の宿泊予約を記録するなど、ワーケーションスペースや長期休暇での需要が形となってきました。その後8月には、Airbnb創業者でCEOのBrian Chesky氏がTwitterにて同社が年内上場予定で動いていることを公表。こうした動きは新しい時代における、新しいAirbnbのコンセプトが形作られてきた証でもあるのでしょう。

同社が今月に入り改めて公開したデータによれば、過去3か月におけるAirbnb利用者の内54%がロングタームでの利用になっているそうです。そうした新時代におけるAirbnbの利用者層の特徴は以下の通りです。

  • 80%のゲストが1人または2人での長期滞在を利用。20%がそれ以上の人数での利用
  • 46%のゲストが過去に3回以上訪れたことのある場所、以前住んでいた場所、または自宅の近場での利用
  • 54%のゲストが少なくとも1人の知人がいる場所を旅先に選んでおり、友人(26%)や家族(24%)のケースも見られた
  • 60%のゲストが長期滞在をリモートワーク、またはリモート学習の場として利用していた。その内、65%がCOVID-19をきっかけにAirbnbをワーキングスペースとして利用し始めたと解答

また、パンデミック以降に見られたゲストのAirbnb利用におけるパターンを以下4つに分類しています。

  1. 国立公園などの自然が近くにある住居を好む、レジャー旅行者
  2. WiFiなどの環境が整った住居を好む、リモートワーカー
  3. 家族向けに設計された住居を好む、大家族またはグループ
  4. 近隣の往来しやすい住居を好む、高齢

今までのAirbnbは「~という街を観光するからAirbnbを利用する」という、あくまでホテルに代わる宿泊地としてのAirbnbが選ばれていました。しかし現在はむしろ、「~という街のAirbnbに泊まりたいから、~という街に行ってみよう」と逆のフロー化しているケースが増えてきているように感じます。

もちろん、上記に挙げたように明確な目的(友人・家族に会う、リモートワークなど)が伴っていることは前提にありますが、そもそも旅に出かけられないことを考えるとこの変化は当然だといえます。既に11月に入り、あと数週間もすれば上場を予定しているAirbnb。2021年に向けて、新しい旅の形を中長期的視点で示してくれることを期待しています。

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