回り道せず最初から一番大きなところへーーDAO型小売「DeStore」大東樹生氏【Z世代の視点】

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「Z世代に特化したイノベーションハブ」を運営する Culture Z Park(CZP)は、Z世代のイノベーターにおける事業の収益性や実現性を高め、企業との共創を見据えた1→10のプログラム「Culture Z Innovation」を開催中。7月9日には最終発表会を開催します。

概ね1990年代から2010年代に誕生したデジタルネイティブ世代の総称、それがZ世代(Generation Z)です。生まれた時からデジタル化が進んだ世界で育った彼・彼女たちは今、ちょうど20代から30代に差し掛かろうという時期にあります。

次の社会を作るこの世代が何を考え、どのようなことを起こそうとしているのか。本稿ではZ世代のイノベーターを集めるCulture Z Parkと協力し、何人かのZ世代起業家の話を伺うことにしました。4回目となる今回はサンフランシスコを拠点に DAO運営型の小売店舗を展開するWeb3スタートアップ、DeStore CEOの大東樹生さんです(文中の質問はBRIDGE編集部。回答は大東さん。敬称は略させていただいています)。

自己紹介をお願いします

大東:大東樹生(だいとう・いつき)と申します。DAO 運営型小売店舗「DeStore」の共同創業者兼 CEO です。DeStore では、オーナー NFT 保持者がアプリ上で実店舗を共同所有・運営することができます。

2000年生まれで現在21歳ですが、15歳の頃、日本初のファッション専門YouTuberとして活動を開始し、Fashionsnap.comなどの業界誌に取り上げれられました。高校卒業後はグローバルでスタートアップをするため渡米。2022年初めにDeStoreを立ち上げ、Y Combinator 卒業生限定の投資DAO「Orange DAO」などから出資を受けました。

どのようなサービスを手がけているか教えていただけますか

サンフランシスコのヘイズ・バレーにある、DeStoreで DAOとしてコミュニティ運営される店舗(写真は営業が始まる前のもの)/Image credit: DeStore

大東:DeStore は現在1号店がサンフランシスコの一等地に賃貸済みで、公式ローンチに向けて開発中です。小売のカギはコミュニティですが、コミュニティを作るには時間がかかるため、多くの小売店舗はブレークイーブンに達するまでに長い時間を要します。DeStore は次の小売をつくることをビジョンにしております。そのために、Web3を使って従来よりも圧倒的にコミュニティドリブンな小売の在り方を生み出そうとしています。

サービスを始めようと思ったきっかけは

大東:高校生の頃、自分の人生を考えたときに、漠然とスタートアップに興味が湧きました。当時何も知らなかったのですが、Hive Shibuyaによく遊びに行かせてもらい、それをきっかけにいろいろなスタートアップ界隈の方とお会いするようになり、のめり込んでいきました。

高校3年生の時の1年間は、父の仕事の関係でイギリスで過ごしました。卒業間近になり、起業について改めて考えた時、人生でいつかグローバルを目指すのであれば初めから目指す方が合理的だと考えました。

世界で一番グローバルで戦うのに適した場所を調べ、今もとてもお世話になっている小林清剛(Kiyo)さんや内藤聡さんの記事に辿り着きました。中でも、小林清剛さんの「世界でやりたいのであれば一刻も早く来て、ここで起業家として経験を積むことが大事」という言葉を見てサンフランシスコへの移住を決め、起業しました。

事業を手掛ける上で大切にしているものはなんでしょうか

Knot 創業者の小林清剛氏(右)やAnyplace 創業者の内藤聡氏(左)に激励を受ける大東樹生氏(中央)。

大東:お世話になった方々への義を通すことを大切にしており、事業を手がけるのであれば、大きなものをグローバルでつくり、投資家、先輩、友人、家族へ恩を報いることが通すべき義と思っています。具体的には「マクロトレンド」と「ファウンダーマーケットフィット」の2つの指針を置いています。「マクロトレンド」に関しては、2000年代はGAFA。2010年代はUberやAirbnb など、グローバルで大きな成果が結果的に出た企業は当時のトレンドに沿っていることが多いと思っています。

「ファウンダマーケットフィット」に関して、究極的には、もし仮に自分がトイレ掃除をし続けることでユニコーンになるのであれば、それがベストです。しかし、現実的には世の中には自分と同じような起業家がたくさんいるはずなので、自分が創業することで勝率が上がるのかを見極めるのが大事です。自分の場合、小売・コマースの分野であれば説得力のあるストーリーを語れますし、それがヒト・モノ・カネを集める根幹になると思っています。

Z世代と分類されることをどう考えていますか

大東:Z世代というと、学生時代からスマホに触れてきたデジタルネイティブな世代という印象があります。単に若者ということで、元気はつらつな印象を持たれがちかと思いますが、個人的には実際のところ幼い頃からの情報過多で、むしろ落ち着いている方が多いようにも思います。また、インターネットを通じて、テクノロジーを介した多様なお金の稼ぎ方が身近にあったことは起業家としての自分には得であったように思います。

一方で、スタートアップにおけるエクイティ調達や、SNS上でのインフルエンサーとしてのお金稼ぎなど、良くも悪くも飛び道具のようなものが我々Z世代の商売感にはデフォルトで存在していたと思います。よって、この商売感覚は上の世代の方々と大きく違う点かと思っていて、同時に上の世代の方々がより持たれているであろう従来の商売の本質に向き合う姿勢を私も忘れないようにすることは大事と個人的に感じています。

どんな子供でしたか?また、どんなものに熱中していましたか?

大東:目立ちたがりな子供でした。全校集会やコンテスト、文化祭、合唱祭など、何か人前で目立てるものがあればすぐに手をあげ、前に出たがっていました。特に、通常とは少し趣向の違うスピーチをしたり、大勢の人に驚いてもらえる瞬間が好きでした。

目立ちたがりと思春期が高じて学生時代にはYouTubeを始めました。私のYouTubeを通じて、「ファッションが好きになったので、今では服飾専門学校に合格し、デザイナーを目指しています」というようなコメントをいただくようになりました。

反面、単なるフォロワーなどの数字や知名度には特に満足を覚えられませんでした。単に目立つことよりも、より驚きや喜びを生み出し世界に遺していくことが大事なのでは、と学生時代に感じたのが今の起業家としての自分に強く影響していると思います。

他のZ世代の方に向けてメッセージをお願いします

大東:我々Z世代は、まだ人生で積み上げたものが少ないので、新しく何かに挑戦するということの心理的ハードルが低いです。Kiyoさんもよくおっしゃっているのですが、事を成していって、いくばくかの地位や名声を手に入れると、積み上げたものを失うことに対する恐怖感ゆえに、大きな挑戦をすることが心理的に難しくなっていくと思っています。

何か成したいことがあれば、回り道をせず最初から一番大きなところへ向かっていくことができるのが我々Z世代の強みかと思いますし、人生での後悔も少ないと思います。私は、そんな世界で大きな挑戦をされる方が増えると嬉しいなと思っています。そして、そんな方々へ、私自身が結果を出すことで、間接的にでもお力になれることが私がお世話になってきたKiyoさんや聡さんをはじめとする先輩方への義でもあるかと思っています。

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