Open Network Labが第13期プログラムのデモデイを開催、塾と保護者間のコミュニケーション支援クラウド「Comiru」が優勝

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東京のスタートアップ・インキュベータ Open Network Lab は13日、Seed Accelerator Program 第13期のスタートアップを披露するデモデイを開催した。このバッチには、日本の内外から合計88チームのエントリ(うち、海外から22チーム)があったが、中から5チームが選抜され3ヶ月間にわたってメンタリングや支援を受けることとなった。なお、5チームのうち、1チームはデモデイを待たずに解散、もう1チームは Open Network Lab が内部で規定する条件に達しなかったため公開されず、結果、3チームがデモデイでピッチした。

これまでの Open Network Lab でのデモデイは、主要メンターやでデモデイに参加した聴衆らによる審査投票の形式がとられることが多かったが、今回は以下の審査員5名による審査をもとにチームが表彰された。

  • 林郁氏(デジタルガレージ 代表取締役社長兼グループCEO)
  • 佐々木智也氏(DG インキュベーション シニアマーケティングディレクター/Open Network Lab 代表取締役社長)
  • 猿川雅之氏(DG インキュベーション マネージング・ディレクター)
  • 畑彰之介氏(カカクコム 代表取締役社長)
  • 村上敦浩氏(カカクコム 取締役)

Best Team Award 獲得: Comiru by POPER

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Comiru は、学習塾と保護者のコミュニケーションを支援するアプリだ。創業者の栗原慎吾氏は、住友スリーエムを経て、オプトでウェブマーケッターとして活躍し、2012年に埼玉で学習塾の講師になった異色な経歴の持ち主だ。4年間に及ぶ塾講師の経験を経て、学習塾では情報がアナログで管理されており、指導報告書など保護者に提出する情報をはじめ、あらゆる書類が紙かつ手書きで管理されていることに作業効率の悪さを痛感。学習塾の講師も保護者も、すでにデジタル世代であることに目をつけ、塾における業務プロセスや保護者とのコミュニケーションを徹底的にデジタル化するしくみを考案した。平均的な塾講師は、保護者連絡、成績管理、授業準備などに就業時間全体の7割の時間を費やしているが、Comiru によって、これらの授業以外の業務にかかる時間を10分の1にまで圧縮可能だとしている。

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デモでは、塾講師であるユーザが、テンプレートを活用して保護者に簡単にメールを送信する機能が披露され、塾講師が授業以外の業務であり重要な作業でもある、塾生徒が学校でもらった通知書を預かって内容を把握する、という手順を5分で完了する例が紹介された。保護者にとってもスマホでのやりとりで回答が可能になるため、Comiru の導入により、必要データの回収率は40%から90%に大幅に改善したとのことだ。

正式リリースから半年で、21社の塾と契約し、塾生徒の取扱ID数ベースでは2,000ユーザ以上(1生徒あたりの価格は月200円)に達している。チェーン展開ではなく、個人経営など小規模ながらも、保護者や生徒に人気の高い〝強い塾〟をターゲットにしているそうだ。今後は、塾〜保護者間のコミュニケーション支援、塾講師の業務支援にとどまらず、ユーザの増加にあわせ蓄積されてきたデータに基づいて、進路に関する情報を保護者や教師に広告として提供するサービスも提供、売上増を図りたい考えだ。

すでに有料ユーザがいることからユーザバリデーションをとれていることや、塾業界にしかいた人ではわからない、栗原氏のアウトサイダーの視点があったからこそ生まれたこのサービスの発想に、審査員の評価は総じて高かったようだ。デモブースでは、Felica を使って、生徒の入退室管理をダッシュボードで管理できるしくみも紹介されていた。生徒の塾への入退室のタイミングで、保護者のスマホに入退室を知らせるノーティフィケーションが飛ぶため、保護者にとっては子供の安否確認にも役立てることができそうだ。

Foxsy by Xpresso

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出会い系アプリの花形とも言える Tinder だが、Tinder のお膝元であるアメリカでさえ、Tinder を使った後に実際に会ってみるユーザのペアは0.1%に満たないのだそうだ。Xpresso の田中仁氏によれば、このコンバージョン率の低さは、女性が男性に求める期待値(情報の量)に比べ、男性の行動レベル(発信する情報の量)が圧倒的に低いことによるのだという。女性は一般的に、相手の男性のプロフィール、性格内面に関する情報、写真など50項目にわたる情報を求めるが、対する男性は、女性からどんな情報を求められているかわからず、または、プロフィールの入力作業そのものが煩わしく入力していないことも多い。

Foxsy は、Facebook Messenger、Kik、LINE といったメッセージアプリに連携可能な、男女の出会いを支援するデーティングボットだ。ユーザはボットからの質問に沿って情報を入力、その情報をもとにボットが男性ユーザに対して女性ユーザを紹介し、共通の話題についてボットが問いかけをすることで、男女のユーザ間のコミュニケーションを活性化させる。このしくみにより、Foxsy で会話を始めてから、実際に会うまでにいたるユーザのペア確率が40%にも上っているのだという。

Tinder を1,500回以上使ってきたという田中氏が、Tinder から Foxsy へユーザを運んできたと明言するほど、ゲリラ的なユーザ獲得手法をとっているのは面白い。ローンチからの数ヶ月でユーザ数は500人、マッチング成立は305回に至っているそうだ。出会いの支援だけでなく、イベント、ビジネス、トラベルなど、さまざまな日常機会で、人と人とが出会うための情報やプロセスを補完するサービスに仕上げていきたいと抱負を語った。

SENSO by Appledore

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フードデリバリサービス Instacart のソフトウェアエンジニアだった Tiffany Pang 氏と、P2P カーシェアリングサービス Getaround のソフトウェアエンジニアだった John Cadengo 氏が設立した Appledore。彼らは、映像認識技術や GIS(地理情報システム)などを駆使し、ホームレス支援のため、ソーシャルワーカー・警察・公的支援機関・市役所などで情報を円滑に共有できる Outreach Grid を開発していたが、ピボットを図ったか、もしくは追加の別サービスとして、デモデイでは SENSO という別サービスをピッチした。

SENSO は広告効果測定ツールとして感情分析ができるサービスだ。Pang 氏と Cadengo 氏の専門分野である感情認識や画像認識を駆使することにより、広告やコンテンツが視聴者に感動を与えられたか、感情の度合いと起伏を測定することで、マーケッターはパフォーマンスを分析し、さらによい結果の創出につなげることができる。実のところ、広告キャンペーンは、期待に応えられるパフォーマンスを上げることができず、当初予定した期間の終了を待たずに中断されているケースがほとんどなのだとか。実際の運用では、SENSO のプラットフォームにテスト用広告をアップロードし、その広告を見たテスターの感情を計測、マーケッターは感情の起伏が最も大きかった広告の選択肢を採用することができる。

少し似たサービスでは、例えば、TVision Insights などはテレビの視聴率だけでなく、やはり映像分析により、視聴者をどれだけエンゲージメントできているかを計測できるしくみを開発している。コンバージョンが計測できない種類の広告にも、例えば、CPV(インプレッション基準)や CPC(クリック基準)の間の、エンゲージメントがどの程度行えたかを定量的に分析し、パフォーマンスベースで課金するような広告が生まれてくるかもしれない。

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Open Network Lab のプログラムディレクター松田崇義氏によれば、今回の第13期の修了を受け、Open Network Lab は通算で75組のスタートアップを輩出したことになる。デジタルガレージが7月に、カカクコムやクレディセゾンと始めたオープンイノベーションのための研究組織「DG Lab」が稼働を始め、今回のデモデイもベンチャーキャピタル40社や事業会社30社が見守るところなった。フォローオンの投資や協業連携にも有効に働くだろう。

第13期デモデイの開催とともに、第14期バッチへの応募受付が開始された。Open Network Lab は、3ヶ月間のバッチ参加中の活動資金として最大1,000万円を提供。Open Network Lab の日本内外3拠点(代官山・鎌倉・サンフランシスコ)の1年間の無料施設利用に加え、Open Network Lab の Seed Accelerators Program からこれまでに輩出されたスタートアップの経営者らによるメンタリングも提供する予定。第14期バッチへの申込締切は、11月28日の正午となっている。

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