
無意味な自主規制
(前回からのつづき)Chowdhury氏(Parity CEO)は、ビッグテック内における倫理チームが単に倫理洗浄活動以上のことをしているとは信じられなくなりつつあると述べる。また、Gebru氏の解雇は企業運営における新たな懸念を持ちあがらせたとも指摘していた。
彼女はGebru氏に起きたことが学術レベルの研究に対する産業界の介入の面でより高いレベルの精査や懸念に繋がるだろうとし、GoogleがGebru氏を解雇したことはより広範囲な意味合いでAI倫理コミュニティーに対する信憑性・信頼性に関わると言及している。
ビッグテックとAI倫理について有識者であれば、もしかしたらビッグテックによる自主規制はほぼ不可能であるという結論に達しているかもしれない。過去数年でより注目され出している問題だが、例えばEUの規制当局がGoogleに対して独占禁止法で訴訟した10年前からそうした結論は見えていたように思う。
Colclough氏は(Why Not Lab・ディレクター)は、ビッグテックとAI倫理についてもはや手が負えない状況であることに同意し、彼らが規制を避ける手段としてAI倫理研究に参入していると主張する。「多くの政府がビッグテックからの働きかけを受け続けた結果、自主規制を放置することで規制による責任から逃れようとしている」と同氏は述べている。同氏はGebru氏を解雇した経緯に検閲行為があったことは疑いの余地がないとし、「Googleは自分たちの意図とは違う意見に対して、黙らすという手段を用いたのです。まさに彼らの行動が自主規制の信頼性の乏しさを示している」と断罪した。
米国では規制当局のビッグテックに対する規制処置は遅れ気味だ。しかし、最近ではいくつかの独占禁止法に抵触するとして訴訟が動いている。先週のFacebookの独占禁止法違反に先立ち、Googleは司法省から訴訟に対峙していたが、これは1990年代以降のビッグテックに対する米国における訴訟では初となる。同訴訟では60ページにわたる起訴状で構成され、GoogleがAIとユーザーデータを利用し同社の優位性を保とうとしていることを指摘しており、数日中に追加の訴訟が予定されているとしている。今年の秋には、ビッグテックの独占を防ぎ市場に競争をもたらすために独占禁止法自体の改革が必要であるという議会の結論に至っている。(次につづく)
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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