人口減少時代を「移動」で救え!C2Cサービスの移動インフラを目指す「LUUP」ーー電動キックボードのシェアリング事業で5自治体が連携

SHARE:
_ITO4778
左から多摩市副市⻑ 浦野氏、横瀬町町⻑ 富田氏、浜松市市⻑ 鈴木氏、Luup 代表取締役社の岡井大輝氏、四日市市⻑ 森氏、奈良市観光経済部部⻑ 梅森氏

電動キックボードのシェアリングLUUPを展開するLuupは4月18日、自治体との連携協定締結を公表している。提携したのは浜松市、奈良市、四日市市、多摩市、横瀬町の5自治体。連携では電動キックボードを用いた実証実験、市内における公共交通のあり方に関する協議、交通政策への相互協力が実施される。

なお、実証実験の場所や日程、使用される機体の要件などについては協議中。駅から遠い不動産や店舗の価値向上や観光客の利便性向上を目指し、安全性などの検証を実施する。

Luupの創業は2018年7月。電動キックボードをはじめとする、マイクロモビリティのシェアリング事業を手がける。現在準備中のサービス「LUUP」はアプリを用いて、街中にある電動キックボードを借りることができるもの。料金は電車同程度の100円〜200円での利用シーンを想定している。

同社代表取締役の岡井大輝氏は東京大学農学部を卒業後、戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI(経営統合支援)やPEファンドのデューデリジェンスなどを手がけた人物。本稿では提携の発表に合わせ、岡井氏にインタビューを実施したのでそちらをお伝えする(太字の質問は全て筆者。回答は岡井氏)。

_ITO4716

海外では「LIME」や「Bird」などのドックレス・バイクシェアサービスが2018年を中心に拡大している。まず国内の状況を教えて欲しい

岡井:現時点で「原付」に該当し、かつ整備が万全であることを証明する体制も整っていないというのが現状の認識です。警察庁などの官庁も法令上「原付」に該当することは明言していますが、整備不良でないかはまた別の論点となります。

日本ならではの課題は

岡井:諸外国と比べ、都市や道幅が狭いため機体を停める場所や安全に走行するための工夫は諸外国よりも最新の注意を払う必要があると考えております。本来は自転車の普及率や電車が発達している日本こそマイクロモビリティの需要が存在しているという認識です。

自治体との連携内容を具体的に教えて欲しい

岡井:手段としてあり得るのが警察庁との調整のうえ、公道もしくは私有地において実証実験をすることが挙げられると考えています。場所の候補は決まっているのですが、具体的な安全面の配備のための体制や日程につきましては、現在関係各位とより緻密に調整中です。

https://twitter.com/DAIKIOKAI/status/1118739983278325761

NTTドコモが電動自転車のシェアで利用拡大しているが、こういった大手の参入の可能性は

岡井:中長期的には見込まれると考えています。今後よりマイクロモビリティをシェアリングとして利用する文化が生まれていく中で、既存の交通手段(電車、バス、車など)で移動している住民の方のたった1%でもマイクロモビリティシェアリングを利用すれば、現時点のシェアリング自転車の数では対応しきれないと試算されているからです。

確かに自転車は駐輪場の問題もあって結構場所を取るし、中国勢の出入りも激しい

岡井:そうです。なので今後は自転車に加えて、より体積の小さい電動キックボードが注目されると考えています。

また、ここ数年海外プレイヤーや国内プレイヤーが自転車シェアから撤退している背景としては、都市が狭いことに起因した駐輪ポートの設置の難易度が高いことと、いくつかの有名プレイヤーは日本だけの撤退ではなく、世界中において撤退しているので、本国親会社の意向があると考えてます。

luup_002

大きな事業分類としては「MaaS」になるが、どのようなビジョンを持っている

岡井:まず今後の日本がどうなるか?という話からさせてください。

これからの日本は高齢化と共働き世帯の増加を主軸にいろいろな問題が増えていきます。具体的には、高齢化率が上がり、免許の返上も大きく始まり、コンパクトシティがどんどん増えるでしょう。また、共働き世帯の増加によって、UberEATSのような家に物が直接届くサービスが増えるはずです。生活の形そのものが変わっていくはずです。

特に地方での課題は顕著になる

岡井:それにあわせて変わるのが人の移動や物流の形です。これまでのモビリティ(電車やバス)は、雇用が発生するので臨機応変に対応できません。また、バスと電車や、電車とカーシェア間の移動をつなぎ合わせるマイクロモビリティは現状ありません。

いわゆる交通インフラにおける「ラストマイル」問題

岡井:弊社はそういった背景をふまえ、臨機応援に対応できるモビリティインフラを目指しています。上記のような状況になった社会において、小さくかつ無人なマイクロモビリティは解決策になると考えています。配食事業や、人が人の元に行くC2Cの事業は、マイクロモビリティの発達の上に成り立つためです。

luup_001

なるほど、確かにUberEATSはシェアリングサイクルを使って配達していたりする。移動があらゆるサービスのインフラになる

岡井:現代の日本は、人口が継続的に減少することがほぼ確実な「人口減少時代」です。これに伴って、高齢化や共働き世帯の増加など、様々な問題が発生してきます。

その「人口減少時代」において予想される状況としては、UberEATSなどの物やサービスが直接自宅に届くサービスの利用が増えたり「働きたい時に働く」「来てほしい時に来てもらう」などのC2Cマッチングサービスが進展してきたりなどが挙げられます。

しかし今の日本はこれらが浸透し切らない環境です。なぜなら人が問題なく手軽に移動できる距離が、駅やバスが起点になって規定されてしまっているからです。

そもそもマイクロモビリティをやりたくて起業したのか

岡井:創業当初は直球で1つの社会課題を解決する事業をやっていました。一言で言うと「介護版Uber」です。この事業は、僕の家族の原体験が発想の元となっています。祖母が認知症だったのですが、肉体的には問題なく立ち上がって移動することができる状態でした。

そのため深夜に火を使って料理をしたり、徘徊したりしてしまうにも関わらず、立ち上がれるために要介護認定が重症の扱いにならず、国から受けることができる介護サービスの数や頻度が制限されていたのです。

なかなか難しい判断に直面した

岡井:もちろん高齢化社会において、国が提供するサービスだけだと限界があるのは当然のことです。この国だけではカバーしきれない部分への解決策を自分たちで提供するべく、「介護士版Uber」事業を立ち上げたんです。

具体的にはどのようなサービスだった

岡地:数時間だけ働きたい主婦が疑似的な介護士(=見守り人)として、数時間だけ祖母の面倒を見てほしい家の介護をサポートできるマッチングサービスです。都内や郊外の主婦や要介護者やその家族に対してニーズは非常にありましたが、この事業は敢えなく断念しました。

撤退の理由は

岡井:移動です。電車・バス・車で見守りをする側(=見守り人)が移動する形では、移動効率が悪く、マッチングが適正に行われないという問題があったからです。車の場合は駐車場に止めることが時間のロスとなり、電車の場合は駅前しかカバーできません。

それでモビリティサービスを手がけることに

岡井:「介護士版Uber」は、僕の力不足により頓挫してしまいましたが、幸い当時のメンバーはその後の僕についてきてくれました。そして、日本の交通における課題の発見につながりました。今後更に加速するであろう「人口減少時代」ではC2Cのマッチングサービスや配達系サービスの増加が見込まれています。

であれば、これらを解決するインフラとなる事業を僕たちがやろうと考え、マイクロモビリティのシェアリングというところにたどり着きました。僕たちの会社は、まずは日本が抱える最も大きな課題に対して、解決策を提示する存在でありたいと考えています。

社会的な意義も大きな事業と考えます。実証実験が成功することをお祈りしております

 

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する