ヒット作予測AI「StoryAI」、データ分析のジールに事業譲渡——開発者の川合氏は、ジールのオープンイノベーション責任者に

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「StoryAI」
Image credit: Xrosriver

コンテキスト解析技術を開発するクロスリバと、データ分析 SaaS などを提供するジールは14日、クロスリバが開発・運営してきたストーリー・シナリオ分析 SaaS「StoryAI」をジールに事業譲渡することで合意したことを明らかにした。7月1日以降、StoryAI はジールのサービスとして提供される見込みだ。具体的な譲渡・譲受条件については明らかにされていない。

買収ではなく事業譲渡であるため、クロスリバはそのまま会社法人として存続するが、クロスリバ代表取締役の川合雅寛氏は、ジールが社内に設置したオープンイノベーション組織「IPHub(Incubation Product Hub)」のインキュベイトプロダクツマネージャー(PdM)に就任する見込み。StoryAI の運営支援に加え、イノベーション創出やスタートアップとの協業支援にあたる。

ジールは、傘下にシステムインテグレータなど4つの事業会社を持つアバントグループ(東証:3836)の一翼を担うデータ分析ファームだ。これまでに、クラウド型データ分析基盤「ZEUSCloud」、DX 人材育成支援 e ラーニングサービス「ZEAL DX-Learning Room」など、3つのサービスや各種ソリューションを立ち上げてきた。既存事業と StoryAI の間の明確なシナジーは不明だが、事実上、川合氏を acqui-hire できたことで、オープンイノベーションを加速したい意図があると見られる。

クロスリバは、StoryAI を2020年から提供している。StoryAI では、映画・ドラマ・ゲームなど、シナリオ形式のストーリーを自然言語解析しストーリーに内在する感情を数値化できる。最近では、講談社の会員制読書クラブ「Mephisto Readers Club」に StoryAI を OEM 提供を始めた。この施策によ理、講談社は会員に応募用原稿の執筆を支援してもらうことを意図しているそうだ。

左から:クロスリバ代表取締役でジール IPHub の PdM に就任する川合雅寛氏、ジール取締役 CSO の中村国宏氏
Imaeg credit: Zeal

川合氏は事業譲渡先にジールを選んだ理由として、次のように述べた。

講談社をはじめ、既存顧客へのサービスを継続的に提供することを第一に考え、顧客・譲渡先の双方から理解が得られことが大きかった。

また、ジールでこの取引を担当した取締役 CSO の中村国宏氏は、StoryAI の譲受や川合氏の入社について、次のように述べた。

システムインテグレータがやってきた〝人月商売〟は今後、だんだんと減っていくだろう。お客様からも AI ビジネス などの引き合いが増えきている中で、ジールも今後、革新的なサービスを出していかないと差別化できないが、社内のリソースだけでそれを実現するのは難しい。

アバントグループのマテアリティを実現する上で、AI に力を入れていくことは当然の流れで、川合さんのような方に入ってもらいたいと考えていたのが、今回実現した形だ。川合さんには今後、スタートアップとジールの連携といった点でも活躍を期待している。近い将来、そうして生まれる新規事業の売上を全体の50%くらいまで持っていければ、いいと思っている。

クロスリバは2017年、共創型アクセラレータ「Supernova」第2期デモデイで、世の中に受け入れられやすいストーリーを作れるようにしたクリエイティブ・プラットフォーム「ficta」を披露。2020年春に PR TIMES の「April Dream」で StoryAI の構想を明らかにしていた。StoryAI は映画監督、⼩説家、国内⼤⼿企業などで利⽤が進んでおり、新規サインアップの約75%が国外ユーザだ。今後は、ジェネレーティブ AI の波を追い風に、国際的なサービスとしての成長にも期待するとしている。

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