中国国内のインターネットファイルシステムとストレージインフラを目指す「Kanbox(酷盘)」

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

Microsoftが5年目となる同社のオンラインストレージサービスSkyDriveにクライアント(Windows、Mac、Windows Phone、iDevices)追加と新料金プランを加えた翌日の4月24日、Googleがついに長く噂されていたクラウドストレージサービスGoogle Driveを発表した。空き領域5GB、Windows、OS X、Android、iOSを含むプラットフォームに対応し、またクリエイティブなマッシュアップを誘発するサードパーティデベロッパー向けのAPIを提供する。(原文掲載4月28日)

たった2日間で、2社の大企業が既存サービスの改良や、長く待ち望まれていたサービスを発表し、スマートフォンさえあればいつでもどこでもストレージにアクセスできるようにしている。これは何を意味するのだろうか?

これらの2大企業がクラウドストレージで最前線に進み出たことは、どこからでもストレージにアクセスしたいというユーザの需要が高まっているということかもしれない。この点については、Kanbox(酷盘)の会長であるHuang Mingming氏も「クラウドストレージには今年大きな成長を遂げるチャンスがある」と述べている。Kanboxは中国を拠点としたオンラインストレージサービスで、DCMとSIG Chinaの支援を受けている。

北京の三里屯にあるKanboxのオフィスで行なったインタビューで、 Huang会長は中国におけるワイヤレスのインターネット接続が向上し続けていることからスマートフォンやタブレットなどのモバイル機器が普及し、それらの機器を持つ人がファイルを「クラウド」に保管する需要が爆発的に伸びていると述べた。彼は、中国においても世界においてもクラウドストレージがインターネット開発における次の大きなトレンドだと見ている。

個人の大切なデータを保管する

Huang氏は中国のオンラインストレージサービスを2つのグループに分類している。1つ目は公共のファイルを共有するもので、これを通して人気の音楽や映画、ベストセラー本などをダウンロードすることができる。だが、海賊版が出回ることから危険なビジネスモデルだ。彼によれば、今年の始め、多くのサイトが著作権侵害問題で地元の警察に告訴されたそうだ。

2つ目のグループは、ユーザが大切な個人的ファイルをデジタル化し、後で簡単にアクセスできるようクラウドに保管する手助けをするサービスだ。Kanboxはこのグループを代表する企業のひとつだ。

同社は、Tencent、Huawei、Kingsoftなど中国の大手インターネット企業出身の経験豊かな有志によって2010年に設立された。今では80人を超える社員が働いており、その半数は研究開発に携わっている。昨年、北京に拠点をおく彼らはSIG Chinaを含むDCM率いる第2ラウンドの資金調達で2,000万米ドルを獲得した。

Kanboxはユーザのデータ保管に重点を置いている。Huang氏の言葉をそのまま引用すれば、

「公共ファイルにはあまり価値がない。例えば今日、大ヒット映画をダウンロードしたとして、後で間違って削除してしまっても大したことではない。またダウンロードできるからだ。でも、過去2年間で撮った個人的な写真やビデオ、アドレス帳や仕事の文書などを失ったらどうだろう?」

取り返すことはできないし、測りしれない損害だ。

インターネットベースのファイルシステム

だから、Kanboxは最初から個人的データの保管と複数端末によるアクセスに重点を置いている。Windows、Mac、iPhone、iPad、Android、Symbianなど、ほとんど全ての主要デバイスやOSをサポートし、もちろんウェブベースのサービスも提供する。

Huang氏は、インターネットベースのファイルシステムとしてのKanboxの取り組みを説明した。このファイルシステムは、異なる端末で利用可能という重要性を完全にカバーし、Kanboxのアカウントを持っていればどの携帯やタブレットからでもインターネットを通じて個人のデータにアクセスすることができる。

2012年後半に新たな料金プランをローンチ

Kanboxは、Dropboxと同様のマーケティング手法で新規ユーザ全員に5GBの無料スペースを割り当てており、ユーザは友達を招待することでスペースを拡大することができる。友達が1人登録すれば、自分のバーチャルディスクスペースが1GB増える。

数千万人のユーザが現在利用していると言われるクラウドストレージサービスは今のところ無料だが、Huang氏は今年の後半に料金プランを導入する準備をしていると言う。

一般的に中国人はオンラインサービスにお金を使わないと言われるが、Tencentはバーチャルアイテムを売って企業を大きくしたし、AppleのiTunesストアが人民元を受け入れるようになってから有料アプリのダウンロードも大きく伸びている。

良いサービスには誰もがお金を払いたいだろうし、中国の80年代、90年代に生まれた世代の消費行動はヨーロッパやアメリカの同世代に近づいている。彼らはデジタル世界における大きな購買力となっており、革新的なインターネットプロダクトにとって良い兆しだとHuang氏は指摘する。例えば、Kanboxの優良顧客の多くは無料スペースを使い切った後のスペース追加にお金を払いたいと希望している。

Dropboxが中国に上陸しようとも

もしDropboxが中国に上陸したら? 中国の劣悪で複雑なインフラを考えると、そうすぐには大きな脅威とはならないだろうとHuang氏は語る。

中国でのインターネットアクセスの現状に詳しくない人のために説明すれば、中国には国営の3大通信業者(China Telecom、China Unicom、China Mobile)があり、それぞれがブロードバンドのインターネットサービスを提供している。同業界にはこの他に20ほどの弱小企業があるが、話が複雑になるのでここでは3大企業だけに的を絞ることにしよう。よくあることだが、China TelecomのユーザがChina Unicomの運営しているIDCを使ってウェブサイトを閲覧するとスピードが遅いと感じるようで、その逆も言える。この問題は長く続いていおり、これまで適切に対処されたことがない。だから、出張にでたビジネスマンが北に位置する北京でファイルをアップロードし、南の広州省についた時にそのファイルの取り出しに苦労する。

この問題を解決するため、Kanboxは2回目の資金調達後、数億元以上もの資金を使ってインフラを改善することを約束した。

ユーザ数が急速に伸びている状況について、Huang氏は非常に面白い表現で説明した。Amazon S3を使うDropboxはクレジットカードを使えばよいだけだが、Kanboxは数十人のエンジニアを使ってサーバーを買ったり、広大な中国に散らばるIDCのハードディスクを増強するのに忙しくしている、と。

オープン・プラットフォーム

今年、Kanboxは独自のオープン・プラットフォームを発表した。このオープンプラットフォームで、デベロッパーはAPIを通じてKanboxの安定したストレージパワーを活用することができる。すでに非常にクリエイティブな方法で同サービスを利用している事例がある。

Meitu Xiuxiuは、Kanboxのクラウドサービスを使って構築された中国で人気の写真加工アプリで、独自のオンラインストレージを確立する面倒なプロセスを省略している。

Kanboxは今年の後半にアプリコンテストを開催する予定で、同社のインフラを使ってさらに面白いプロダクトの開発を促進する。Huang氏は、Amazon S3がシリコンバレーのスタートアップによって利用されているように、Kanboxが中国の起業家のためのインキュベータのようになることを願っている。

シリコンバレーのチームの小ささ(Instagram は13人、Dropbox は約10人)はよく話題になるが、起業家の神話を超えてAmazonクラウドサービスの重要性を考える人はいない。

そして今、Kanboxはその分野で中国のスタートアップの需要に応えようとしている。

【via Technode】 @technodechina

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