ビズリーチがYJC等から37.3億円を調達、南氏が「とことんやると決めた」クラウド型事業を本格化へ

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2016.3.29

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国内人材系の優等生が大きな勝負に打って出る。

一部報道にあった通り、ダイレクト・リクルーティングや求人検索などを手掛けるビズリーチは3月29日、第三者割当増資等による資金調達の実施を発表する。

調達した資金は総額で約37.3億円で、引受先となるのは16億円を出資したYJキャピタルをはじめ、Salesforce Ventures、三井住友トラスト・インベストメント、電通デジタル・ホールディングス、グリー、楽天、リンクアンドモチベーション、EFU Investment Limited、East Ventures、IMJ Investment Partnersの10社。

調達した資金は2015年にリリースした求人検索「スタンバイ」をはじめとするオンライン求人・採用管理関連の事業の拡大に使われる。また、同社はこの発表と同時に、5月からクラウド型の採用管理システム「HRMOS(ハーモス)」の提供を予定していることも公表する。

ビズリーチの創業は2009年4月。代表取締役の南壮一郎氏によれば、これまで同社は創業期にジャフコから調達した2億円以外、外部資金を入れることはなく、ダイレクト・リクルーティング事業等の収益によって運営をまかなってきたという。

現在の従業員数は3月時点で571名と、その規模は海外スタートアップと比較しても遜色はない。

資本政策面の状況を考えれば、このままプライベートカンパニーとして事業継続することもできた同社がなぜ、このタイミングで大きく打って出たのか。そこにはビズリーチ、careertrek(キャリアトレック)に次ぐ「第三の事業」の可能性に魅せられた南氏の姿があった。

求人検索「スタンバイ」から始まったクラウド型事業の可能性

ビズリーチが提供するスタンバイ・カンパニー

さて、彼らの今回の大型調達を理解する上で、ATS(アプリカント・トラッキング・システム)について少し解説しておいた方がいいだろう。

その名の通り、採用管理システムで、レジュメの登録・管理から福利厚生、給与管理などのバックオフィス系、採用後のパフォーマンスデータの管理など、採用から就労時、離職などの状況を総合的に判断する仕組みとして米国を中心に利用が広がっているものになる。以前ビズリーチの展開する「スタンバイ・カンパニー」を取材した際に少し書いたので詳しく知りたい方は参照されたい。

ビズリーチ「求人検索スタンバイ」が完全無料の理由は「ATS」にありーー採用管理「スタンバイ・カンパニー」を一新

ビズリーチの展開は少し複雑で、求人検索のスタンバイと採用管理のスタンバイ・カンパニーがある上に、また新たなクラウド型採用管理サービス「HRMOS」を立ち上げようとしているところだ。

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スタンバイ事業本部長、取締役の竹内真氏

以前、ビズリーチ取締役でスタンバイ事業を牽引する竹内真氏に話を聞いた際は、より深い、例えば採用者のデータを採用後までトラッキングしてパフォーマンスを計測するような複雑なサービスはしばらく手がけないということだった。

昨年10月時点での話なのでそこから動いたのだろう。なかなか痺れる話だ。

因みに南氏の話では、現在、ビズリーチはカンパニー制を導入しており、竹内氏はインキュベーション・カンパニーの統括としてHRMOSをはじめとする新規事業をこれまで以上に手掛けることになるという。

調達が示すメッセージは「とことんやろうよ」

2015年5月に発表された求人検索スタンバイ

「これまでずっと黒字で最終利益が出ていましたから(調達の)必要がありませんでした。また、ルクサ(共同購入サービス)の売却益もあったりしましたので(新規事業への投資を含めて)自分たちの収益でやってこれたんです」(南氏)。

冒頭の指摘の通り、同社はプライベートカンパニーのまま成長が可能な状況だった。それを変えたのが竹内氏らが手掛けるスタンバイの可能性なのだという。

「スタンバイがきっかけなんです。新しい時代の求人サービスになるんじゃないかなとワクワクしてるんです。これまでのビズリーチ、キャリアトレックに加えた三つ目の事業の柱を成功に導くためには、外部からの資本を受け入れて勝負したいというのがありました。

今年の4月で(創業して)7年目になります。

私は元々、人材業界の仕事をやっていたわけではありません。原点に戻って(この採用の事業を)客観的にみると、採用してお金を払って終わるのがもちろん大事なのですが、やはり非効率が多い。本来は採用した方が会社の中でどれぐらいのパフォーマンスを出しているのか、どれだけ貢献しているのか、そういうデータや結果が大事だと思うのです」(南氏)。

ヒトモノカネというリソースの調達は常に結果とセットになる。ただ、形式的に資産への換算結果が分かりやすいカネやモノ(資材)と違い、「ヒト」は確かにビルになるわけでも高値で売り買いできるわけでもない。(スポーツ選手とかはもしかしたら少し似てるのかもしれないが)

ここを解決できないのかーーダイレクトリクルーティングはマーケティングに近く、これをテクノロジーでサポートするようなツールがあれば、定量的に人事採用を評価・判断できる。採用後のデータを活用することで人材の獲得効率をあげるのが、米国中心に利用が進む主なATSの考え方になる。

確かに米国と日本では市場規模の差による人材流動性の違いや、利用する側のリテラシーに差によって利用状況の様子は違うと思う。国内でこの分野ではセールスフォースから支援を受けるCYDASなどが好調という噂を聞くが、やはりまだまだ採用後のことよりも、いい人材をどう採用するかという入り口の方が主たる話題になりやすい。

南氏は取材の最後、踏み込んで事業拡大に突き進む理由をこんな風に語ってくれた。

「(ネットベンチャーの土壌を)一つ上の世代の方々が切り開いてくれました。彼らには感謝してますし、(南氏が以前在籍していた楽天・三木谷浩史氏から)『世の中をどう変えるか考えなさい』と20代の頃から常々言われていました。世の中の働き方や個人の生産性をどう変えるか。ここに私は意義を感じてるし、こうやって応援してくださる人たちがいる以上、もうとことんやろうよと、そう思ったんですね。

今回調達をした一番のメッセージはそこにあります。

うまくいく時もあればいかない時もあります。ただ、現状維持は下りエスカレーターに乗ってる、そういう世の中になってると思うんです。誰かがやるなら、自分たちがやればいいんじゃないかな」(南氏)。

 

“summercamp"/

Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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