サイバーエージェント・キャピタル、新型コロナ対応で「Monthly Pitch」を初のオンライン開催—8社が登壇、国内外から投資家120名超が集まる

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サイバーエージェント・キャピタル(CAC)は毎月第2水曜日、シード・アーリー期の起業家と投資家が集まるピッチイベント「Monthly Pitch」を開催している。これまで渋谷の「hoops link tokyo」で開催されてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、13日に開催された第37回は完全オンラインで開催された。

ピッチセッションには、十年以上事業継続している会社から、最近設立されたスタートアップまで多様な顔ぶれ8社が登壇。従来のオフライン開催時に勝る盛況ぶりで、観覧する投資家は日本内外から120人超(筆者カウント)が参加した。オンラインイベントではネットワーキングの難しさボトルネックになるが、Zoom の Breakout Rooms 機能とスタッフらのコーディネイトにより、起業家と投資家の具体的な出資相談にも花が咲いたようだ。

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今回ピッチ登壇した8社のサービスは以下の通り。

dDrive by DigitalBlast

DigitalBlast の「dDrive」は、運送ドライバの労務環境改善を狙うサービスだ。運送業界では、長時間労働が問題として顕在化しているが、実のところ、トラックを運転している時間よりも、荷待ち・荷役の時間が長いことに起因することが多い。ただ、ドライバが荷主に対して、荷待ち・荷役の時間を是正するよう改善を求めることは立場上難しい。

dDrive ではアプリを通じてドライバの労務を記録、これを解析し日報・労務データ・分析データを自動作成することで、運送会社が実態を把握することを支援する。状況が見える化されることで、運送会社は荷主に対して荷待ち・荷役の改善を求めやすくなる。運送ドライバには中高年者も多いため、操作はワンクリックだけ、ポイントなどインセンティブで持続使用しやすい仕掛けを取り入れた。

PRENO by PRENO

C CHANNEL で海外事業責任者を務めていた肥沼芳明氏が昨年立ち上げた PRENO は、コスメに特化した自動販売機を展開するスタートアップだ。これまでは専門店や百貨店での対面販売か、通信販売などに限定されていた化粧品の販売チャネルを新規開拓する。日本未上陸の海外ブランドや、未発売の商品ラインを扱うことで既存流通と差別化された UX を提供する。

自動販売機は現金を扱わず、QR コード決済とクレジットカード決済のみに対応。デジタルサイネージが搭載されており、商品購入時に QR コードを表示して、ユーザにサンプリングアンケートに答えてもらったり、メイクアップ効果を AR で再現したりする運用も可能だという。初号機はラフォーレ原宿に設置される予定で、年内に空港や百貨店などに60台程度の設置を目指している。

みーつけあ by みーつけあ

みーつけあ」は、介護サービスを希望する利用者と提供者をマッチングするプラットフォームだ。通常、介護保険サービスを利用する場合、依頼をしてから実際にサービスが開始されるまでに2ヶ月程度を要する。利用者家族が何に困っているかを把握し、行政を通じて、それに対応可能なサービスを提供できる事業所(デイケア)がヘルパーの空き状況を確認する必要があるからだ。

みーつけあでは、有資格者が毎日受電し、利用者家族が困っている内容を把握。それに応じて、事業所に利用者を紹介することで最短で即日のマッチングを可能にする。事業所のデータベースを保有し、事業所毎に利用者による口コミを参照することが可能。最終的には、事業所のみならず、ヘルパーにまでリーチできるサービスを目指す。新型コロナに伴い、利用者家族とヘルパーのウェブ面談機能を開発中。

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ベチャクチャ / ドリアン by わたしは

わたしはは、AI をエンターテイメントに活用した「大喜利 AI」という分野を開拓するスタートアップだ。ある人物が話す意識、音声、文章特徴、話者特徴などを取り出し(これらを「パーツ」と呼んでいる)、それらを自由に組み合わせて、新しいエンターテイメントを創出する。外部化されたパーツをユーザが再構成することで、ユーザの創造力に基づいた二次創作体験を支援する。

大喜利 AI をユーザが体験できるよう、わたしはでは現在2つのアプリを公開している。妄想トーク作成アプリ「ペチャクチャ」は、誰かと誰かのおしゃべりを AI と共に作れるアプリ。例えば、織田信長とチェ・ゲバラを対話させたりできる(上の画像)。MAD 動画作成アプリ「ドリアン」は、短編動画や画像をアップロードすると AI が自動合成された動画クリップを作成する。

OOParts by Black

ブラックが開発・提供する「OOparts」は、コンソールゲームを Web ブラウザ上でプレイできるクラウドゲーミングプラットフォームだ。ハードウェアや OS などに依存しないため、ユーザはあるゲームをプレイするために余分な出費をしいられず、デベロッパにとっては機種毎の移植をしなくてもユーザを拡大できるメリットがある。

先頃、Google が Stadia を公開したことに代表されるように、GAFAMBAT(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft、Baidu=百度、Alibaba=阿里巴巴、Tencent=騰訊)は多額の投資をしてハイエンドのゲームを提供としているのと対照的に、OOparts では懐かしのローエンドゲーム、特に往年のファンを多く抱えるアドベンチャー系ゲームに特化するようだ。

NobodySurf by reblue

世界には3,500万人のサーファーがいるが、サーファーのコミュニティの一つ一つは小規模かつ点在・分散している。このため互いにつながることができず、例えば、サーファーショップやサーフィン関連メーカーが新商品を開発しても世界の見込顧客にはリーチできないし、サーファーは世界中から最良のコンテンツを見つけ楽しむことができない。

reblue の「NobodySurf」は、世界100カ国以上370万人へのリーチを誇るプラットフォームだ。世界2,000名のクリエイターが作った1万本のサーフィン動画作品が楽しめるほか、SNS 機能などを提供する。今年2月からはサブスクリプションモデルと広告によるマネタイズをスタート。近日中には EC もスタートさせ、将来はサーフィンに関連した C2C や旅行にまで業態を広げる計画だ。

Discoveriez by G-NEXT

企業のお客様相談室は、商品について消費者からのあらゆる苦情に対応する必要があり、さらに、異物混入の申告があった場合には、それを回収し、調査し、継続的にフォローアップするなど一貫した対応を求められる。既存の CRM や SFA ツールでは対応が難しかった。「Discoveriez」は、お客様相談室向けに特化した SaaS で企業を支援する。

ノウハウの詰まった豊富なテンプレートを備え、リスクマネジメントに特化した包括的な機能を提供。関連対応する部署やロールに合わせて、顧客情報を見せる見せない、品質情報を見せる見せない、などの細かい条件設定が可能だ。これまで大企業への提供にフォーカスしてきたが、今後は、SaaS で中規模企業の需要開拓にも注力する。

SaaSke by Interpark

2000年に創業したインターパークは、これまで業務用統合クラウドの「サスケ」や業務用050アプリ「SUBLINE(サブライン)」などを開発してきた。サスケのプロダクトラインの一つとして、必要なアプリをクラウド上で簡単に作れるサービス「サスケ Works」をリリースする。1,500社以上いるサスケシリーズの既存ユーザに加え、新規ユーザを獲得したい考え。

サスケ Works で実現できる機能は一部 SaaS 型 RPA にも似ているが、RPA が既存のツールやアプリの操作を自動化するのに対し、サスケ Works ではアプリそのものをスクラッチで作成できる点で新しい。また、サンプルアプリが100種類用意され、自分が作ったクラウド上のアプリを他ユーザに販売できるマーケットプレイスも開設。一定期間でフリーミアムで提供される見込みだ。


今回の8社の登壇を受けて、Morning Pitch でピッチしたスタートアップは累積286社。また CAC では、今年1月までに登壇したスタートアップの資金調達成功率が58.3%に達したことを明らかにしている。

Morning Pitch 第37回の終了を受けて、CAC ではすでに第38回へのエントリを開始している。募集の締切は5月19日23時59分まで、開催は6月10日にオンラインで予定されている。

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