
腸内フローラの検査キット「Mykinso(マイキンソー)」を開発・販売するサイキンソーは28日、地域ヘルスケア産業支援ファンド(GP は地域経済活性化支援機構傘下の REVIC キャピタルと AGS コンサルティング、LP は銀行など)などから総額2.7億円を資金調達したことを明らかにした。今回の調達は、サイキンソーにとっては、個人投資家(エンジェルラウンド)、神奈川県の「未病市場創出促進事業」に伴う助成金、経済産業省の「中小企業新事業創出促進対策事業費補助金」(助成金ではあるが、サイキンソーでは事業ステージ的にシードラウンドと位置付けている)に続くもので、事実上のシリーズAラウンドとなる。
サイキンソーでは今回調達した資金を使って、腸内フローラの検査データに基づく、栄養指導などの事業展開を開発するとしている。
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サイキンソーはゲノムベンチャー出身の沢井悠氏(代表取締役)らが2014年11月に設立したスタートアップだ。いわゆる大学スピンオフのスタートアップではないが、理化学研究所産業連携本部の辨野特別研究室、大阪大学微生物病研究所の感染症メタゲノム研究分野と共同研究を実施しており、2015年8月には「理研認定ベンチャー」の称号を取得している。

2015年11月には、自宅で採便し郵送することで腸内細菌の状態を知ることができる腸内細菌叢検査サービス「Mykinso(マイキンソー」をリリース。その後、医療機関などが患者の検査データ登録や検体管理ができるプロフェッショナル向けサービス「Mykinso Pro(マイキンソー・プロ)」をリリースし、事業開始からの約1年間で両サービスをあわせ2,000人程度の腸内フローラのデータを取得している。検査結果は、ユーザやユーザの主治医などが、クラウドや紙のレポートの形式で閲覧することができる。
サイキンソーが取得した腸内フローラの検査データは、ユーザから個人を特定しないビッグデータとして活用することに事前同意を得ており、最終的には、このビッグデータを使ったビジネスが大きく育つことが期待される。蓄積できているデータ規模の成長に応じて、提供するサービスのメニューやビジネスのステージは次のように変化していくことになる。
- 第1段階…腸内フローラの検査キットの販売、分析結果のクラウドや紙のレポートによる報告サービスの開始
- 第2段階…医師らが症例として診断に役立てたり、管理栄養士がアドバイスを提供したりできる(蓄積データは、2,000人規模)
- 第3段階…ビッグデータとして製薬会社に販売、製薬会社は創薬に活用(蓄積データは、数万人規模)
今回の調達は、サイキンソーにとって、事業フェーズが第1段階から第2段階へと移行するタイミングと言えるだろう。

同社は今年10月には、一般消費者の腸内フローラ全般やサービスへの認知度向上を図るため、調剤薬局大手のアイセイ薬局やモバイルサービス大手のエムティーアイとともに「腸内サミット」なるイベントを開催。また、今週にもオフィスを、創業から2年あまり入居していた、かながわサイエンスパークのイノベーションセンターから、THE BRIDGE X も入居する東京・渋谷の Good Morning Building に移転する。サイキンソーにとって、文字通りアカデミックな領域からビジネスへ脱皮を迎えたフェーズだ。
腸内フローラに関わるデータ分析に特化している観点では、現在のところ、日本には競合に分類できるサービスは存在しないようだ。沢井氏がベンチマークしているという、2012年創業のアメリカのスタートアップ uBiome は、これまでに約2,700万ドルを資金調達している。
将来的には、腸内細菌の状態を簡単かつ定期的にモニタリングするために、例えば、トイレに備え付けたデバイスの活用なども視野にあるようだ。尿や便の状態をモニタリングし排泄予測や未病に役立てるスタートアップとしては、Tripe W Japan の DFree やサイマックスなどの名前が思い浮かぶ。来年以降、ヘルスケア系スタートアップの躍進にも注目したい。
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