開催10周年の節目を迎えるIVS——日本のテックシーンを作り上げたエキスパートが、これからの10年を大胆予想 #IVS10

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本稿は6月6日〜7日、神戸で開催されている Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe 取材の一部。

今回で10周年を迎える Infinity Ventures Summit(IVS)が神戸で始まった。節目を迎えたイベントはロゴも刷新され、今回掲げられたテーマは「evolution(進化)」だ。開催地となった神戸は、ちょうど今年で開港150周年を迎える。港を開いて世界の変化を受け入れた神戸の先見性に、スタートアップ・エコシステムの将来を投影しようというわけだ。

このイベントの幕開けを飾るセッションは「業界トレンドの歴史と未来」と題し、日本の過去10年間のスタートアップ・エコシステムに造詣の深い6人が顔を揃えた。グリー、ディー・エヌ・エー、ミクシィ(アイマーキュリーキャピタルの親会社)という、日本のソーシャルネットワークサービスを支えてきた3社が同じステージに並ぶという点でも非常に稀な機会だ。

このセッションに登壇したのは、

  • ディー・エヌ・エー 執行役員 原田明典氏
  • 投資家 / The Ryokan Tokyo 代表取締役 CEO 千葉功太郎氏
  • アイマーキュリーキャピタル 代表取締役 新和博氏
  • グリー 代表取締役会長兼社長 田中良和氏
  • gumi 代表取締役 國光宏尚氏

なお、モデレータは、スマートニュース代表取締役会長兼 CEO の鈴木健氏が務めた。

この10年間で最も印象的だった出来事

このセッションは、過去10年間で最も印象的だった出来事を披露することから始まった。

ドコモ、ミクシィ、ディー・エヌ・エーとテック業界を渡り歩いて来た原田氏は、PC からタブレットやスマートフォンへとデバイスが変化していく中で、結局はアプリに回帰したというのが印象的だと語った。改めて考えてみれば、ウェブの技術は、タブレットやスマートフォンなどのタッチパネルを前提にはデザインされていない、新しい概念を過去のトレンドに当てはめて考えることは、未来を読み間違えることにつながる、と自戒の念を込めて警鐘を鳴らした。

投資家 / The Ryokan Tokyo 代表取締役 CEO 千葉功太郎氏

最近、DroneFund を発表した千葉氏は、2016年11月にiモード端末の最終出荷が終了し、ガラケーからスマホへの本格的な移行期を迎えたことが感慨深いと話す。一方それでいても、日本国内にはガラケーユーザが1,700万人いて、巨大プラットフォームとしての存在感は衰えを知らない。また、2015年3月に初めてトイドローンと出会い、それが契機となって DroneFund を作ったのだそうだ。

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アイマーキュリーキャピタル 代表取締役 新和博氏

ドコモ出身の新氏にとっては、キャリアがモバイル市場のヒエラルキーの頂点の座にいたガラケーの時代から、スマホへの移行と共に、海外からのハードウェアメーカーや OS メーカーがイニシアティブをとるようになったのは、大きなニュースだったと主張。また、田中氏は、「2010年にビットコインを1億円分くらい買っていれば、今頃は大金持ちになっていたのに」と、千載一遇のチャンスを見逃したことを悔やみ、聴衆の笑いを誘った。

これからの10年を大胆予想

gumi 代表取締役 國光宏尚氏

國光氏は、これから本当の「Web3.0」が始まると主張。〝スマホファースト/ソーシャルウェブファースト/クラウドファースト〟が〝MR ファースト/IoTファースト/クラウド AI ファースト〟に移行していくだろうと説明した。國光氏が展望する将来については、先日掲載した國光氏との独占インタビューを参照してほしい。

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ディー・エヌ・エー 執行役員 原田明典氏

原田氏は、いろいろ新しいデバイスやインターフェイスが生まれつつも、人間のリテラシーがさほど早いスピードでは変わっていかないことを考えれば、もし一つだけブレイクするトレンドを選ぶなら、それは「ボイス」ではないかと予想してみせた。Apple HomePod、Amazon Echo などの登場は、この考えを裏付けるものになる。音声のインターフェイスを採用することによって、リテラシーが高くない人でも IT の恩恵を享受できるようになり、サービスの裾野が広がることを意味する。

千葉氏が見ている世界は、10年と言わず、5年後には我々の家の屋根の上をドローンが飛び交っている「ドローン前提社会」だ。「ドローン前提社会」とは、従来のようなラジコンに毛が生えたようなドローンではなく、完全自律で動作するドローンが飛び回りインフラとして確立した社会のこと。千葉氏はこの変革期に、日本のスタートアップが世界市場を獲れる可能性を見出している。

ラジコンドローンから完全自律ドローンへの移行期が、モバイルでいうガラケーからスマホへの移行期に匹敵し、DJI が大きなシェアを占める垂直統合型のドローン市場から、Dronecode といったオープンソースを活用した水平分業型のドローン市場が出来上がるだろうと予想した。

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グリー 代表取締役会長兼社長 田中良和氏

新氏は、この10年間で通信速度が増し、リッチなコンテンツを扱えるようになったが、結局のところ、人はコミュニケーションするためにそれらを使っているので、革新的なデバイスが生まれるというよりは、全天球カメラと VR の機能が備わるなど、現在あるスマホが進化するだろうと答えた。一方、田中氏が現在最も魅力を持っているのは AI で、最近 AlphaGo がプロ棋士に勝ったことを引き合いに出し、長年にわたって築かれた人間の叡智や常識がひっくり返るようなことが起きるのではないかと、未知なる将来に期待を膨らませてみせた。

 

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