拡大する「音声経済圏」に注目ーー月間25億時間の自動車通勤を狙う、音声版トリビアアプリ「DriveTime」が400万ドルを調達

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2019.1.22

Image by Howard Lake

ピックアップ: Drivetime raises $4 million for voice-based trivia game for drivers

ニュースサマリー: 音声トリビアアプリ「DriveTime」が400万ドルの資金調達を達成した。同アプリは運転中に声で回答をするクイズアプリ。歴史やエンタメ、科学分野など7つのカテゴリーから毎日3問のクイズが出題される。音声機能はAppleのSiriやGoogleの音声アシスタントを介して提供される。

想定ユーザーは運転中のドライバー。音声でクイズをやり取りをするUXに安全性の問題が懸念されるが、記事ではスタンフォード大学の研究を紹介。何かしらのタスクをこなしながら運転をしたほうが集中力が上がり危険運転を避けられるのだという。

米国では月間1.1億回の自動車通勤が発生。合計走行時間は25億時間にも及ぶという。2018年内に米国人口の半数がスマートスピーカーを所有するデータがあるが、車内の音声ライフスタイルはラジオを中心としてコンテンツやデジタル環境が未発達。DriveTimeがターゲットとするのはこうした車内エンタメ市場。

話題のポイント: DriveTimeが目指す市場は膨大な可能性を含む「音声経済圏」と言えるでしょう。

TechCrunchの記事では、著名投資家Marc Andreessen氏も音声を次の注目すべき市場として挙げています。たとえば多くの人が新しい好みのYouTuberを探す際、ユーザーは仕事場などの外出先で動画音声を「聴きながら検索をする」行為に注目をしているようです。この点、視る行為より聴くほうが圧倒的にUXとして楽なことには同意できますし、筆者も執筆をしながらであったり、寝る前に動画を聴くことが多いです。

市場規模の成長率も見逃せません。データベースサイト「statista」によると音声関連市場は2024年には71億ドルにまで成長することが見込まれています。2015年度対比で10倍以上の成長を見せている点は音声市場の急速拡大の可能性を示していると言えます。

トリビアアプリ分野は2017年にニューヨークで創業し、累計1,500万ドルを集めた「HQTrivia」の登場と共に一躍脚光を浴びました。日本でもLINEやGunosyが参入していますし、米国でも類似トリビアアプリが乱立している印象です。しかし、単なる類似のコンセプトになってしまい競合差別化を図れていない印象があります。一方、DriveTimeが狙うのは動画ではなく音声でのインタラクション。ターゲット市場及び顧客が全く異なってきます。

私たちが自宅でAmazon AlexaやGoogle Homeを通じて得る体験が車内にもやってくるのは時間の問題です。自動運転社会が到来すれば、音声アシスタントの利用が車内でも大きく広がり、車内エンタメ市場が大きく躍進するでしょう。この点、UXとして最も楽な音声インタラクションが同市場をいち早く席巻できる可能性があります。

仮にHQTriviaが車内エンタメ市場に参入したとしても、DriveTimeの使いやすさに理があることは間違いないでしょう。もちろん車内だけでなく、ランニングや散歩中などの外出中の利用シーンをターゲットに他社トリビアアプリと音声体験で大きく差別化を図れるはずです。

ちなみにSNSアプリ市場ではすでに音声UXの到来によって大きな変革の兆しを見せています。韓国拠点の「Spoon Radio」は1,960万ドルの資金調達を達成しており、音声ライブ配信アプリとして圧倒的な使い心地の良さが評判を得ています。動画ストリーミングアプリとは違い、わざわざ顔を晒したりカメラのセットアップの必要がないためです。

さて、自動運転社会がやってくれば日本でも急速に車内エンタメ市場が成長するはずです。こうした成長性を見込んでDriveTimeのように事前に先行者利益を獲得するのは良いアイデアかもしれません。また、既存市場が音声UXに取って代わられた場合、どのような最適な製品を世に出せるのかを今のうちに考えておくことで大きな市場構造の変化にも対応できるでしょう。

市場規模も大切ですが、最も重要なのは顧客体験や価値観の変化です。音声市場は未だに小さな市場と見られていますが、確実に次なる主流コミュニケーションシャネルになるでしょう。この体験の変化を見逃さないスタートアップが生き残れるはずです。

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