国内注目はこの4社、「B2B SaaS成功の秘訣はプロダクトへのこだわり」にありーーVCが語る注目トレンドと企業/DNX Ventures マネージングディレクター倉林陽氏

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本稿はIBM BlueHubによる寄稿。スタートアップとの共創プログラム「IBM BlueHub」では2014年の第1期スタートから現在まで、参加した多くのスタートアップが大手企業との事業提携やVCからの資金調達を実現している。第5期のDemo Dayは3月18日に開催される

近年、世界的にテクノロジー系スタートアップの取り組みが拡大している分野が「SaaS」をはじめとするビジネス分野のテクノロジーです。既存産業分野のアナログな仕組みや汎用ツールでの業務フローなどを効率化して成長する事例が増えています。スマートキャンプが昨年公開したSaaSビジネスの調査によれば市場の平均成長率は国内で15%、海外では20%となっており、2020年には890億ドル規模に拡大するという試算結果も出ています。

そこでIBM BlueHubでは3月18日に開催する「第5期 Demo Day」を前に、プログラムに参加してくれたメンターや卒業生などを中心に、B2B領域におけるSaaSなどのトレンドについてそれぞれの見解を語っていただきました。前半は主にベンチャーキャピタリストによる市場トレンド、後半はスタートアップによる技術トレンドをリレー形式でお送りします。

連載トップバッターとなるのはDNX Ventures(旧・ドレイパーネクサス)でマネージングディレクターを務める倉林陽氏です。(太字の質問は全て筆者。回答は倉林氏)

倉林さんは国内SaaS市場、特にビジネス向けサービスを提供するスタートアップ支援を多く手がけられています。特に注目しているカテゴリやトレンドなどはありますか

倉林:まず、基本的な分類視点として「Enterprise SaaS」と「Industry Cloud」で市場を眺める必要があります。前者はビジネス向けに展開する水平的なサービストレンド視点、後者は業界バーティカルに展開する垂直型の視点です。

会計や人事、アプリグロースのような業界を横切って展開できる事例と、特定業界に特化した業務フロー改善は大きく分けて考えた方が整理しやすそうです

倉林:その視点でまず、Enterprise SaaSのトレンドですが、これまでも注力してきた「セールス&マーケティング」、HR領域を中心にAIを絡めた自動化や、インサイトの抽出が可能となるテクノロジーをもった企業に注目しています。

最近ではさらに切り出した「セールス・テック」の話題も国内で耳にするようになりました

倉林:国内と海外では少しだけ様子が違っていて、国内では人材(HR領域)やフィンテック分野のスタートアップが近年目立っていたかもしれませんが、米国ではやはりセールス&マーケティングが中心なんですよ。

注目の企業は

倉林:グローバルではやはり「salesforce.com」と「Marketo」が外資系大手として輝いていますね。国内でそれらに対抗するのがフロムスクラッチ(国産マーケティング・オートメーション最大手)やマツリカ(UI/UXに優れたSFA)です。

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確かにSaaSがこれだけ伸びてますから、そもそものインフラ自体の運用効率化は影響範囲が大きそうです。業界バーティカルで注目されているトレンドはどこでしょうか

倉林:外資の参入があまりないできないところがIndustry Cloudのよいところです。ここでは物流や教育、医療、製造業等においてIoTBig Dataも絡めたソリューションに可能性を感じていますね。投資先ですが、急成長している企業にオクト(建設分野のプロジェクト管理「ANDPAD」提供)やカケハシ(医療分野の電子薬歴「Musubi」提供)に続く、先端 SaaS Cloud アプリケーションで伝統的業界の革新に挑む企業に注目しています。

確かにオンプレミスのソリューションや一部SaaSの競合も存在していますが、オクトやカケハシは調達力、チームのクオリティや技術力で他を圧倒していると思います。

最後に、この分野に挑戦するスタートアップはまだまだ数が増えそうです。倉林さんからのアドバイスは

倉林:B2B SaaS/Cloudのベンチャーの成功に欠かせないのはカスタマー・サクセスを実現するプロダクトへの「こだわり」です。顧客のフィードバックを元に、開発項目の優先順位を考えながら常にプロダクトを磨き続けるリソースを確保し、バージョンアップしてカスタマー・サクセスを実現する。顧客に向き合いながらこのループを回し続ける体制構築が重要だと思います。

ありがとうございました。次の方にバトンを回します

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