期待される世界のチャットボット・サービス5選

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チャットボット(Chatbot)とは?

メッセンジャーを友達とだけ話すためのみのアプリと考えているなら、今後は考え直した方がよさそうだ。人工知能(AI)をベースに、相手と会話しながらニーズを解決してくれる「ロボットヘルパー」のチャットボットが徐々にメインストリームの技術となっているからである。現在、Google、Facebook、Microsoft、Telegram をはじめ、韓国では Naver、Daum などの大手IT企業がチャットボットを商用化するため投資を進めている。

先月24日(現地時間)、Microsoft が開発したチャットボット「Tay」は、24時間で約96,000件のツイートをし、11万人のフォロワーを獲得した。しかし、18歳〜24歳のユーザーに特化したサービスだった「Tay」は、残念ながら、この年齢層のユーザの遊び心を考慮していなかったものと思われる。ユーザー「Tay」にホロコースト、9.11テロ、人種差別などについて聞くと、「Tay」が次のような発言を吐き、その24時間後にサービスが中断された。

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一方、ある程度のルールが定められた中で、チャットを通じて行う予約サービスは、すでにかなり普及している。ドイツなどで商用化された「WhatsApp Taxi」を活用すれば、別のアプリをインストールする必要なく、チャットウィンドウでタクシーを呼ぶことができる。現在の位置を送信して「WhatsApp」が質問したことに簡単に答えるだけで十分である。

チャットボットと、予想されるビジネスの構造変化

チャットボットの成長に伴う長期的な破壊力は非常に大きいものと予想されている。最初に起きるのは、Google や Naver の中核サービスである検索を、メッセンジャーが代わりにするようになるメッセンジャー中心の市場が再編されることである。これからの人は、検索エンジンを介して必要なものを直接検索するよりも、メッセンジャーに質問する方法で、自分が必要な情報を得ることができる。

検索は、メッセンジャーで取得することができない情報を追加で取得するツールとして、その利用頻度が落ちていくだろう。かつて Google の検索サービスに驚いた人々が、検索という言葉の代わりに「ググる」という言葉を使ってきたように、本格的なチャットボットの成功モデル登場によって「ググる」を置き換える言葉が登場するだろう。

それだけでなく、既に市場に登場したか、今後登場することが予想されていた数多くのアプリが「メッセンジャー」として統合される可能性もある。今は旅行に行くために旅行アプリで航空券を予約し、各種のショッピングアプリで買い物をし、キャリアのアプリで付加サービスを申請し、ソーシャルアプリで獲得したクーポンで美容院を予約してきたが、今後はこれらのすべてのサービスをメッセンジャーアプリ一つで解決できるようになる。

メッセンジャー:Kik と WeChat(微信)

北米地域の若者が主に使用しているメッセンジャーアプリ「Kik」は、新興化粧品会社の Sephora、ファストファッションの H&M など16社と提携し、ボットショップを開設した。ローンチから1ヶ月経っていないが、4月24日現在で提携先は33社に増えた。

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ボットショップの企業とチャットするには、メッセンジャー内でボットショップメニューに移動し、そこでチャットしたい企業を選択するか(33社すべて可能)、メッセンジャー最上部の Kik ウィンドウで「@」を入力した後に推奨される会社名を選べば良い。

ボットショップのほか、Kik と連動したダイアログに入った後、「@」をクリックしすると表示される、直接チャットできる会社のリストの中からいずれかを選んでサービスを利用することができる。現在は The Weather Channel、Vine、theScore など6社がサービスを提供している。一度会社を選択して使用した後は、友人とのやりとりで、ダイアログを開くのと同じ状態になる。

Kik は、ボットショップが今後、コアサービスになると考えているようだ。Kik のホームページでは、「ウェブサイトとアプリの時代が去り、ボットの時代が来た」と宣伝し、「自分たちのメッセンジャーにボットを作成をお勧めします」、と詳細な導入方法を紹介している。

しかし、現在のチャットボット・ビジネスのリーダーは、中国の「WeChat(微信)」である。 中国のチャットベースのアプリ「WeChat」を使って、中国の消費者は、すでにショッピングからチケットの予約、映画の予約、ホテルや病院の予約などをすることができる。 かつては、WeChat 対応の従業員が直接お客の質問に対応する形だったが、現在は既に構築されたデータに基づいて、WeChat のチャットボットが対応する割合が高くなっていることを明らかにしている。

ショッピング:Mezi と Operator

Mezi」は、ショッピングの分野でチャットボットサービスを提供している。Mezi アプリをダウンロードして実行すると、旅行、ファッション、電化製品、ギフトなどのカテゴリがある。Mezi の競合である「Operator」の場合、サインアップの段階からチャットで情報を入力する点が興味深い。

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登録後に開くウィンドウには、サービスが可能な分野が説明され、「What can I find for you today?」という質問が表示される。チャットウィンドウで探しているアイテムについて尋ねると、予算などを尋ねる詳細質問が現れる。答えを入力すると、選択したオプションに応じて、候補アイテムを推薦してくれる。

スケジューラ:x.ai

βサービス中の「x.ai」は、Google や Outlook のカレンダーなどの情報を活用したスケジューラアプリである。登録したユーザが、自分が主に使っているカレンダーアプリを指​​定すると、x.ai はその情報を確認して、スケジュールを教えてくれる。

Bloomberg で紹介するなどして有名になったため、サインアップの登録処理がスムーズには進んでないようだ。筆者が実際にサインアップした結果、205人待ちというメールを受けとった。以前、韓国の「人工知能サービス5選」という記事で紹介した、韓国の Kono Laboratories の「kono(코노)」が、x.ai と同じサービスを提供している(編注:日本では、Subot が類似したサービスを提供しようとしている)。

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スケジューラアプリの動きは、実際には地域の企業文化とも関係がある。韓国では、ほとんどの業務が電話で行われるが、これとは異なり、ほとんどの業務がメールで行われるアメリカの企業文化では、メールを活用した方が成功の可能性が大きくなると予想される。メールでやりとりした上で、当事者が実際に会ってミーティングが必要になった場合、メールで x.ai を cc に指定することで、スケジュールの確認とミーティング場所の検索を依頼することができる。x.ai が両者または一方のスケジュールを確認した上で、選択肢を提供する。

チャットボットの限界

残念ながら、スケジューラとショッピングサービスは、ほとんどまだリアルタイムではない。Mezi を使ってTシャツの推薦を依頼したところ、約20分間かかって7つのレコメンドを受けた。その理由は、まだボットではなく、人間によってサービスが提供されている場合が多いからである。

本当の意味でのチャットボットというより、一種の検索代行アプリと言える。「ボットではないのか」という筆者の質問に、「半分は人間です(Mezi)」とか、「私は人間ですよ(Operator)」と回答してきた。

また、最近、Bloomberg は「チャットボットの裏側で働く人間たち」という記事を掲載した。x.ai は、人工知能が処理した結果を人間の「人工知能トレーナー」が監修しなければならないレベルであることが分かった。 実際に「人工知能トレーナー」として働いていた人によると、メールを確認する業務は、事実上、ほとんど人工知能ではなく、人によって処理されると明らかにした。

この分野のほとんどのスタートアップが中国の WeChat のように MVP(Minimum Viable Product)としてサービスを開始した後、データ蓄積と追加の投資を通じて、本格的な人工知能モデルに変換していく戦略を模索していると期待したい。

【原文】

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

https://thebridge.jp/curation/chatbot

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