コロナ危機を乗り切るための10のイニシアティブ【ゲスト寄稿】

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mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


Image credit: Pxfuel

コロナ危機におけるスタートアップの対応については、既に多くの VC がアドバイスを与えているが、この寄稿では少し異なるアングルから論じてみたい。すなわち、現在出回っているティップスの大多数は規範的な内容であるため、私からはいくつかの投資先で実践中の具体的かつアクショナブルな施策を紹介する。

言い換えれば、本稿のポイントはとまり木の上から講釈を垂れるのではなく、有能な投資先 CEO によるアイデアとアクションを多くの人と共有することにある(よって私自身の考えやコメントは、括弧で囲っておく)。この場で紹介するイニシアティブが、皆さんのインスピレーションを刺激し、各々の状況に応じた施策に生まれ変わることを切に願っている。

  1. 状況が好転するよりも、悪化する前提で行動すること。慎重すぎることはなく、十分な注意を払い、早期に対策を講じる。
  2. 事態が悪化する場合には投資家と率直は話し合いを行い、彼らにブリッジファイナンスを提供する意志と余力があるか調査する。
  3. 従業員に対し、リモートワークができるツールを与える。全ての社員が CEO と同様の環境でリモートワークが出来るわけではない。必要に応じてツールの購入を支援するための補助を用意する(これは自宅での労働生産性を向上するのみならず、社員のロイヤルティを高める上でも有益である)。
  4. 今回の危機に対応するための特別な役割をそれぞれの社員に与える、例えば…
  • サプライヤー、顧客、パートナーの健康状況確認
  • スタートアップが享受できる可能性のある補助金等の調査
  • コロナの事態改善に関するポジティブなニュースの共有
  • オフィスにおける衛生グッズの調達

これらのイニシティブには、幾つかのメリットがある。①社員に明確な責任を与える、②問題解決のミッションを与える、③ CEO の負担を軽減する(もし権限移譲が進んでいないベンチャーであれば、今回は好機である)、④生産性を改善する等々。

  1. 全社員に時間を与え(2週間が目安)、短期的に収益を回復させるクリエイティブなアイデアを考えさせる(もしハードウェアの会社であれば、何らかのサービス提供が できないか? 会社の人材や技術を生かし、異なる形でマネタイズできないか?)。
  2. 今後訪れるであろう財務面での困難について、社員と透明かつ必要以上にコ ミュニケーションをとる。
  3. まずは率先して自分の給与を100%先延ばし、それから社員に50%の先延ばしをお願いする。解雇が必要な場合は、出来る限りの人道的措置をとる(オプション行使期間の延長、再雇用のオファー、施設利用の権利付与等)。
  4. 社外取締役に対するフィーの先延ばしを行う(ボードメンバーとの信頼関係が築けていれば、こうしたフィーの支払遅延が問題となる可能性は非常に低い)。
  5. 受取可能な政府支援策を模索する(公的ローン、失業補償、税制等)。
  6. サプライヤーに対しても財務状況をオープンにし、柔軟な支払条件を交渉する(オーナーに対して一時的に家賃が支払えない旨を真摯に謝罪し、受け入れてもらった事例もある)。

(関連する事例として、過去に1年おきに財務危機に直面していた投資先企業の CFO を思い出す。彼の最もクリエイティブなアイデアは、コインを持ってサプライヤーを訪れ、表が出れば30日以内に支払う、裏が出れば60日支払いを延期してもらう、というギャンブルだった。私は投資先企業がキャッシュ不足に陥り、もう出来ることがないという度にこの話を持ち出している。もしまだサプライヤーとコインを投げていないのであれば、全てやり尽くしたとは言えない。)

健全な企業文化こそ、危機を乗り切るための最大のアセットである。

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