トヨタのLyft自動運転部門買収で見えてきた、技術実現までの長い道のりと業界再編の加速

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先週、トヨタの子会社 Wovn Planet が、Lyft の自動運転部門 Level 5 を5億5,000万米ドルで買収するというニュースが流れた。その内容は、2021年第3四半期に完了する予定で、2億米ドルを前払いし、3億5,000万米ドルを5年間で支払うというもの。トヨタは、Lyft のテクノロジーと300人のチームを手に入れることになる。

すべての自動運転車プロジェクトにとって、コストは依然として大きな障壁となっている。自動運転車に搭載されている主なソフトウェアはディープラーニングだが、これは現在、AI の中でも最も困難でコストのかかる分野だ。ディープラーニングのモデルを学習させるには、高価な計算資源が必要となる。

しかし、ゲーム用 AI のプロジェクトが数カ月から数年で終わるのとは対照的に、自動運転のプロジェクトは、望ましい結果が得られるまでに数年か、もしかしたら10年以上かかると言われている。現実の世界が複雑で予測できないことを考えると、自動運転車に適したディープラーニングのアーキテクチャを設計・テストすることは非常に難しく、コストもかかる。

こういった費用は、自動運転プロジェクトを運営する企業の予算を大きく圧迫する。報道によると、Level 5 の売却により、Lyft の年間純営業費用は1億米ドル削減できるという。これは、Level 5 が黒字化するのに十分な額だろう。Lyft の競合であるUberも、昨年12月にドライバレスカー部門 Advanced Technologies Group(ATG)を売却した。

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収益性の高いビジネスモデルを持たない企業は市場参入が難しくなる。新型コロナウイルスの感染拡大で経営が苦しい配車サービスもそうだし、VC からの資金で経営しているスタートアップは短期間で成果を出すのは難しい。Lyft の自動運転部門のトヨタへの売却は、自動運転スタートアップが、資金力のある自動車メーカーやテック大手と組む傾向が強まっていることを示唆している。

自動車メーカー各社はこの市場で大きな役割を果たしている。Argo AI には、自動運転車の将来に大きな影響を与えるフォードとフォルクスワーゲンが出資、また、General Motors は、Cruise に多額を出資をし、ヒュンダイは Aptiv との自動運転車の共同事業に20億米ドルを投じた。また、Uber から ATG を買収した Aurora は、複数の自動車メーカーとの提携を進めている。

via TechTalks

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