マイクロソフトが〝人工知能帝国〟を構築している最初の兆候とは?

VentureBeat ゲストライター by VentureBeat ゲストライター on 2016.10.22

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Image credit: Pixabay

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大失敗に終わったために関わったリサーチャーは全員解雇されたか異動されたと思われる Microsoft のチャットボット「Tay」については全てを忘れてほしい。Tay は、実際には Microsoft の自然言語処理アルゴリズムの試験的試みであり、このチャットボットは試験に合格しなかっただけなのだ。

さらに、Tay は Microsoft の人工知能の腕前を証明するものとして意図されてはいなかった。むしろ、Microsoft の壮大な人工知能計画への最小限の足がかりという、単なる消費者向けの試みだったに過ぎない。Microsoft が人工知能で計画していることをご存知だろうか? Office 365の高度な E5プランを使用する企業向けに無償で提供されているアドオン、Microsoft Office MyAnalytics ダッシュボードを置いて他には考えられない。少し紛らわしいのだが、MyAnalytics はエンタープライズユーザ向けにいまだに存在している Delve Analytics プラットフォームから派生してできたものだが、個人ユーザの1週間にわたる時間と生産性を追跡してくれる。

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ではその仕組みを紹介しよう。Microsoft の MyAnalytics は、ユーザの Outlook やスケジュールを絶えず分析している。ユーザがいつ誰とどの会議に出席するのか、メールの返信にどれくらいの時間を費やすのかなどを把握し、また、プロジェクトで重要な人物を選択したり、彼らとのやり取りを彼らが Outlook ユーザかどうかにかかわらず追跡したりしてくれる。例えば、マーケティングチームの Bob との会議に毎週 3~4回出席しているとしよう。MyAnalytics は、ユーザの時間の使い方に関していくつか判断することができる。例えばユーザが通常、会議の最後の15分をメール処理に費やしていることを発見したり、ユーザが Bob と同じマーケティングチームにいるのなら彼と時間を折半して会議のいくつかを辞退する方が合理的だということなどを教えてくれたりする。

これは、ロボット掃除機や、私が個人的に気に入っている最も強力なチャットボット Ozlo(今いる町で飲食店を見つけてくれる)などに組み込まれているのとは異なるタイプの人工知能だ。Apple の Siri、Amazon の Alexa、Google の新しい Allo メッセージングアプリの Assistant とは全く違うものであり、人間のフリをしているものではない。とは言っても MyAnalytics が機械学習を使用しているのは事実で、ユーザの行動や時間の使い方を理解し、Food For Thought というダッシュボードインターフェイスセクションを通じてユーザによりスマートな仕事の仕方を推奨してくれる。

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これこそが Microsoft(および同社 CEO の Satya Nadella 氏)が描く未来だと思う。ユーザにより良い経路を見つけてくれるヒューマノイド Cortana ではなく、現実的、実用的、技術的で骨の折れる作業をしてくれる奥深く埋め込まれた人工知能なのだ。この人工知能と対話をすることもなくユーザは恩恵を受けることができる。

この仕組みに関する最も興味深い例のひとつに、メールに関連するものが挙げられる。MyAnalytics はユーザの e メール、返信にかかる時間、そしてやり取りしている人々の応答時間(彼らが Microsoft サービスを利用していなくとも)全てをスキャンし、毎週メールの処理に費やす時間の目標値を設定してメールのやり取りをより頻繁に(または少なく)することを提案してくれる。この種の人工知能は Microsoft 製品に根付いているので機械学習はバックグラウンドで行われ、ダッシュボードインターフェイスやコードベースの全体に広がっていく。つまり、機械学習がより良い働き方を見つけてくれればユーザは仕事への取り組み方を変える必要があるということだ。

この他にも Microsoft 製品の中に機械学習が織り込まれている例が多数ある。今秋発売される Microsoft Word の新バージョンでは、Editor がユーザのテキストを常にスキャンし、より少ない単語数と受動態をそこまで使わない文章の書き方を提案するという。PowerPoint では、ユーザの画像をスキャンし、画像の色を調整するだけでなく、スライド全体を際立たせるグラフィックデザインを使用する。また、顔を検知し、顔が画像の中央にくるようにトリミングしてくれる。Microsoft Sway では、「コーヒーの最高の淹れ方」というようなシンプルなフレーズを入力すると、そのフレーズに基づいた画像と見出し付きのパンフレットを作成してくれる。これらはどれも決して難しい技術ではないが、非常に便利で大量の時間を節約してくれる。つまりこれは、大衆のための人工知能 である。

さて、MyAnalytics ダッシュボードに話を戻すと、将来的な機能強化の可能性が大いにあるため、私は現在のところ Google Docs の代わりに Word を使用している。Microsoft は将来的な計画についてはコメントしていないが、Microsoft Edge でユーザの閲覧傾向をモニターし、ユーザが必要な情報を提供するサイトをより早くより高い性能で提案してくれるようになるだろう。ユーザがビジネス文書を作成する頻度やそれらの文書をメールで送信した時に送信先の人々が実際に読んでいるのかどうかについて「学習」したり、また、毎週の Skype 会議ではビデオ会議よりも多くの参加者を集める傾向にあることや出席者が会議中にはメールをチェックしないことなどをダッシュボードが把握したりなど、ユーザが日々うまく仕事できるよう先回りして手助けしてくれるだろう。

これは最終的には大きな成功を収めるだろう。Alexa の人工知能は素晴らしいが、日々の仕事にいつも役立っているわけではない。Amazon で何かを注文したり、天気予報をチェックしたりするには便利だ。Microsoft は職場の生産性とビジネス市場というより大きな将来を見据えている。

Microsoft 製品の人工知能が引き続き進化して他の製品に広がり、Word や Skype、Sway などのビジネスアプリで私たちの仕事の仕方が改善していくのか目を離さないでほしい。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

VentureBeat ゲストライター

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VentureBeat へのゲスト寄稿の翻訳です。

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