NYの起業家たち11人に聞いた、「スタートアップを立ち上げて学んだわたしの最大の教訓」

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今年の9月末、ニューヨークに行ってきたの。ちょうどFashion Weekが終わったタイミングだったこともあって、ファッション系のスタートアップに会ってきた。そこで彼らに聞いたのが、“What is your biggest lesson so far as an entrepreneur?”。起業家として、あなたがこれまでに学んだ最大の教訓は何ですか。

ニューヨークは、ブルームバーグ市長がTechやスタートアップの活性化に積極的なことでも知られてる街。そんなブルームバーグ市長が手掛けるのが、「Fashion NYC 2020 Initiative」。今後ニューヨークがよりいっそう繁栄するためにはファッション業界の繁栄が欠かせない。そんな考えのもと、業界の更なる発展に貢献する研究や取り組みを行ってる。

その一環が、NYCのChelsea(チェルシー)にあるPop-upショップ「STORY」。NYCのオンライン・オフラインのファッションリテーラーの発掘と支援を目的とするもの。今回会ったファウンダーの多くは、このイニシアチブで優勝した人たち。みんなはすごくハッスルしていて、がむしゃら。

ついつい、より歴史やエコシステムの整った西海岸に目がいってしまいがちだけれど、機会があったらぜひNYのスタートアップシーンもチェックしてみるといいと思う。個別サービスの詳細は、TechDoll(Day1Day2Day3)で紹介してるよ。NYCのスタートアップシーンについては、頓智の井口尊仁さんへのインタビュー記事を読んでみてくださいな。

スタートアップを立ち上げて学んだわたしの最大の教訓

ファウンダーたちの特徴として、スタートアップを始める前はみんな様々な分野や業界で働く経験の持ち主という点がある。その辺の面白さもあるかなと思って、Biggest Lessonを、彼らのプロフィールも一緒に紹介します。井口さんが、ニューヨークのスタートアップはマーケティング思考と感じたのも、こうしたビジネスのバックグラウンドがあるからなのかも。

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Khoi Vinh(Mixel

起業家、ユーザーエクスペリエンスデザイナーで、最近Fast Companyの”The 50 Most Influential Designers in America” (アメリカで最も影響力のあるデザイナー)にも選ばれる。MixelをつくるLascaux Co., Incのファウンダー。その前は、NYTimes.comのデザインディレクターを5年間勤める。受賞歴のあるデザインスタジオBehavior, LLC. の共同ファウンダーでもある。

「プロダクトは、人ではなくチームの結果として生まれるもの。昔はアイディアこそ全てだと思っていた。そしてそのアイディアを形にするために人を採用するのだと。でも、今になって思うと、本当に素晴らしいプロダクトはそれを実現できる本当に素晴らしいチームがいて初めて可能になることに気づいた。もし適切に混ざり合った人材を見つけられず、起業家としてチームに加わってもらういい人材を見つけられなければ、そこから生まれる商品は失敗に終わる。そのアイディアがどれだけ優れていたとしても。」

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Vik Venkatraman(Clothes Horse

生物医学の技術者からブランドマネージャー、さらに経営コンサルタントを経て起業家に。

「個人的に学んだことは、大事なのはアイディアの品質ではないということ。本当に重要なのは、予期せぬハードルを乗り越えるための粘り強さだと思う。」

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Erica Cerulo(Of a Kind

シカゴ大学で学士号を取得。Conde Nast(DetailsとLucky)で編集者を5年間務める。編集とキュレーションの力に魅せられ、Of a Kindを立ち上げる。The New York Times、InStyleなどでも執筆。共同ファウンダーのClaire Mazurは、シカゴ大学の学士号とコロンビア大学の学位を取得。Of a Kindを立ち上げる前は、アートのコンサルタントとして活動。アーティストやアート団体、アートコレクションのマネージメントを行う。

「チームが大きくなってより多くを人に任せるにつれて、これはすごくエキサイティングなことだけれど、人をマネージメントする時間をつくらなくてはいけないということ。自分たちのTO DOリストから項目を消していくことと、一緒に働く人たちが自分が抱えるプロジェクトをやっつけるために必要なサポートを得ていることのバランスを見つけること。これはお互いに改善していきたいなと思っていることよ。」

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Carla Holtze(Have to Have

メディアとファイナンス業界で働き、ニューヨークと香港のLehman Brothersに5年間勤める。コロンビアビジネススクールのMBAを取得。コロンビアジャーナリズムスクールの修士号を取得。 現在は、Have to Haveの共同ファウンダー。

「会社を始めることで柔軟性の大切さを知った。そして市場がそれを示したときに、ピボットする準備が必要だということ。ここ数年でコマース市場は進化を続けているけれど、それに伴って私たちのビジネスニーズも変化してる。だから、事業を継続するために必要かつ重要なピボットを何度かしてきてるの。大事なのは柔軟性、顧客の声に耳を傾けること、ポジティブでいること、そしてプロセスの中でユーモアのセンスを失わないこと。組織にとって変化はつきもので、それに慣れることでしかないと思う。」

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Jamal Motlagh(Acustom

プリンストン大学を卒業後、ニューヨークでオンライン広告の営業を勤める。バルセロナスペインでセミプロフェッショナルの水球選手に。2009年からハーバードビジネススクールに通い、6月からacustomのCEO。

「イノベーションは、プロダクトや企業にゲームを大逆転させる勢いが必要だけれど、同時にその顧客を教育することが求められる。Acustomやその他のイノベーターは、プロダクトを利用した結果人々が何を受け取り、これまでの経験と何がどう違うのかの期待値を正しく伝えることが大事だと思う。顧客の期待値を定めて彼らに適切な情報提供をすること、これが最重要。」

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Matt Wilkerson(AHAlife

MITを卒業した後、投資銀行やベンチャーキャピタルを経て、AHA Lifeの共同ファウンダー。

「本気の根気と集中力が必要。マラソンなんだ。カオスや、数えきれないほどの誤ちを犯すことに慣れなきゃいけない。大事なのは、何かが誤ちであったときにそれを探知し、そこから早く学ぶこと。」

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Jill Meltz(Fashion GPS

Fashion GPSに参加する前は、12年間出版業界で活躍。業界での最後の仕事は、In Styleのラグジュアリー部門のセールスディレクター。CartierやTiffanyなどのソーシャルメディアを活用したブランド戦略の構築を支援する。

「わたしの何よりの学びは、これがそもそもスタートアップで仕事がしたいと思った理由なのだけど、そこがみんなで一緒に作り上げるコラボレティブな職場環境だから。大企業では、管理職や役員のビジョンがあって、賛同するかどうかは別にしてそれをスタッフが形にする。スタートアップは、これをしてと指示されて動くんじゃなく、チームが一眼となってプログラムを開発して導入していくから。」

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Christina Wallace(Quincy Apparel

ミシガン州出身。ジョージア州のEmory Universityで数学と演劇を学ぶ。Metropolitan Operaでアートマネージメントを数年経験し、2010年にハーバードビジネススクールのMBAを取得。1年間Boston Consulting Groupに勤め、QuincyをHBSの同級生だったAlex Nelsonと共同創業。

「Quincyを始めてからの最大の学びは、早くそして頻繁に顧客フィードバックを得ること。自分たちの壮大なビジョンに対して保守的になってしまいがちで、それが完璧になるまで誰にも見せたくないと思ったりする。でもそれをしてしまうと、素晴らしいけど誰も欲しくないものをつくってしまう可能性がある。見込み顧客に対して、早い段階で商品を見せてフィードバックをもらうことが大事。また友達(初期段階の欠点を多めに見てくれる)と、全く知らない人(友達じゃないから、気持を傷つけることを何とも思わない正直な人)を混ぜ合わせるといいと思う。一つの方向を突き進みすぎてお金や時間を無駄にしてしまうことながないから。」

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Rie Yano(Material Wrld

日本、メキシコ、カナダ、アメリカ育ち。メキシコの高校卒業後、上智大学比較文化学部入学。三菱商事の広報部報道チームを経て、北米三菱商事ニューヨーク本社に駐在。ハーバードビジネススクールMBA留学。卒業後、コーチNY本社デジタルメディアマーケティングにてウェブプロジェクトマネージャーに。2012年にマテリアルワールド創業。

「何かが必要なとき、それを人に頼むことを学んだ。必要なサポートを得るためには、遠回しじゃなくストレートに聞く必要があるってことも。人はいつでも協力的だから(特にニューヨークのスタートアップコミュニティは最高)、聞くことを恐れずに。」

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Cindy McLaughlinStyle for Hire

Style for Hireの共同ファウンダーでCEO。ファッション業界で10年以上の経験を持つ。リテール業界のテクノロジーの仕事をした後、ニューヨークを拠点とする独自ブランドAbaetéを立ち上げた。出産を経て家族でカリフォルニアへ。主婦として落ち着いていた頃、友達だったStacy London(著名なファッションコンサルタント)がクロゼットのメークオーバーをしてくれたことをきかっけに起業。MITのMBAを取得している。

「スタートアップの体験はアップ&ダウンの極限。成功が事業を生むし、失敗はそれを壊す。失敗すれば、すべてが実際に終わってしまう。起業家として走り続け成功するヒントは、大変なときもめげずに取り組み続けること。そして上手くいっているときは、それを認識しながらも有頂天にならないこと。自分のため、そしてチームのために、船を常にバランスをとれた状態にすること。」

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Cyrena Lee(ReFashioner

Barnard Collegeで人類学を学んだ後、DailyCandyのフリーランスライターに。上海のOglivyで広告の仕事をし、ReFashionerに参加。ReFashionerのファウンダーのKate Sekulesは雑誌業界出身。Culture+Travelの編集長やNY TimesやGourmetなどのライター。イギリス出身で、元プロボクサー。

「スタートアップで仕事をして学んだ最大のレッスンは、企業としての主たるビジョンにフォーカスをしながら、同時に新しいアイディアに対してオープンであること、適応したり変化する柔軟性を持ち合わせること。狭い視野で成長を止めてしまわないこと。」

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Jared Schiffman(Perch

MITを卒業後、インタラクションデザインを手掛けるPotionを立ち上げ現在パートナー。2012年1月にPerchを共同創設。

「スタートアップにとって、マーケティングはすごく難しい。いつだって、そのコストは?その効果や影響は?という質問がつきまとうから。マーケティング施策のインパクトを判断するのは不可能に近い。だから、マーケティング努力が時にはインパクトゼロかもしれないことを想定しておくべき。その上で、コストを再度算出し物事を実行にうつす。」


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