1945年3月10日、10万人以上が命を落とし、およそ100万人が住居を失った東京大空襲。日本の歴史を変えた日から75年の節目を迎えようとしている。空襲の体験を持つ人々がこの世から一人また一人と去る中で、彼らの記憶をドキュメンタリー映画にまとめ後世に残そうとしている人物がいる。しかも、彼はオーストラリア人だ。
オーストラリア出身の Adrian Francis 氏は、メルボルンのビクトリア芸術大学出身の映画監督。2009年にはプロデューサーである Melanie Brunt 氏と共に制作した短編ドキュメンタリー「Lessons from the Night」をサンダンス映画祭で初公開。欧米各国で催される映画祭で上映され、年次のベルリン映画祭のワークショップでは、将来有望な映画制作者250人の1人に選ばれた。
それから約10年、Francis 氏は生活の拠点を東京に置き、2015年には第二次世界大戦の東京大空襲をテーマにした映画「Paper City」の撮影に着手した。映画の多くの部分は、空襲体験者へのインタビューで構成されている。オーストラリア人である Francis 氏が、現代の日本人でさえ忘却の彼方へと追いやってしまった戦争体験の話を紡ぐのは、彼が若い頃映像を通じて学んだ現実が深く影響している。

オーストラリアで育った私は、広島と長崎への原爆のほかに第二次世界大戦中の一般市民の苦しみについて知る余地もありませんでした。東京大空襲を知るきっかけとなったのは、エロール・モリスのドキュメンタリー「The Fog of War(邦題:フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告)」を見て、東京都民にもたらされた事実、そして東京の4分の1が瞬く間に葬り去られた攻撃の酷さを知り言葉を失ったからです。(Francis 氏)
撮影までは自費がなんとか終えたとのことだが、編集作業やポストプロダクションのために資金が必要で、アメリカから170万円相当、オーストラリアから700万円相当を出資や助成金の形で獲得。映画完成にはさらに400万円ほど必要なことから、その資金を募るクラウドファンディングを今日から CAMPFIRE で開始した。空襲から75年という節目、オリンピックイヤーを迎える2020年に、体験談を世界に届けることに力を貸してほしいと、Francis 氏は語っている。
クラウドファンディングは3月末まで展開される予定だ。
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