スタートアップのみなさん、最低賃金法は守りましょう

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credit: daily sunny via FindCC
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こういう仕事をしていると個別に告発のような情報が届くことがある。大概の場合は匿名で、中には揚げ足取りのようなものもある。

ただ、今回の話は見過ごすと、私も法律違反を無視したことになってしまいそうなので書くことにした。

なお、個別の名称を叩いてほくそ笑む人が出てくるのは本意でないので、対象となったサービスや人物名は伏せる。もしこれを読んで思い当たるフシがあるのなら、改めた方がいいかもしれない。

届いたのはあるスタートアップの募集要項のスクリーンショットだ。そこにはインターンと称していくつかの「給与」が記載されていた。具体的に労働時間がかかれており、それを時間単位で割ると時給で最低労働賃金(東京では記事執筆時点で888円)を下回っていた。つまり、インターンという名称であっても労働者に該当するのであれば最低賃金法違反となる可能性がある。

私は同社に関係者を通じて問題の認識、その賃金での労働実行、今後の対応についてコメントを求めたが「ノーコメント」という回答だった。なお、本記事の掲載時点で同社のサイトに掲載されていた募集要項にその記載はなくなっている。

たまに「インターン」という名称で無給奉仕をさせている事業者がいる。元来インターンとはあくまで就業体験であるが「体験」にとどまらず、スタッフとして業務を行う場合も多いのが実情だろう。しかし、「労働者」として業務を行う場合には使用者は労働基準法や最低賃金法を守らなければならない。

この辺りの法律については弁護士ドットコムNEWSのこの記事が参考になるだろう。一部引用させてもらうが詳細は元記事を参照いただきたい。

インターンシップ生が労働者に該当する場合、無給や最低賃金以下で働かせることは違法である

「就業体験という名目であっても、インターンシップ生が、単なる実習生ではなく、労働基準法第9条の労働者とみなされる場合には、当然、労働基準法の適用を受けるので、使用者には賃金支払の義務が発生することになりますし(労基法24条)、最低賃金法の適用も受けることになります。(本文とははずれますが、その他、労働安全衛生法や労災保険法等も適用されることになります)」

「従って、インターンシップ生が労働者とみなされる場合には、無給や最低賃金以下で働かせることは違法ということになります。」

引用記事:弁護士ドットコムNEWS「学生を無給または最低賃金以下で働かせるインターンシップは適法なのか」

また、本件についてスタートアップ界隈に詳しい猪木法律事務所の猪木俊宏弁護士にも見解を求めた。

「インターン(インターンシップ)」という呼び方であっても実際にはアルバイトであるケースが、スタートアップの場合は多いようです。多くのスタートアップは慢性的に人手不足であり、また、経営者やメンバーとの年齢差も小さくなじみやすい面もあることなどから、インターンであっても就業体験というより「仕事」として参加しているケースが多いのだろうと思います。

そのような場合、たとえインターンと呼んでいるとしても、スタートアップ側は他の従業員同様に(労働基準法の)「労働者」として扱う必要がありますが、残念ながら認識が不十分な関係者がいるようです。

正直、この記事のパブリッシュボタンを押すのは気が重い。法治国家に住む以上、ルールは守らなければならない。それが分かっているからこの記事を書いている。けれど、スタートアップは同時に全く違う概念で動くこともある。ゼロイチをやる人間というのは通り一遍の考え方では生まれることはない。

単純な確認ミスや悪意のあるルール違反はしっかりと告発されるべきだろう。一方でイノベーションの火を消すことはそれ以上のマイナスを生み出す。その矛盾した二つの側面を見据えながら、今後も情報を伝えていきたいと思う。