ミレニアルをターゲットにオルタナティブ投資プラットフォームが活況——韓国スタートアップシーン週間振り返り(6月21日~6月25日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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6月21日~6月25日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは20件で、資金総額は6,874億ウォン(約672億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

調達額1,000億ウォン(約97億円)以上

Toss(토스)」を運営する Venture Republica が、シリーズ G ラウンドで4,600億ウォン(約450億円)を調達した(編注:別記事ではシリーズ H とされる)。バンキング、証券個人金融サービスをアプリ一つで提供する「統合モバイル金融プラットフォーム」を目指すスーパーアプリ戦略を推進。調達額は Toss プラットフォームの成長と会社の成長に利用する。

調達額300億ウォン(約29.4億円)以上

  • Megazone Cloud(메가존클라우드)が500億ウォン(約49億円)を調達し、1,900億ウォン(約186億円)を集めたシリーズ B ラウンドをクローズ。グローバルビジネス支援エコシステムの構築と韓国スタートアップの海外進出推進を計画。 2023年に IPO の目標。
  • AI ベースの技術を開発する Voyager X(보이저엑스)が300億ウォン(約29.3億円)を調達。 AI ベースのビデオ編集「VREW」、モバイルスキャナ「vFlat」を開発。 AI 分野最高の開発チームを保有していることが強み。調達した資金を使って AI 人材を採用、グローバル競争力のある AI スタートアップに成長することが目標。
  • エコ船舶製造企業 Vinssen(빈센)が145億ウォン(約14.2億円)を調達。核心技術である環境配慮エンジンで市場をリードする計画。政府、民間企業との提携を通じて、エコ船舶商用化に拍車。
  • ブランド品プラットフォーム Reebonz Korea(리본즈코리아)が105億ウォン(約10.3億円)を調達。ブランド品の販売とレンタル、高級品短期サブスクサービス、再販サービスなどを提供する。調達した資金を使って、人材補充、高級品の追加確保、プロモーション活動を予定。

その他の調達

  • ショッピングモールなど EC の構築プラットフォーム「Sixshop(식스샵)」が80億ウォン(約7.8億円)を調達。調達した資金で開発者の採用を通じた製品開発チームを拡張、e コマース OS の構築の目標とする。
  • グローバル EC プラットフォーム Gomi Corporation(고미코퍼레이션)が75億ウォン(約7.3億円)を調達。国内メディアコマース企業のベトナム・タイへの進出をサポート。調達した資金を使って、ベトナムにコールドチェーンを構築予定。
  • FitPet(핏펫)が70億ウォン(約6.8億円)を調達し、230億ウォン(約22.5億円)を集めたシリーズ B ラウンドをクローズ。ペット分野の資金調達として最大規模。ペット検診キット、病院検索、ペット保険など、さまざまなサービスを提供する。グローバル進出で、診断キット9カ国に輸出する。
  • エコプラスチックを開発する Soltech(솔테크)が40億ウォン(約3.9億円)を調達。自然分解プラスチック「PBAT」「PBS」の開発。サムスン物産、BGF エコバイオなどへの量産供給協議中。コンビニの油包装材に活用。

トレンド分析

副業が日常のミレニアル相手に、投資プラットフォームが活況

MZ 世代(1980年〜1994年の間に生まれた Millennial(25〜39歳)と、1995​年以降に生まれた Z 世代(24歳以下)を合わせた造語)のための投資プラットフォームが多様化しつつある。株式、仮想通貨だけでなく、他の資産にも投資することができるオルタナティブ資産投資プラットフォームが登場し選択肢が増えているのだ。投資をゲームのように楽しむミレニアル世代は、スタートアップが出す新しい投資サービスを恐れることなく試してみるという特徴を持っている。

数年前には、モバイルアクセスを強みに少額の投資が可能な P2P プラットフォームとロボアドバイザー投資プラットフォームが大きな関心を受けたが、最近では、高級品やスニーカー限定版を転売できるモバイル転売プラットフォーム、不動産や美術品などの資産に投資できるプラットフォームも MZ 世代の投資先として浮上してきている。

このような流れは、海外で先に目撃された。スニーカー取引プラットフォーム「Goat」は最近新たな資金調達を実施し、時価総額が4兆ウォンを超えるまでに成長の可能性を高く認められた。不動産や海運といったオルタナティブ資産に投資できるプラットフォーム「Yieldstreet」、スポーツカードなどを売買できる「ALT」、高価な品物を分割購入できる「Rally」など、希少性を持った資産の一部を購入・販売できるプラットフォームも資金調達している。また、「NBA Top Shot」など唯一無二の芸術作品などを購入・販売できる NFT プラットフォームも脚光を浴びている。

韓国国内でもこのような投資プラットフォームがスタートアップを中心に一つ二つ登場している。いじれも、簡便性を強調しモバイルから小口分割投資で資産を増やせるという特徴がある。スニーカー再販プラットフォームでは、Naver からスピンオフした「Kream(크림)」、「Musinsa(무신사)」​が運営するソールドアウト「Soldout(솔드아웃)」が代表的だ。不動産投資プラットフォーム「Kasa(카사)」は、株式のように建物の一部を少額購入できるプラットフォームとして、昨年初めのカンナムのビル公募を終えたが、この公募には20〜30代の投資家が大勢集まったとされる。

Music Cow(뮤직카우)」は音源著作権の一部を購入できるプラットフォームだが、会員の70%はミレニアル世代だ。最近、チャート逆走アイドルとして人気を集める Brave Girls(브레이브걸스)が歌う「Rollin’」の音源収益率が1000%を超え話題になった。 NFT を活用した芸術作品の投資プラットフォーム「Tessa(테사)」、高価な資産の部分販売プラットフォーム「Buysell Standards(바이셀스탠다드)」なども最近登場した投資プラットフォームだ。 MZ 世代の投資トレンドを読んだ、既存の大企業と銀行も新規サービスやマーケティングにこれらを活用している。新韓銀行は美術品の分割販売を進め、Eマート24 は美術品持分を景品として掲げた。

ミレニアル世代は、就職だけでは成功しにくいという不安感が、他のどの世代より大きいと言われる。彼らにとって副業は一般的で、お金を稼ぐことに尽くす「資本主義の子供(자본주의 키즈)」という言葉まで生まれた。ここまで見てきたように、彼らは資産を増やすことに積極的な性向を見せており、新たなオルタナティブ投資プラットフォームのに対する関心は今後も続くものと見られる。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

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