ブロックチェーンベースのクラウド開発を目指すDfinity、Polychain CapitalとAndreessen Horowitzから6,100万米ドルを調達

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Dfinity のブロックチェーンプロジェクトには大きな野心がある。同社は本日(2月7日)、Polychain Capital と Andreessen Horowitz から6,100万米ドルを調達した。同社は最新かつ分散化されたクラウド「クラウド3.0」を作りたいと考えている。これはクラウドベースのビジネスアプリケーションの運営コストを90%削減し、Amazon と Google がリードする現在のクラウドサービスモデルをディスラプトする代物だ。

著名な VC 企業からの支援、明晰なチームメンバー、高速処理が可能な新型ブロックチェーンに対する期待が備わったこのプロジェクトは注目に値する。しかし、Dfinity のミッションを正確に言い表すのは難しいかもしれない。チームリーダーの Dominic Williams 氏は VentureBeat とのインタビューの中で、eBay、Dropbox、Uber といった人気サービスのオープンで分散化されたバージョンが点在する最新インターネットの実現から、消費者が Dfinity コインをマイニングできる専門的なサーバ型のハードウェアについて家族で盛り上がれるようにすることまで、すべてを語ってくれた。

ただし、このプロジェクトの真のセールスポイントは、Williams 氏が呼ぶところの「インターネットコンピュータ」に企業がアクセスできるようになることのようだ。これは、単一でスケールが無限なインターネットベースのコンピュータのことである。企業は現在、例えば Amazon Web Services(AWS)上にアプリケーションやプロセスをホストしているが、それぞれの設定、メンテナンスが必要とされる複数のコンピュータ・インスタンスを賃借する必要があると Williams 氏は述べる。ところが Dfinity ネットワークが利用できるようになれば、企業は1ヶ所ですべてのシステムを動かすことができるようになるという。

それが Dfinity ネットワークであり、容量無限大の単一「インターネットコンピュータ」を作り出します。個々のコンピュータ・インスタンスを自ら管理する必要もなければ、コンピュータ・インスタンスの再起動やクラッシュ時に備えてデータをデータベースにコピーする心配もしなくて済みます。その代わりにインターネットコンピュータがすべての面倒を見てくれるのです。常に稼働してくれて、データプライバシーなどの要件も満たしてくれます。企業システムは同一の巨大なバーチャルコンピュータを共同でホストしているため、望ましいケースでは相互運営がきわめて容易になります。

このようなクラウドベースコンピューティングの改革により、企業はクラウドに係るコストを90%削減できると同社チームは述べている。しかしこの費用削減は、コンピューティングコストではなく、人員削減に関係するもののようだ。Williams 氏も昨年のブログ記事での投稿の中でこう述べている。

ブロックチェーンコンピュータでの計算処理は AWS など既存のクラウドと比較してかなり高価です。しかしながら、企業の IT システム運用に係るコストの大半は人的資本からもたらされており、コンピューテーションのみではありませんので、劇的なコスト削減が可能となるのです。また、Dfinity のクラウドでは、はるかに少ない人的資本しか関与しないシステムを作ることもできます。

Dfinity ネットワークの展開は2019年以降になるとみられている。しかし、昨年10月に採用された小規模(500ノード)のテストネットでは、良好な実績を残したようだ。世界に分散化されたテストネットでは、1秒で計算を完了することができた。これがイーサリアムのブロックチェーンでは600秒、ビットコインでは3,600秒かかるという。

企業が Dfinity モデルに移行できるようにするためには、まだ実現していない重要な要素があるのは明らかである。まず、基本的な分散化ネットワークの創設に向けて、大規模で地理的に分散した Dfinity のマイニングコミュニティが出現しなくてはならない。

Dfinity は現在、同社にスイッチしてくれることを願って複数のプライベートホスティングセンターと交渉中だ。これらの会社は、AWS と競争するのは困難だが、フリーラックを Dfinity のマイニングリグに転換することができるという。同社チームも、Dfinity をマイニングするのに必要な特注サーバを製造する件について、ハードウェアメーカーと話し合いをしている(Williams 氏の話では、必要とされる容量以下でマシーンを稼働させるとペナルティが課されてしまうほか、超過容量に対しては何も報われないため、設備に対するニーズを Dfinity の仕様に合わせ調整しているという)。最後に、運送用コンテナの約20ヶ所のデータセンターに投資し、それを世界中で展開することによりネットワークを開始する可能性があると Williams 氏は述べた(ただし、こうした動きが分散化という目標の達成にどれほど資するかは不明)。

パズルを完成させるのにもう1つ大事なピースは、新たなネットワーク上で動かすことのできるビジネスソフトウェアになるだろう。企業が頼ることのできる Dfinity ネイティブ版のツールやアプリケーションが必要とされる。それに向け、Dfinity と Polychain Capital は本日(2月7日)、Dfinity Ecosystem Venture Fund を共同で管理し、Dfinity 用のアプリケーション、ツール、プロトコル構築を目指すサードパーティのチームを支援していくと発表した。

Williams 氏はこのエコシステム構築のプロセスについてきわめて楽観的だ。

Dfinity 上での構築はとてつもなく簡単になるでしょう。インターネットコンピュータ上で構築をするデベロッパーは、超越した力を持つことになります。驚くべき利点を手にしつつ、こうした企業が構築を進めているという噂が立ちます。ひとたび噂が広まれば、市場への浸透は瞬く間に行われるでしょう。

Dfinity はスイスのツークで非営利財団として登記されているが、カリフォルニア州パロアルトとドイツに研究所を構える。本日(2月7日)発表された資金調達は、財団への寄付とみなされている。その見返りとして、この財団はネットワークの稼働時に「(寄付してくれた人に)トークン配分を薦める約束をしている」という(Williams 氏)。

Dfinity のチームは昨2月に一般向けの「シードステージ」ICO を実施し、昨年末には「メイン」ICO でそのフォローアップをするとみられていた。しかし、本日(2月7日)発表された資金投入が、このパブリック ICO の代わりになったのかもしれない。

私たちは ICO の実施についてや、過去のひどい ICO のせいで当社の評判が落ちること、そして規制当局との問題に巻き込まれる事態を警戒しています。

ただ、このプロジェクトへの参加に興味を示したコミュニティの水準からすると(同氏によると数億米ドル規模のコミュニティメンバーが投資に関心を寄せているという)、トークン配分についてチームは別の方法を検討しているところだという。

2月7日午後9時8分更新:この記事の最後の文章で、Williams 氏の「数億」に関する発言を人数ではなく、金額に変更。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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