音楽コンテンツの流通チャネルに革命を起こす、韓国のスタートアップDresscode

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今や、韓国もコンテンツ立国となった。韓流の代表的なキーワードである K-POP は、東アジアのみならず、アメリカやヨーロッパ全域に広がっており、2013年に韓国を代表するアーティスト PSY の「カンナムスタイル」は爆発的なヒットとなり、K-POP に強い力を与えた。しかし、韓流が爆発的なヒットを起こしているのにも関わらず、従来からある企画会社や配給会社はコンテンツの生産のみに集中しており、それを持続させるコンテンツ開発や関連分野との連携は、ほとんどみられない。

例えば、「となりのトトロ」や「ハウルの動く城」など、日本の有名アニメを輩出しているスタジオジブリは、東京にジブリ美術館を立てて、東京を訪れる観光客に見所を提供している。アメリカのスパイダーマンやバットマンは、映画の興行だけでなく、フィギュア、コミックブック、Tシャツなどで着実に収益を出している。他方、韓国のコンテンツ開発は目立たない。PSY のカンナムスタイルの影響で、カンナム駅周辺には外国人は多く目立つようになったが、街にはそれを象徴する看板すら見当たらない。このような問題を解決し、韓国のコンテンツ産業システムを適正化しようとする会社が「Dresscode(드레스코드)」だ。

Dresscode のビジネス

Dresscode のビジネスは、大きく3つに分類できる。

  • コンテンツ価値増大の提案とコンサルティング
  • コンテンツの企画と制作
  • コンテンツの配給

Dresscode の最初のプロジェクトは、韓国のアイドルグループ 2PM の〝洋服アルバム〟だった。洋服のタグに印刷されたQRコードを読み込むと、2PM による未公開の音楽や動画が体験できるアルバムで、2PM とベネトンのコラボレーション作品として販売された。(予約販売開始と同時に1,000セットが完売し、追加注文を受け付けることとなりビジネス的に大きな成功となった。)

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配給会社とコンサルティング会社としての役割

現在、企画会社はコンテンツの制作にばかり集中しているが、マネタイズ方法が確立されていない。また、人々が音楽を聞く方法は、モバイルやデジタルデバイスに移行しており、CD はもはやこの流れには合っていない。そこで、Dresscode は新たなブレイクスルーを模索して、〝洋服アルバム〟を企画することになった。コンテンツを露出させるために、複数の流通チャンネルを組み合わせているという点で、Dresscode は配給会社とコンサルティング会社の両方の役割を持っているという見方が出来る。

企画会社としての役割

Dresscode は、発売する商品を差別化するために、2PM が他では発表していない楽曲、映像を企画するのに加わった。この点で、企画会社の役割を果たしている。

整理すると、Dresscode は、これまでの音楽アルバム市場を、自らのプロダクトで置き換え、コンテンツの価値を最大化しており、同時に、これが彼らの現在のビジョンでもある。

Dresscode 成功の可能性

筆者は Dresscode とのインタビューを通じて、次の3つの点で彼らの成功の可能性を感じた。

1. マネタイズができる。

これまでも、韓国のスタートアップにとって大きな問題の一つは、いかにしてマネタイズするかということだ。しかし、Dresscode が進出しようとするコンテンツ産業は、消費者の購買意欲が高く、購入意思が明確という点で収益が確保できるだろう。購入意欲と購入意思は、現在、Dresscode が関わっている音楽アルバム市場、より大きく見るなら、K-POP市場の消費者が歌手のファンであるという点でも明らかだ。特に Dresscode が創り出すコンテンツは、従来の市場では未発売であるため、消費者の購買意欲をなお一層刺激する。K-POP が東南アジアを越えて、ヨーロッパやアメリカ全土にも影響を及ぼしているという点でも、可能性が感じられる。

2. 新たな流通チャネルを創り出せる。

カルチャーコンテンツは、多方面の分野で成立するので、ITやアパレル業界などを通じ、新たな流通チャネルを創り出すことができる。また、韓国が諸外国に比べ、制作されたコンテンツを拡大・持続させる産業が十分に育っていないといわれるが、この分野を先取りできるなら、成功の可能性は無限大と言えるだろう。前述した 2PM の洋服アルバムは、従来の音楽アルバム市場が持つ問題点と、アパレル業界の流通構造を変化させたという点で革新的だ。また、マネタイズ手段が確立されていないコンテンツ産業をリードするという点でも、同じことが言える。このような力は多くの産業に影響を与える可能性があり、新しいビジネスモデルを誕生させている点で意義深い。

3. 技術力に裏付けがある。

Dresscode では、QRコードをスキャンするだけで、コンテンツを入手することができる。しかし、何者かがQRコードを無断で複製できれば、著作権を侵害する問題が発生する可能性がある。これを防ぐため、Dresscode は、洋服毎に異なる QR コードと印刷し、それらを管理するテクノロジー、複写を防止するテクノロジーを確立して補完しつつある。従来技術を、常によりセキュリティの確立された新技術へと移行していくため、リスクを最小限に抑えることができる。

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Dresscode の今後

Dresscode は、現在2つめのプロジェクトのリリースを控えている。最初のプロジェクトが盛況に終えようとする中、2つめのプロジェクトでは、より多くの品質の高いコンテンツを制作することを目指しているという。また、音楽アルバム市場に留まらず、教育、ゲーム、映画など多くの分野へと進出を目指し、韓国のコンテンツを世界に広めるべく、世界市場をターゲットにしているという。

Dresscode の代表を務めるキム・ミンスン(김민승)氏は、システムが確立されていない市場のシステムを取れば、その分野をリードできると強調し、Dresscode の成功の可能性を強調した。Dresscode がコンテンツ産業の新領域を拡大させ、今後発展することに期待したい。

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

【原文】

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