課題は首都圏での認知、Backlogの福岡・ヌーラボがTVCM開始のワケ

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ニュースサマリ:「Backlog (バックログ)」などのビジネス向けSaaSを展開するヌーラボは2月、テレビCMの展開を伝えている。同社がテレビCMを使ったキャンペーンを展開するのは創業17年目で初めて。Backlogを中心に競争が激しくなるプロジェクト管理ツールでの認知度獲得を目指す。放送期間は2月8日からで、関東、関西、中京、福岡で放映される。キャストにはドラマや映画で活躍する志田彩良さんを起用した。

Backlogの開始は2005年。社内の開発プロジェクトを管理する目的で作られたチケットシステムを外部でも利用できるようにしたのがはじまり。その後、タスク管理やWiki、カンバンなどの機能を追加して全社的なプロジェクト管理ツールに進化した。利用ユーザー数は170万人。スタータープランを除いて料金体系は導入単位となっており、ユーザー数が無制限なのが特徴。

話題のポイント:SaaS系スタートアップのテレビCM利用は随分と一般的になってきました。代表の橋本正徳さんとお話しましたが、プロジェクト管理ツールは海外勢含めて数も多く、機能的な差別化がどんどん難しくなっているそうです。競合含めて相当に広告費を積み上げているようで、認知の取り合いになっているのが実情だとか。

ちなみに「リモートワークに必要なクラウドサービス」という意思決定の現場でどのようなサービスと競合するのかお聞きすると、現時点ではやはりZoomやSlackといったコミュニケーション系のツールが第一想起に出てくることが多いというお話でした。多くの企業にとってはまだまだ対面がオンライン化した程度で、その先のプロジェクト管理・業務効率化についてはややタイムラグがあるようですね。

さておきヌーラボは福岡を拠点にこれまで頑張ってきた企業なのですが、橋本さん曰くどうしても関東での認知に苦戦しているようです。これは結構驚きなのですが、Backlogは知っていても、ヌーラボは知らないという層がいるという説明を聞いて確かに、と。Backlogは開発者を中心にチケットシステムとして広がった経緯があるので、エンジニアなどのコミュニティについては認知がある程度取れている印象があります。

一方、それを開発している企業という点では、ヌーラボはそもそも創業から13年目まで外部資本(特に私たちがよく言う『スタートアップ資本』)を積極的に入れることのないファミリー企業の形を長らく取ってきました。2017年にEast Venturesから初めての資金調達を実施し、昨年3月にNOW、XTech Ventures、新生企業投資から約5億円を調達していますが、逆に言えばこういった増資の話題は13年間皆無だったわけです。

スタートアップエコシステムとは面白いもので、同じようにテックサービスを作っていても、この種類株レースに参加していない企業というのは自然と注目から外れていきます。もちろん、創業者株のみで上場する「さわやかケース」もありますが稀です。

今回のテレビCMは初めてということもあり、リサーチ的な側面もあるという話でしたが、この後、ヌーラボがどのように認知を取っていくのか、これは同様にプライベート企業から上場を目指すパターンを考えている企業経営者にとっては参考になるかもしれません。

※本稿はClubhouseでの取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています

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