[インタビュー]韓国のモバイル・スタートアップ35社を統括する企業Yello Mobileが目指すもの(前編)

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Yello Mobile(옐로모바일)CSO のイム・ジンソク(임진석)氏。
同社がメディアのインタビューに応じるのは、これが初めて。

【編注】本稿は beSUCCESS の英語版である beTECH.Asia からの翻訳です。THE BRIDGE では通常、パートナーシップに基いて beSUCCESS 韓国語版からの記事を転載していますが、本稿は原文が英語で韓国語訳が存在しないため、原著者の承諾により英語版からの翻訳を掲載するものです。


現在ではスタートアップ35社を育成する Yello Mobile(옐로모바일)が、7,800万ドルを調達して初のスタートアップ買収をしてからまだ3年しか経っていないが、彼らのビジネスは毎月150万ドルを生み出す黒字に転じ、来年にはIPOを予定している。本稿は、今年アジアで最もエキサイティングなスタートアップの話になるだろう。

彼らの創業、成長、将来の野望についてのインタビューだ。本稿は前編であり、後編は後日お届けする。

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Yello Mobile とは?

ニューヨークの IAC や ロンドンの WPP に似た、モバイル・スタートアップをまとめる統括会社だ。モバイルを使い、あらゆる分野にわたって消費者にサービスを提供できる、モバイル・プラットフォーム企業を作ることがミッションだ。しかし、我々 Yello Mobile が IAC や WPP と異なるのは、買収したモバイル・スタートアップをグループ内に統合することはせず、むしろ、彼ら創業者の自主性や独立性、彼らの社風をそのまま維持してもらうようにしている。独立性を担保することで、創業者は買収後も長きにわたりスタートアップに残ってもらえる。これこそ、Yello Mobile がビジネスを続けていく上で最も必要不可欠な部分だ。我々が買収したスタートアップ達は皆、アジアのモバイル界で一番のプレーヤーになろうとしている。

Yello Mobile は、起業家のための宗教のようなものだ。我々のアライアンスは宗教のようなものだ。我々がその宗教にもっと傾倒すれば、我々はもっと成功に近づき、ビジネスを続けることができるようになるだろう。

Yello Mobile の設立

Yello Mobile の CEO(イ・サンヒョク氏=이상혁)は2011年、韓国第2のインターネット・ポータル「ダウム」に自らのスタートアップの売却を経験している。買収された後、チームや技術がダウムに取り込まれたことから、彼はダウムの環境に〝ハメられた〟と感じるようになった。これは彼が期待していた、起業家として独立した毎日とは異なり、彼は他の道を探す必要を感じるようになった。

スタートアップの起業家を最初に魅了する、起業家精神の最も重要な要素を残しつつも、買収を実現させたい。そんなビジョンを胸に、Yello Mobile は設立された。その第一歩として、Yello Mobile はスタートアップ5社とアライアンスを作り、独立性を維持しながら協業できるかという仮説を検証した。そして次のステップは、資金を調達し、成長を加速することだった。

我々は、加わってくれたスタートアップの独立性を担保することに極めて注力しています。統合はまったくやらない。むしろ、彼ら同士のコラボレーションを勧めるのです。この行為によって、スタートアップにも、Yello Mobile にも、急速な成長がもたらされます。あらゆる分野において、その分野でベストなスタートアップを我々が魅了できているのには、そういう背景があります。

Yello Mobile の最初の投資家は DSC Investment だ。DSC は Yello Mobile のビジョンと能力が実を結ぶことを確信している。DSCの資金注入により、Yello Mobile はより早く成長でき、多くの分野のトップのスタートアップと提携関係を結ぶことに集中することができた。

どんな分野にサービスを提供しているのか?

Yello Mobile にとって、当初はモバイルメディア、デジタル・マーケティング、モバイル・トラベルの3つは主要なマーケット分野であったが、彼らのビジョンは、メッセージとゲームを除く、すべてのモバイル分野のその領域を拡げる結果となった。アジアのモバイルユーザが朝起きてから夜寝るまで、傘下のスタートアップのモバイルサービスを使い続けてくれることが、Yello Mobile の希望だ。

我々のCEOは、最初のスタートアップを2011年にダウムに売却しました。ダウムと協業する中で、彼は起業家としての道を失い、一人のビジネスマンにならざるを得ませんでした。このようなことを Yello Mobile には起こしたくないと、彼は考えているのです。

買収ストラクチャー

スタートアップが3年間で35社を買収するのは、簡単なことではない。CSO のイム・ジンソク(임진석)氏は、彼らの買収において、スタートアップの株を買うのではなく株式交換の方法をとるようにしていると説明した。この方法をとれば、創業者は技術への費用やチームへの給与ではなく、自らのスアートアップの将来のために株式を手放すことができる。長期にわたって、創業者が経営に残るようにもなる。

我々がやりたいのは、コラボレーションであって統合ではない。M&Aというよりは、アライアンスの形成だ。

この方法は言うまでもなく金銭的なメリットももたらし、Yellow Mobile も創業者に資金を払うよりも、成長に力を注ぐことができるようになる。結局のところ、アライアンスに入っているスタートアップが成長すれば、Yello Mobile の資産価値が大きくなり、それに合わせて、スタートアップの資産価値も膨らむという構図だ。したがって、スタートアップ達はモチベーションや起業家精神を維持することができ、Yello Mobile も参加のスタートアップ達と成長し続けようとする動機づけになる。

Yello Mobile は、買収した企業のすべての従業員が勤務できるスペースを設けている。総従業員数は1,500人に上る。
Yello Mobile は、買収した企業のすべての従業員が勤務できるスペースを設けている。
総従業員数は1,500人に上る。

Yello Mobile に参加するメリット

スタートアップの創業者とは、物事を単独で進め、自分が見たい将来の形を実現するためなら、大胆かつクレージーになれる、珍しい人種だと言える。しかし、トップの起業家たちが、なぜ自らのやり方を変えて、喜んで Yello Mobile のアライアンスに加わろうとするのだろうか。イム・ジンソク氏に尋ねた。

彼によれば、Yello Mobile に加わらないリスクは、Yello Mobile に加わるリスクよりも大きいと、創業者達に説明している。Yello Mobile は創業からの3年間を通じて、多くのスタートアップが資金に枯渇して、競争に負けてスケールできなくなるなど、どこに危険があるかを把握している。これこそが、Yello Mobile が最も価値を提供できる部分だ。彼らはファイナンス、人材支援、マーケティング、特定地域での成長に向けたローカリゼーション・サポートなども提供する。

もし単独でやれば、我々はビジョンを実現するのに、より長い時間を必要とするだろう。しかし、強く結束すれば、それはより速く実現できる。

開発者、デザイナー、プロダクトマネージャーら約40名の車内チームに加え、他のアライアンス企業とのシナジーから得られるメリットも特筆に値する。例えば、彼らのスタートアップの1社は中国市場に強いので、他のアライアンス・スタートアップの中国進出を支援している。このようなメリットは、スタートアップが成長に集中する上で大変役に立つ。一社あでやるよりも、より速くビジネスを形成できるのだ。このような目に見えない価値に加えて、参加スタートアップ達は、トラフィック、人材などをシェアし、中には、互いにクロス・マーケティングを実施しているケースも存在する。

プロダクトの品質は、よりよく、かつ迅速に改善されます。社内のスタッフがそのような活動を支援します。スタートアップにとって、トップレベルの開発者、デザイナー、プロダクト・マネージャーを雇用するのは難しい。そのような問題の解決も支援します。

しかし、Yello Mobile がもたらす最大のメリットは、成長に向けての持続可能性だ。アライアンスがもたらすこのメリットは、結果的に創業者達がベストを尽くす対象に集中させてくれる。これこそが、創業者達が Yello Mobile に加わろうとする最大の理由だ。

インキュベータ、アクセラレータ、統括会社、投資家、マーケティング・パートナー、そして…

議論を重ねるうちに、Yello Mobile を既存の組織と比べたところで、それは意味の無いことだと思うようになった。同社はアジアで新境地を切り拓こうとしており、これまでの同種の企業と同じように見られることを嫌っている。

我々は、バリューチェーンを一社に統合したいんだ。

投資ファンドを運営するだけでなく、Yello Mobile はアーリーステージのスタートアップにエンジェル投資も行っている。投資したスタートアップがアライアンスに加わるかどうかはわからないが、Yello Mobile にとっては、彼らも育成対象だ。投資戦略においても、Yello Mobile は独占ではなく、他のVCがアライアンスに参加しているスタートアップに追加投資することを歓迎している。レイターステージのスタートアップにはインキュベータを、アーリーステージのスタートアップにはアクセラレータを運営している。

我々はサービスをサポートしたいだけで、Yello Mobile を宣伝したいとは思っていないのだ。

Yello Mobile は(スタートアップをまとめる)統括会社だが、自らをサービス・プロバイダとしては宣伝していない。参加するスタートアップにブランドを保持してもらい、それぞれの明確な個性を維持しているのだ。したがって、ユーザは自分が「Yello Mobile のサービスを使っている」と意識することはない。起業家も、組織体制よりも自分の会社に集中し続けることができる。

そう、我々がしようとしているのは、買収、提携、アライアンスのちょうど真ん中あたりだ。

このインタビューは後編に続きます。

【原文】

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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