チェックすべき2013年中国最大のテックトレンドは「ウォール(壁)」

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【原文】

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私が2013年をかなり悲観視していることはいまさら隠すまでもない。先日、私は2013年が中国のテック業界にとって最悪の年になるという記事を書いたが、今回は私が「ウォール」と呼んでいる、ネガティブな予測の理由をさらに掘り下げてみようと思う。

読者の皆さんが思ったことと反するかもしれないが、「ウォール」とは「Great Firewall(金盾、インターネット検閲)」だけを指しているのではない。もちろん、Great Firewallも「ウォール」の一部ではある。「ウォール」とは、中国が国内のインターネットと世界のインターネットの間に築いている「技術的、政治的、商業的、言語的な壁」を描くために、私が頭の中で用いてきた言葉だ。検閲はその壁の大きな部分を占めるだけでなく、さらに強化されている。

VPNサービスの遮断、そしてFacebookやTwitterなどの海外サービスのブロックが、中国のネットユーザを2013年も孤立させ続ける大きな要因となるのは明らかだ。異論を唱える人もいるが、中国にはTwitterユーザがほとんどいないということが最近分かったことを考えると特にだ。

実名制インターネット法

だが、検閲は単なる技術というだけではない。新たな実名制インターネット法は、ISP(インターネットサービスプロバイダ)企業が「違法コンテンツ」を削除する権限を高めるだけでなく、さらなる自己検閲を推進することにもなる。

だから、ISP企業がユーザの本名と身分証明番号を保持していることを中国人ユーザが知れば、彼らは2013年は、冒険をあまりぜず、ネット上であまり面白いことを言わなくなってしまうだろう。2013年、中国のソーシャルメディアサイトは、前ほど内観的でなく、より表面的なサービスとなるだろう。それによって、(猫の写真を共有するという枠組みを越えた)国際的なコミュニケーションを妨げることになる。

領土問題

中国が今抱えている領土問題は政治的な壁を作っていて、中国テック企業の国外進出を困難にしている。国際的に成功している中国企業もあるが、中国企業が国際的な成功を収めるのは難しくなってきている。領土問題で中国政府が強引な姿勢を高めることに不快な思いをしている国が多い東南アジアでは特にそうだ。

そして、南シナ海の諸島を巡る領土紛争がテック業界に影響を与えないと思っているなら、考え直した方がいい。というのは、その諸島が中国の人気マルチプレイゲームの地図上で中国領土になっていることから、ベトナム政府はそのゲームのサービス提供を禁止したからだ。2013年には同じようなことがもっとあるだろう。

言語の壁

それから、言葉の壁もある。中国語と英語の比較的大きな違いがネットユーザを引き離している大きな原因となっているは明らかだ。だが、中国企業もそれに関してあまり何もしていない。例えば、Sina Weibo(新浪微博)はサービスを開始してから数年になるが、未だに英語のインターフェースを提供していない(が、英語版のiPhoneアプリはある)。

Sina Weiboよりもずっと長く運営されているRenrenにも英語のインターフェースはない。中国最大のソーシャルメディアサイトが中国語を話さない人もユーザ登録するかもしれないと考えもしていないことが、中国のインターネットが世界からどのくらい遠ざかっているかをよく表している。そして、こういう状況が2013年に変わると考えられる理由もない。

商業面では、中国企業が海外進出でいかにトラブルを抱えているかについてたくさんの記事を書いてきた。これには多くの理由があるが、1番大きな理由の1つは、最初に海外進出をした中国のグローバル企業の振る舞いが悪いことがあったり、プロダクトがみすぼらしすぎて人を遠ざけてしまったことだ。その結果、中国企業はますます疑いの目で見られるようになっている。そして、政治的緊張が高まる現状を考慮すると、2013年の商業面での状況はさらに悪くなるだろう。

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eコマース業界も「ウォール」に免疫があるようには見えない。中国企業は国内のeコマース市場の大部分を握っているが、中国本土、台湾、香港以外では実質何もない。ソーシャルeコマースは、Sinaなどの中国企業が開拓し始めている将来有望な市場だが、それによって相互連携が高まるという兆しはない。中国のソーシャルメディアプラットフォームは多かれ少なかれ中国国内専用のサービスで、外国のソーシャルプラットフォームのほとんどがブロックされているからだ。

「ウォール」に捕われていないように思えるテック系コマースはモバイルだ。モバイル業界では中国製そして外国製のデバイス/アプリが国内外の比較的自由な市場で競争している。だが、Huawei(華為)ZTE(中興)の接続サービスが中国政府(やイランの逆行的な政治体制)にとってますます魅力的になっているので、海外での中国ブランドへの関心は今年少し低下するだろう。

国内では、かつての無料アプリマーケットプレイスに規制が導入される。正確に何が起こるかはまだ分からないが、業界の人はその規制によって外国アプリのいくつかが中国で遮断されると同時に、中国製アプリの販売を減速させることでグローバルマーケットプレイスでの勢いを弱めさせるのではないかと懸念している。もしそうなれば(私たちも今年中には分かると思うが)、みんな負けて、「ウォール」がさらに一層高くなることになる。

モバイル業界以外では、中国のVPNサービスの遮断そして保護主義という慣習によって、中国は外国企業が参入して競争するには世界で最悪の国の1つとなっている。(ソーシャルメディアもしくはコンソールゲームなどの) 業界全体は実質的に外国企業には門戸が閉ざされている。中国政府が統制をより行使できる国内企業のためにだ。

これによって、はじめは国内開発が急速に進むが、競争を抑制し、起業家が関連ウェブプロダクトをグローバルに開発することを止め、他国を不快にすると同時に、最終的には中国人ユーザがウェブにアクセスした時に、彼らが世界の人が見ているものと全く違うものを見ていることを確実にしてしまうのだ。現在、中国のテック企業と外国政府は基本的なレベルのほとんどの要件でお互いに理解さえできないというケースが多い。

文化の違い、それ自体は、悪くない。さらに、中国のインターネットがその他の国のインターネットと同じなら、おそらく私には仕事がないだろうということも認識している(だから、私も「ウォール」の一部にすぎないのだ)。だが、この「ウォール」がどのくらい大きなものになるのかについては心配している。識者が中国のウェブはインターネットではなくイントラネットだと冷やかして久しいが、私はその冷やかしが2013年には今まで以上に現実味を帯びるのではないかと恐れている。政治的緊張や後ろ向きの規制政策がテック業界での国際的なコミュニケーションそして競争に新たな課題を呈しているからだ。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

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