佐川急便、初となるアクセラレータプログラム「HIKYAKU LABO」デモデイを開催——スタートアップ5社との協業内容を披露

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「HIKYAKU LABO」第1期の成果を説明する、佐川急便 経営企画部 猪子誠一氏
Image credit: Masaru Ikeda

SG ホールディングス(東証:9143)傘下の佐川急便は9日、同社初となるスタートアップアクセラレータ「HIKYAKU LABO」の第1期を終了し、参加したスタートアップ5チームを交えたデモデイを開催した。HIKYAKU LABO は、同社の中期経営計画(2019年度〜2021年度)の「Second Stage 2021」の中でも取り上げられたスタートアップとのアライアンスを目指す取り組みとして、同社が昨年スタートさせたものだ。HIKYAKU LABO の第1期は、2020年9月から2021年3月までの半年間にわたり実施された。

スタートアップからは100社程度の応募があり、「新しい物流サービスの創出」「社会インフラとしての物流機能の安定供給」「新たな生活スタイルを物流の力でもっと安心・便利に」の3つをテーマに5社が選出。また特徴的なのは、佐川急便社員の中から、スタートアップと伴走する専任担当者を募ったことだ。セールスドライバ、現場の係長、運行管理の担当者など50名の応募から、スタートアップ1社に対して佐川急便社員1名ずつがアサインされた。

デモデイの冒頭挨拶する佐川急便 代表取締役の本村正秀氏
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執行役員の藤野博氏によれば、佐川急便側の伴走社員を決める上で、本人の経験は重視しなかったという。彼らは全国のさまざまな部署から集められため、必要に応じて人事異動したり、プログラム活動の中心となる東京に単身赴任したりして、半年間にわたりスタートアップと日夜作業を共にすることとなった。

伴走する担当者を選ぶ上では、折れない心を持っているかどうか、最後まで貫くコミットメントを持てるかどうかを重視した。自分の勉強のためにやりたい、という人は断って、会社のために何か残そうという人たちにやってもらった。

彼らにとって、このプログラムで相手にするのは経営者。ロジの現場とは勝手が違い、言葉も違って苦労したと思うが、なんとか最後までやり遂げてくれた。(藤野氏)

デモデイでは、「物流事業者として、そのテーマに取り組むべきか」「インパクト、意義の大きさがあるか」「今後の広がりや成長性があるか」を評価要素として、佐川急便代表取締役の本村正秀氏はじめ同社の役員複数のほか、DNX Ventures マネージングディレクターの中垣徹二郎氏、月刊ロジスティクス・ビジネス編集発行人の大矢昌浩氏の2人が外部審査員を務めた。なお、このデモデイの内容は広く一般に公開されたものではないが、オーディエンス賞はデモデイを見た佐川急便社員による評価と見られる。

【最優秀賞】LOZI

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副賞:トロフィーと賞金100万円

LOZI は、メーカー、物流会社、流通会社、消費者など、事業者を横断して使えるサプライチェーン連携バーコード「スマートバーコード」を開発している。専用 QR コードを使って、スマートフォンで荷物をトラッキングでき、異なる事業者どうしで共通の仕組みを利用した共同配送ができる。佐川急便では、新型コロナウイルスのワクチン配送に活用することを視野に入れているという。

【優秀賞】ビットキー

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副賞:トロフィーと賞金30万円

ビットキーは、暗号化技術などを用いたキーテクノロジーをはじめ、プラットフォームビジネスやスマートロックの開発・運用している。同社が提案したのは、Amazon が2017年に発表した「Amazon Key」の日本版だ。顔認証で佐川急便のドライバーがマンション玄関のオートロックを開錠、専用アプリで受領したデジタルキーで住居のドアを開錠。不在時に玄関に品物を届けることで不在再配達を削減を目指す。

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【HIKYAKU LABO賞】スマートショッピング

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副賞:トロフィーと賞金20万円

スマートショッピングは、自動発注・在庫補充を可能にする IoT デバイス「スマートマット」を開発している。スマートマットを用いた在庫管理により、納品先の在庫管理だけでなく、物流全体のコンサルティングサービス提供を目指す。ある商品の在庫が減ったら自動発注することで、店舗やサプライヤーの在庫と連動した物流設計を可能にする。

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【オーディエンス賞】Sigfoss

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Sigfoss は、物体検知システムと画像処理を併せたコンテンツ管理システム「Sigfoss AI-OCR」を開発・提供している。同社は画像認識 AI を使って物流業務を自動化し、人手不足の解消を支援する仕組みを提案した。荷物のサイズなどをカメラ画像により検知し、荷物を預かるプロセスをスピードアップしたり自動化したりすることで作業負担削減を目指す。

【審査員特別賞】LexxPluss

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LexxPluss は、物流倉庫や製造工場向けの自動搬送ロボットを開発している。AGV(軌道走行型)と AMR(自動走行型)のハイブリッドロボットにより、物流業務を自動化を支援し人手不足解消を目指す。佐川急便の本村社長の話によれば、佐川グローバルロジスティクスの次世代型大型物流施設「X フロンティア」において、さらなる省人化の切り札として期待されているようだ。

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今回の HIKYAKU LABO の結果を受け、SG ホールディングスでは、スタートアップとの協業内容を実業に取り込めるかどうかを判断するには時期尚早としつつも、出資などを含む事業提携や継続した協業の可能性については考えられるとした。同社では今年5月にも、2期目となるプログラムへのスタートアップ参加の募集を始める計画だ。

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