フィンテックが一堂に会するFIBC2016が開催、投資アルゴリズムを設計できるCapitalicoが最優秀賞を獲得

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入賞したスタートアップのプレゼンターの皆さん

金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)は、電通国際情報サービス(東証:4812、ISID)が主催するフィンテック・スタートアップを集めるスタートアップ・イベントで20112012年から毎年開催されている。6回目5回目となる FIBC2016 が25日に東京で開催され、国内外のフィンテック・スタートアップが一堂に会した。

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FIBC ではフィンテック・スタートアップがピッチを行う〝FinPitch〟が恒例となっているが、総勢22チームが激しい接戦を繰り広げ、深層学習を用いて投資アルゴリズムを設計・共有できるトレーディング・プラットフォーム「Capitalico(キャピタリコ)」が最優秀賞を獲得した。本稿では入賞したスタートアップを取り上げたい。

FinPitch の審査員を務めたのは次の方々だ。

  • 増島雅和氏(森・濱田松本弁護士事務所 パートナー、弁護士)
  • 高岡美緒氏(マネックスグループ執行役員、マネックスベンチャーズ取締役)
  • 磯崎哲也氏(フェムトグロースキャピタル ゼネラルパートナー、公認会計士)
  • 柴田誠氏(三菱東京UFJ銀行 デジタルイノベーション推進部 プリンシパルアナリスト)
  • 小川久範氏(みずほ証券 戦略調査室 ディレクター)

【最優秀賞】Capitalico by Alpaca(アメリカ/日本)

副賞:Micorosoft Azure 12万ドル分、Tech in Asia Singapore 2016 2人分のチケットと1日ブース出展券、飯田氏の作品

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Capitalico は深層学習の活用により、高度なプログラミング技術無しで投資アルゴリズムを開発できるプラットフォーム。ユーザは自分のアルゴリズムを作成し、それに基づいて取引シグナルを受け取ったり、自動売買を行ったりすることができる。年内には、ユーザが作成したアルゴリズムを販売できるマーケットプレイスを開設予定。

料金は1ヶ月99ドルで提供予定で、ここから年間2億4,000万ドルの売上を創出することが目標。3月7日には、アルゴリズム作成がスマートフォン上の数タップの操作で完了できる iOS アプリをリリース予定だ。Capitalico は、Alpaca が開発した画像深層学習の「Labellio」をベースとしており、Alpaca は今年初め、Labellio を京セラコミュニケーションシステム(KCCS)に譲渡している。

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【ISID 特別賞】アイムイン by SMILABLE(日本)

副賞:Sphero アンドロイド「BB-8」

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少額のお金を多くの人から集めるのには、銀行振込やクラウドファンディングなど一定の面倒が伴う。アイムインは企画を実現するために、SNS を活用することで少額のお金を多くの人から集めるのを支援する。考えられるユースケースとしては、誕生日プレゼントを複数名で送りたいとき、パーティーでプレゼント代・会費を集めたいときなど。

将来的には、チケット販売やオークション分野への応用、企画を集めたマーケットプレイス「Ideamall」の開設、eコマースサイトのストアフロントに「アイムイン」ボタンを置くことで、その商品を複数名からプレゼントできる機能の追加、モバイルアプリの開発などを計画している。

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【三菱地所 Finolab 賞】Shift Payments by Shift Financial(アメリカ)

副賞:Finolab 入居権

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Shift Payments は Y Combinator の支援を受けるスタートアップで、ビットコインなどで決済ができる VISA カードを発行。VISA カードが扱える小売店舗や ATM であれば買い物や現金引出に使え、その相当額は Shift Payments に紐付けた Coinbase などのウォレットからデビット取引として引き落とされるしくみだ。

これ以外にも、顧客ポイントカードなど、あらゆるストアバリューのしくみと Shift のカードを紐付けることができる。モバイルデバイスと銀行口座を紐付け、口座間の送金サービスを提供する Dwolla、金融におけるアカウント・アグリゲーション・アナリティクスの Mint.com などとも連携する。

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【特別賞】ConsenSys by Consensus Systems(アメリカ)

副賞:ポータブルビデオプロジェクター ソニー LSPX-P1

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Consensus Systems は、分散型アプリケーション(DApps)やスマートコントラクト(電子的に真正性を担保することで実現する契約書)の基盤となる Ethereum に取り組むスタートアップだ。ConsenSys では、プライベートキーを使って、ブロックチェーン技術により、自分が何者であるかを証明することができる。一方、スマートコントラクトを使う際には、パブリックキーを用いて契約書に必要な個人情報項目を、あらかじめ登録してあるストアから引き出すことができ、契約書に関与する二者間でお互いの存在真正性を確かめ合うことができる。

ConsenSys のデモでは Total Return Swap(スワップ取引の一種)で、二者間でスマートコントラクトにより契約を締結する手順が披露され、取引にかかわる互いの評価(レピュテーション)の推移が追えるしくみが説明された。

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【特別賞】Eversafe by Everspin(韓国)

副賞:ポータブルビデオプロジェクター ソニー LSPX-P1

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Everspin の Eversafe はモバイルアプリ用のサーバサイド・セキュリティ・ソリューションで、時間とともに変化する動的なセキュリティ・モジュールをモバイルアプリに供給。アプリを起動する毎に異なるセキュリティ・モジュールが適用されることで、モバイルサービスやモバイルアプリのハッキングを防止する。オンプレミス環境へのアプリデベロッパへの売り切りと、クラウドサービスとしてモジュールが呼び出された回数に応じて課金するメニューがある。

韓国のセキュリティ・エージェンシーにおけるテストでは 3,245 回におよぶハッキングテストの結果、100% の防止が行えたとの評価が得られた。韓国国内では Koscom、Asiana IDT、SK Infosec と提携、グローバル展開においては、名前はまだ開かせないとのことだが、世界的なクラウドサービス・ベンダーをパートナーにしているとのことだった。現在、日本でのビジネスパートナーを募集している。

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【ソニー銀行イノベーション賞】PlugAir Secure by Beatrobo(日本)

副賞:パーソナル3Dプリンター MakerBot ReplicatorMini

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個人に対するフィッシング詐欺の被害は年間2.9億円に上っており、この2年間で約60倍に増加。企業における情報漏洩による被害額も年間12.7億ドルに上っている。フィッシング詐欺や情報漏洩の最多原因はパスワードの流出によるもので、現在では PC よりもスマートフォンの方が情報に対するタッチポイントなる機会が多いことから、スマートフォンのセキュリティ保護が喫緊の課題である。

PlugAir Secure は、Beatrobo が音楽用に開発したガジェット PlugAir をセキュリティ用途に応用したもので、このガジェットをスマートフォンのイヤホンジャックに挿すことでセキュリティキーとして機能。パスワードを入力することなく、さまざまなモバイルアプリやサービスへの認証に利用できる。1つの PlugAir Secure の中には、30種までの異なるサービスの認証キーを入れることが可能だ。

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【オーディエンス賞】Shift Payments by Shift Financials(アメリカ)

副賞:プロモーション動画作成権

前出のため省略。

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FinTech協会加盟のスタートアップをはじめ、数十社がブースを出展。
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会場で配られた、FiBC オリジナルどら焼き

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