ニュースサマリ:スタートアップ企業を対象とした投資・育成を手がけるジェネシア・ベンチャーズは9月2日にブランド(CI・コーポレートアイデンティティ)変更を伝えている。担当したのはアートディレクターの割石裕太氏。同じく独立系のアプリコット・ベンチャーズやラクマなどのブランディングに携わっている人物。
同社はこれに合わせてビジョンを「WE BUILD THE PLATFORM FOR THE NEXT HUGE AND SUSTAINABLE INDUSTRIES IN ASIA」から「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」に変更した。
話題のポイント:実はここ4カ月ほど、独立系ベンチャーキャピタルの新設やリブランディング、新メンバー参加など相次ぎ、多数の取材機会をいただいていました。多い。
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また、日本ベンチャーキャピタル協会の会長にインキュベイトファンドの赤浦徹さんと伊藤忠テクノロジーベンチャーズの中野慎三さんが就任して体制が一新されたり、グローバル・ブレインの百合本安彦さんや若手キャピタリストたちが新しい勉強会として「Startup Investor Track(SIT)」を立ち上げるなど、コミュニティとしての動きも活発になってきています。
国内のスタートアップ・エコシステムが成長過程で、思想的にゆるやかな広がり・分岐を示しつつあるのではないでしょうか。
このような状況下、各ベンチャーキャピタルを取材していて感じるのが「差別化」への動きです。
10年前であればファンド自体の大きさが話題の中心でしたが、今年の取材でここを全面に押し出していたのはグロービス・キャピタル・パートナーズの「ユニコーンファンド(最大50億円までフォロー可能)」が目立った程度です。そのGCPも含め、いずれのファンドも出資金より採用やハンズオン、マーケティングやPRといった企業成長を加速させる支援施策の方に軸足を移している感がありました。
一方でこれら施策についても各社が一斉に取り組み出すと差別化が難しくなってしまいます。そこで次の注力ポイントとして浮かび上がっているのが「CI」、つまり言語化・可視化というわけです。
取り分け大切になるのがビジョンで、これはその名の通り「目に見えて想像できる各社の方向性」ですからこれが分かりにくいと致命的です。ましてや、耳障りのよいキャッチコピーだけ泳がせて、その実態となる各キャピタリストの動き(バリュー・行動指針)がそれに沿っていなければ嘘になってしまいます。実際、今回CIをリニューアルしたジェネシア・ベンチャーズも、このCI変更活動そのものが支援先へのメッセージになっていると聞いています。
「ビジュアルデザインのリニューアルだけではなく、CIの見直しから始めて、全体を「リデザイン」プロジェクトと名付けました。田島(聡一)さんが創業時から大切にしてきたブランドはそのままに、その伝え方や関係づくり・コミュニケーションの仕方をデザインし直した、という位置づけです。スタートアップが「強いチームを創る」ために、それがとても大切なことだと、絶対に取り組むべきことだと、私たちの実体験をもって(支援先にも)伝えたいという主旨です」(リデザインを担当したジェネシア・ベンチャーズの吉田愛さん)。
漢字にすると「投資」という、たった2文字の活動をゆるい定性的な情報のまま放置すると、外からの見え方もそうですが、判断基準も曖昧となり現場のチーム戦でも不利になります。可視化・言語化という作業は輪郭のぼやけた、グラデーションのある現場であればあるほど、大切な「武器」になるのです。
最近では独立系VCだけでなく、スタートアップしてイグジット(株式売却)を経験した起業家もエンジェルとして登場する場面が増えてきました。個人なのに数十社投資し、プロ士業や他のVCと連携し、メディア露出も活発にするほぼVCみたいなエンジェルも出現してきています。
つまり、あらゆる選択肢が多い。
曖昧な話題が多いスタートアップ投資という現場だからこそ、(お互いに)言語化を意識しているチームはよりスピード感を持って様々な判断に臨めるのではないかなと思います。
そういう意味でここ数カ月、投資サイドが言語化・可視化を進めているのは大変よい傾向ではないかなと思うと同時に、まだ手をつけていないVCについては今後の動向にも注目したいところです。
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